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惜別

歳を重ねるということはそれまでの自分と会えなくなるということ。

1年前の自分。2年前の自分。
すっかり別人のようになっていると彼女はいつも思う。
なんであんなことできたのだろう。と思ったり、
いま考えていることは、前の自分では想像もできなかったことだったり。

子供を見ているとその感覚は当を得ているように思えた。
生まれたばかりの乳幼児は、1日ごとに違って見える。
毎日しっかり成長していて、
彼の脳細胞はこの瞬間も途轍もない成長を遂げているのだろう。

彼女自身はそのような劇的な変身を遂げることはないけれど、
ときには何かが付け加えられ、ときにはそれまであったものが削ぎ落とされていく。そして彼女の変化に周囲の人は気づくことはない。

他人にとって彼女は彼女で、
まさか毎年その中身が変わっているなんて考える方がおかしいだろう。

それでいい。
一貫性のある人生はつまらないと彼女は思うから。

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