マガジンのカバー画像

小鳥書房のこと

13
小鳥書房の本屋と出版社のことを、店主が綴っています。
運営しているクリエイター

#東京都国立市

「町とともにある出版社」と店主の問い

「町とともにある出版社」と店主の問い

思えばずっと旅をしていたようなものだった。日常という過酷な旅。幼稚園を泣きながら登園拒否したことを皮切りに、とにかく学校が嫌いで、中学高校では女子校の制服のスカートをたくし上げて塀を乗り越え脱走し、大学では授業に行かずアルバイトと写真を撮ることに明け暮れた。家庭も穏やかではなかった私は、「生きるって狭いなぁ」と葛藤していた。でも、学校と家以外にも世界は続いていて、人の暮らしの営みがある。そのことを

もっとみる
理想と現実と本屋讃歌

理想と現実と本屋讃歌

「本屋なんていう儲からない商売、大変でしょう、続けるのは」

小鳥書房の本屋を開店してからしばらくの間、私はこの言葉に滝行のごとく打たれ続けることになる。滝行と違って心身が浄められるどころか、不安が掻き立てられるだけなのだけど。“本屋=儲からない”の方程式を追究して答えあわせしようとするより、1日でも長くこの店が続くように1冊でも本を買ってくれたらいいのに…。そう思いながら、「たしかにそうですね。

もっとみる
場を編集することは「出会いなおす」こと。本屋の50年を縁でつくれたら

場を編集することは「出会いなおす」こと。本屋の50年を縁でつくれたら

つい先日、かつて勤めていた出版社の先輩から、「落合さんは本をつくる人じゃなくて、場をつくる人だよね」と言われた。絶妙に真意を探りかねて「編集者として未熟ってこと…?」と落ち込んだけれど、そのひとことで「“場を編集する”って、どういうことだろう」と考えはじめ、最近ようやく答えが見つかりつつある。

場を編集するということは、人と人の関係をつくりなおすことだと思う。「出会いなおす」きっかけをつくること

もっとみる