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【あなたは独学派?コミュニティ派?】現代作家の修業場はどこにある(2014年7月号特集)


独学の良さと問題点

 小説の中で描かれるのは人間の本性のようなものですから、作家修業の場とはイコール人間修業の場とも言え、「人間の生死について考えるきっかけを与えてくれた職場が、私の本当の作家修業の場であった」というような言い方もできるわけですが、ここではそうした仕事や生活の場ではなく、小説について学んだり、書いたりする場について考えてみたいと思います。

 作家修業の場としてもっとも多いのは、やはり、〈一人でコツコツとやる〉という場合でしょう。つまりは独学。
 小説は一人で構想し、一人で執筆することが可能なジャンルですから、特に師匠も仲間も持たず、一人で書き続けていくことも不可能ではありません。

 問題は、一人でやっているだけに、流されてしまったり、モチベーションが落ちてしまったりすることです。
 これは受験の自宅浪人に似ています。
 授業のようには勉強を強要されませんから気が楽ですが、やらなくても誰も文句を言いませんから、しっかりした意識を持っていないと、のんべんだらりと時を過ごしてしまったりしますね。

 また、書きあぐねても、助言してくれる人はいません。そうして自力で突破口を見出すことに意義があるという面もありますが、独学の場合は下手をすると延々と同じところでつまずき続けることもあるわけで、そういう効率の悪さはいなめません。

 そうした独学の弊害、つまり、精神的に技術的につまずいたときに、やる気を出させてくれ、どう書けばいいかヒントをくれるものの一つが、新人文学賞や懸賞小説などの公募です

 公募や投稿には締切がありますから、それを目標にできますし、受賞作と講評を読めば、自分に欠けているものを知ることもできます。
 また、小説指南書なども、独学の補助にはなってくれると思います。

先生や仲間を持つ

 しかし、そうは言っても、独学でも問題なくやっていける人というのは、

  • ある程度の力を備えている。

  • 何がなんでもという意欲がある。

  • 自己管理がしっかりできる。

という人に限られます。

 一方、実力が伴わない人の場合は、無計画に書きだして挫折し、書くこと自体が楽しくなくなってしまったり、急に思い立って初日から徹夜したかと思えば、その後、半年も中断してしまったりと、うまく自分をコントロールできません。
 つまり、何をどう努力すればいいのか分からない人や、自分一人では努力すること自体ができない人は、独学でやっていくのはつらいということですね。

 ですが、よほどの才能がある人でない限りは、最初は誰だって初心者ですし、行き詰まることなくずっと順調に書き続けられる人のほうが少ないでしょう。
 そのようなとき、または、そのような人には、やはり窮地から救ってくれる何かが必要です。それは多くの場合、先生や仲間ではないでしょうか。
 先生は、生徒が書きあぐねたとき、どう書けばいいのかというヒントを与えてくれるでしょうし、講義で課題を出されれば嫌でも書くでしょうから、書くきっかけになってくれます

 また、仲間が受賞したり、秀作を書き上げたりすれば、刺激を受け、自分も頑張ろうという気にさせてくれます。
 もちろん、他人がどうにかしてくれるというような考えではだめです。書くのは本人ですから、本人自身に書く意欲がなければ、どんな助言や励ましも空しいです。しかし、やる気とある程度の能力がある人なら、先生や仲間は道を見失いかけたあなたを救ってくれるきっかけとなってくれるはずです。

昔はみんな弟子がいた

近代文学が始まった明治から昭和の中期までは、作家になるためには師匠に弟子入りし、師匠の教えを受けながら作家修業に励むのが普通でした……

現代版作家修業の方法とは?
特集「作家修業の場を持つ」
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※本記事は「公募ガイド2014年7月号」の記事を再掲載したものです。