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なかにし(nia)
2017年5月27日 13:29
雨の匂いがする。 アスファルトの上で行儀よく手を揃えた猫が、薄桃色の鼻の頭を空に向けて目を細めていた。わたしも同じように空を仰いで、目を細めてみる。雨の匂いと、生ぬるい風。角が取れてまるくなった風はどんなに吹いても痛くはなくて、けれどその柔い肌触りが無性に心を引き攣らせた。火傷の痕を指で撫でたときみたいに、痛そうなのに、痛くはないんだという発見はもう何度目かのものだと思う。「楓?」 バカみ