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東京を生きる

何年か前に、違う名前で同じ本について書いたことがある。
そのときは東京に住みはじめてからまだ2年も経っていなくて、でも少し東京に疲れていて、そんなときに、好きな作家さんの本を読んで、その人と繋がりのある本を本屋でたまたま手に取って、数ページ立ち読みして、読みたいと思って、買って、読んだ本について書いたのだった。

いま、私は東京にもう何年住んでいるんだろう。
一人で完結する生活。自分の裁量でどこまでも到達可能な生活。
そんな、家族と住んでいる時で花ありえなかった生活が当たり前になった。
それが当たり前になると、それが手放せなくなった。

東京という言葉には魔法がかかっている。
厳密に言えば「東京ではない」。
その人にとっての東京は決して同じ場所ではない。私にとっての東京は渋谷であり、新宿であり、新橋であって、池袋や上野ではない。ましてや小金井や調布ではなかったりする。東京という名称は確定的に地域を特定しているにもかかわらず、その人によって指している場所が異なることに気づく。

東京に住んで。

私は何を思った。なんだか、慣れてしまっているのかもしれない。
もう、東京でしか住めないかもしれないと思うときもある。私が思うこの東京で。

オリンピックが始まろうとしているこの東京で、今日もオリンピックなどまるで起こらないかのように過ごしている日を、いったいいつ思い出すのだろうか。なんて思いながら仕事をする今日も、きっと何十年後かの私の記憶になるのだろう。


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