見出し画像

「具体性を突き詰めていくと、普遍性が立ち上がってくる」という仮説

五日前から、note上で小説の連載を始めました。
タイトルは『すずシネマパラダイス』。
石川県の能登半島の先っぽの町『珠洲(すず)』を舞台にした、町おこしコメディーです。

おかげさまで好評で、「第一話から引き込まれた!」「最新話まで一気読みした」「続きが気になる!」「珠洲に行ってみたくなった」等々、うれしい感想をいただいています。

特にFacebook上でシェアをして、お友達に薦めてくださる方が多いです。
というのも、私は石川県の出身でして、Facebookでは高校の同級生、先輩、後輩を中心に、多くの石川県出身の皆さんと繋がっているのです。
「方言が懐かしい」という声も多く、地元ウケしている状態ということですね。

それと同時に、予想外の反応もいただいています。
同郷”以外”の地方在住の方で、作品を気に入ってさってシェアしてくださる方々がいらっしゃるのです。
例えばこちらのルミさん
「すずパラ」について、noteにこんな素敵な投稿をしてくださいました。

ルミさん以外にも、ご自身がお住まいの地域の町おこしに尽力されている方がFacebookで作品をシェアしてくださっています。
石川県以外の地方の方が、この作品に思い入れを持ってくださるというのは、私にとって予想外であり、とても嬉しい出来事です。
そこで、この”嬉しい誤算”がなぜ起きたのかをちょっと考えてみました。

私は地方を舞台にした作品が好きです。
書くのも見るのも好きなのですが、「見る側」になったとき、ちょっとした引っ掛かりを覚えることもあります。
それは、作品内で描かれている地方の町が「ステレオタイプの田舎だ」と感じたときです。
「田舎の人って、よそ者がキライなんでしょ?」だったり、「のどかで、誰もが心があたたかくて、絆を大切に生きてるんでしょ?」だったりと、「都会の人が思い描く田舎のイメージ」だけで地方の町が描かれているように感じると、どうもモヤモヤしてしまうわけです。

ですので、自分の作品の中で地方を描く場合は、「その町だけが持つ独自性」を大切にしたいと思っています。
『すずシネマパラダイス』に関しても、現地での取材や資料の読み込みに基づいて、「他のどの町とも違う、珠洲(すず)」を描こうと心掛けています。

そのようにして書いている作品に対して、ルミ(Rubby)さんは、
「『ああ、ここもうちと同じなのかな』と感じてしまった」
という感想をお持ちになっています。
これは、私が「珠洲という町の具体性を描こう」と努めるうちに、自然と「町おこしを!と人々が考えるような町が持つ、普遍性」が、フッと立ちあがった、ということなのではないかと思うのです。

コンテンツをつくる際、「ターゲットの絞り込みが重要」ということがよく言われます。
この「ターゲットの絞り込みの重要性」について考えるとき、私はいつも、尊敬する脚本家・鎌田敏夫さんの言葉が思い浮かびます。
かつて鎌田さんは『29歳のクリスマス』というテレビドラマをお書きになりました。
確か小説版の『29歳のクリスマス』のあとがきで読んだのだと思うのですが、鎌田さんはこの作品を、
「29歳の女性だけが面白いと思ってくれればいい。(=それ以外の人の反応は気にしない)」
と思って執筆されたとのこと。
ですが、結果的には29歳の女性”以外”の多くの人にも愛されるヒットドラマとなりました。

この例のように、
「ターゲットを絞り込むと、逆に、多くの層に愛されるコンテンツが出来上がる」
というケースがあり、(口幅ったいのですが)『すずパラ』も、これに似た状態をつくり出しつつあるのではないかと感じています。
「珠洲」という町を具体性を持って描こうとしたことで、結果的に「地方の町が持つ普遍性」が立ち上がったのではないか?ということです。

……と、あれこれ書いておいてなんですが、あくまで「こういうことなのでは?」という仮説です。
ただ、自分の中では「発見!」という感覚があったので、備忘録のつもりで書いてみました。

****************
脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。

スキ♡ボタンは、noteに会員登録してない方も押せますよ!

Twitterアカウント @chiezo2222

noteで全文無料公開中の小説『すずシネマパラダイス』は映画化を目指しています。 https://note.mu/kotoritori/n/nff436c3aef64 サポートいただきましたら、映画化に向けての活動費用に遣わせていただきます!