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小鳥書房のこと

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小鳥書房の本屋と出版社のことを、店主が綴っています。
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2021年4月の記事一覧

「町とともにある出版社」と店主の問い

「町とともにある出版社」と店主の問い

思えばずっと旅をしていたようなものだった。日常という過酷な旅。幼稚園を泣きながら登園拒否したことを皮切りに、とにかく学校が嫌いで、中学高校では女子校の制服のスカートをたくし上げて塀を乗り越え脱走し、大学では授業に行かずアルバイトと写真を撮ることに明け暮れた。家庭も穏やかではなかった私は、「生きるって狭いなぁ」と葛藤していた。でも、学校と家以外にも世界は続いていて、人の暮らしの営みがある。そのことを

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理想と現実と本屋讃歌

理想と現実と本屋讃歌

「本屋なんていう儲からない商売、大変でしょう、続けるのは」

小鳥書房の本屋を開店してからしばらくの間、私はこの言葉に滝行のごとく打たれ続けることになる。滝行と違って心身が浄められるどころか、不安が掻き立てられるだけなのだけど。“本屋=儲からない”の方程式を追究して答えあわせしようとするより、1日でも長くこの店が続くように1冊でも本を買ってくれたらいいのに…。そう思いながら、「たしかにそうですね。

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小鳥書房文学賞 お客さんとのエピソード編

小鳥書房文学賞 お客さんとのエピソード編

第1回小鳥書房文学賞の受賞作品を発表してから、今日でちょうど1か月が経った。

こうしてweb上で発表をしたのだけど、じつは後日談がある。作品を応募くださった方々が、発表の直後から、思いがけず続々と小鳥書房の本屋を訪れてくれたのだ。

小鳥書房の本屋ができた2年前から、お客さんとして通ってくださっているREIさんは、「はじめて小説を書いたよ。楽しかった」と、私に伝えに訪れてくれた。REIさんの作品

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