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本当の達成というのは、あるべき状態より良くあること

『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン著)という本を読みました。


ストーリ仕立てのビジネス書で、有名企業などの実例を挙げながら、主に「ビジネスにおける”変化し続けること”の重要性」が説かれています。

読み終えてみると、以前の投稿でご紹介した『勝ち続ける意志力』(梅原大吾著)の内容に通じる部分があって驚きました。
どちらの著者も、
「変わり続けてさえいれば、”失敗”ということはあり得ない」
と語っています。
仮に何かを試して、結果がうまく行かなくても、「この方法ではうまくいかない」という事実がそのまま学びになるので、「後退」や「失敗」にはなり得ないというわけです。

『仕事は楽しいかね?』の著者はアメリカの実業家、
『勝ち続ける意志力』の著者は日本のプロゲーマーです。
あまり共通点がなさそうに思えますが、ジャンルは違っても、物事の本質を見極めるために突き詰めて考えていくと、案外、たどり着く結論は似通ってくるのものかもしれない……なんて思いました。

『仕事は楽しいかね?』の中で、私が一番印象に残ったのは、ディズニー映画『白雪姫』で、願い事を叶えてくれるという井戸を白雪姫がのぞくシーンについて書かれた以下の部分です。

白雪姫の顔が、井戸の底から見た状態、つまり水の向こうから映し出される。顔が水面にゆれててね、水のしずくがぽたぽた井戸に落ちてきて、さーっと波紋が広がるんだ。
いいかい、円を描いて波立つ水面に顔が映って、しかもその顔がゆらゆらとゆれているところを表現するんだよ。それがどんなに難しいことか、想像してごらん。まして、当時はまだコンピューター・アニメーションなんかなかった時代だ。
 ウォルト・ディズニーは、なぜそんなささやかなシーンのために、スタッフに多大の労力と時間を割かせたんだろう。もしスタッフの中に経営管理学修士(MBA)を持つ人がいたらこう批判しただろうね、
『気は確かですか。そんなくだらないもの、カットしてください。プロットには何の影響もないでしょう』」


ウォルト・ディズニーがなぜこのシーンを作ったかと言えば、
「それまでそういう描き方をされたことがなく、困難だったから」
だそうです。
いわゆる”見せどころ”は、このシーン以外にもたくさんあるわけで、仮に「井戸の底から見た白雪姫の顔」を描写しなくても、十分観客を楽しませることはできたはずです。
それでも尚、ウォルト・ディズニーは「完璧のさらに上」を目指したわけですね。

ジブリアニメが何度テレビ放送されても視聴率が下がらないのは、映像の情報量が、1、2度観ただけでは受け止めきれないほど多く、繰り返し観ても飽きないからだ、となにかで読んだ記憶があります。
これもまた、「完璧のさらに上」を求めて制作された結果と言えるでしょう。

『仕事は楽しいかね?』の著者は、このことを以下のように表現しています。

「本当の達成というのは、あるべき状態より良くあることなんだ。ただ良いだけじゃなく、目を見張るようなものであること。マジックだね」

及第点で満足することなく、「目を見張るようなものであること」を目指し続けて初めて、多くの人を魅了し続ける作品ができあがるんですね。

ビジネス書である『仕事は楽しいかね?』から、”創作のキモ”を学べるとは思いませんでした。
こういう「瓢箪から駒」みたいな学びも、読書の楽しみのひとつですね。

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