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ものがたり

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2016年10月の記事一覧

sounds good

sounds good

夕焼けに星屑をちりばめて タバコを一本 夕焼けの明かりで燃やすように
あの日 君のそばで
僕は確か とても大切なことを君に伝えなければならなかったんだ
それなのに 僕はとても臆病で 君の笑顔を もう少しだけ見ていたくて 僕は僕のためだけに 少しだけズルをしたんだ
たぶん 君にはバレていて
僕は 君の優しさに甘えていた
本当は気付いていたって いつか君から聞いたら そんなことあったっけっ

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スロウ

スロウ

夜の匂いを吸い込みながら、腕時計の秒針と心音の類似性について考えていた。
眼帯でふさがれた片方の目は、真白なものを見ているはずなのに何にも見えない。清潔なシーツと、新品のガーゼに包帯。ぴんとしたものを身につけると、ほんの少しの自尊心をくすぐられるから不思議だ。
新しいパジャマを着ると違った自分になれたみたいな気持ちになる。知らないベッドで、真新しいパジャマに袖を通す瞬間。それが一番きれいな自分で居

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白昼夢

白昼夢

もう二度と会えない人がいる。
いつか交わした言葉を思い出せずにいたわたしの夢の中で、彼女が手を振ってこういった。「うそつき」。笑っていたようにも思うし、怒っていたようにも思う。わたしは彼女に何か嘘を吐いていたんだっけ。思い出そうにも、今となってはもう白い薄靄のかかった記憶ばかりが浮かぶ。

彼女のことを、忘れかけている。
最後に会ったときの彼女はどことなく疲れているようだった。昔からそんな感じの、

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