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誰かじゃなくて、昨日の自分と比べようよ(『詩経』衛風・洪澳篇)

今回取り上げるのは『詩経』衛風・洪澳篇からの言葉。

切るが如く、磋くが如く、琢つが如く、磨ぐが如し
(読み:キるがゴトく、ミガくがゴトく、ウつがゴトく、トぐがゴトし)

『詩経』衛風・洪澳篇

宝玉を切り出して、さらに形を整えたり、宝石を打って形作り、さらに磨き上げていくかのように、努力に努力を重ねて自分自身を高めていく、という意味。

「切磋琢磨」という言葉はここからきています。

Oxford Languagesの日本語辞書で「切磋琢磨」の意味を見てみると、以下のようにあります。

学問・道徳に、励みに励むこと。また、仲間同士互いに励まし合って向上すること。

Oxford Languages:日本語辞書

現代では、どちらかというと「仲間同士互いに励まし合って向上すること」という意味で使われることが多い気がしますが、語源的には「学問・道徳に、励みに励むこと」の方が近いですね。

さて、新年度が始まりましたが、皆さんはいかがでしょうか?

私は仕事周りの環境が少し変わりまして、割と緊張続きの日が続いています。

新年度ということもあり、新しく入ってくる人、別のところへ移動する人など、色々と変化もあるのではないでしょうか。

人の入れ替えがあると自分の仕事も少し変わってきますよね。

今までよりも難易度の高い仕事が降ってきたり、単純な仕事量が増えたり。

さらには、新しい人と自分を比べてしまい、焦りを感じることもあるかもしれません。

仕事はこなさなきゃいけないし、スキルアップも目指さないといけない。

でも、新年度が始まったばかりなので、周囲も自分もバタバタしていて、なかなか時間が取れそうにない。

周囲に置いていかれるのではないか、新しく入ってきた人の方が仕事ができるのではないか。

考え出したらキリがありません。

周囲と比較するのは結構ストレスですし、しかもバタバタしていて忙しい時期だと余裕もないので、さらにメンタルに良くないです。

「でも、何かやらなきゃ周囲に迷惑をかけちゃう・・」と思ってしまう場合は、昨日の自分と比べて、どこか一つでも上回るように行動してみると良いかもしれません。

他人と比べるのではなく、過去の自分と比べるのです。

例えば、

  • 昨日は3つタスクをこなしたから、今日は4つやってみよう。

  • 昨日は1時間かかったけど、今日は55分でできるように挑戦してみよう。

  • 昨日は挨拶できなかったけど、今日は自分から声をかけてみよう。

という感じ。

比較する相手が自分自身であれば、何をすれば改善できるのかが分かりやすいと思います。

逆に他人が相手だと、そもそもの生活環境が違っていたり、これまでのキャリアや経験年数が異なっていたりするので、単純に比較ができません。

比較ができないのに無理に比較しようとすると、何をすれば追いつけるのかが分からなくてうまくいかず、「うまくできなかった・・」という感覚だけが残ってしまいます。

そうなると、メンタルに悪いです。

ですが、比較する相手が昨日の自分であれば、スタートラインは同じです。

むしろ、昨日の経験から学ぶことができる「今日の自分」の方が有利でしょう。

1日ずつ改善を繰り返し、綺麗に整えて磨いていくことで、自分の人格やスキルは輝いていくのだと思います。

切るが如く、磋くが如く、琢つが如く、磨ぐが如し
(読み:キるがゴトく、ミガくがゴトく、ウつがゴトく、トぐがゴトし)

『詩経』衛風・洪澳篇

玉も石も、そのままでは宝物にはなりません。

切って、整えて、打って、磨いて。

努力に努力を重ねることで、初めて宝玉や宝石になるのです。

人も同じです。

昨日より一歩でも成長できるよう、少しずつでも良いので努力を積んでいく。

過去の自分と現在の自分とで「切磋琢磨」する。

その先に人としての成長があるのではないでしょうか。


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