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語学力を極めるよりも大切なこと

私の母国語は二つあります。日本語とイタリア語です。
脳内の言語は、トピックによって(無意識に)切り替えます。
このように、どちらも本当に同レベルで操れるため、両方母国語としています。

英語は、もちろんネイティブレベルではありませんが、支障なく話せます。
ちなみに、海外で育った=英語が話せる、とよく勘違いされますが、育った地域が英語圏でない限りそれはイコールではないはずです。
ただ、例えば欧州であれば非英語圏であっても、多少文法や言葉が似ていたりするので、日本語から英語を学ぶよりハードルが低いのも事実です。また、教育の仕組み上、日本の受験英語のような読み書きのみでなく、とにかくスピーキングに力を入れるので、話せるようになるのかもしれません。

まとめると、私は計3か国語を操って生きています。

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TOEIC大好き日本

新卒入社した会社に、入社前にTOEICの受験結果の提出を求められました。ヨーロッパでTOEICは全く一般的ではなく受けたことがなかったので、CEFRのB2レベル(https://prontest.co.jp/blog/level-of-cefr/)試験に合格していること、在学中の大学院はオール英語で修士論文も英語で書いていることを伝えました。ですが、対応に困ったのか(笑)、結局みんなと同じTOEICの試験を受けてくれ、と言われました。

日本では、何かとTOEICをはじめとする「点数」で語学力を測ろうとします。無意味とは思いませんが、日本での受験英語教育のみを受けてきた場合、TOEICが満点だったとしても、それは英語が流暢に話せる証明にはなりません。

さらに言うと、流暢に完璧な英語が話せたとして、何をどのように伝えるかが一番大切なポイントです。これは、語学力の「スキル」のみにフォーカスする日本の学校ではなかなか教えてくれないことじゃないでしょうか。

TOEICでは測れないスキル

(私は欧米での経験がメインなので、欧米と括ることをお許しください)
欧米では、議論・ディスカッションするという「文化」があります。持論を展開し、それに対して相手が批判・批評し、さらに議論が白熱するといったループです。とにかく、酒を片手に、食事と共に、あらゆる場面でディスカッションします。
そんな時、議論の内容が理解できたとしても、そこに参戦するのは案外ハードルが高いものです。そもそも話すスピードも速いし、1人が喋る分量も多い、相手を待ったり間を置くような配慮はない、割り込み喋りばかり、等々。
日本では、大人であれば、相手を尊重しながら話していくスタイルですが、欧米ではかなりアグレッシブに行かないと議論にすら入れません。

そうすると、欧米人からすると「日本人は物静かだ」「日本人は何も考えがないのか」など思われるのです。そんなことない、ただ文化の違いで発言が思うようにできていないだけで、日本人にも感情の起伏が激しい人もいれば、色々言いたいことがある人もいるでしょう。

こういった異文化を持つ相手と対峙する力は、TOEICの勉強をするだけでは身につくことはありません。もちろん、議論に耐えうるベースとなる語学力は必要ですが、そこを高めることばかりにフォーカスしても、意味はあまりないと思うのです。

発音も文法も決して上手とは言えないけれど、自信を持って自分の考えや意見を述べることができる人と、発言はできないけど読み書きだけはできる人。どちらがビジネスの場面で活躍するかというと、答えは明白ですよね。

日本の外に出てみると、案外みんなぐちゃぐちゃの英語を話しています。文法はめちゃくちゃ、発音も訛りまくり、それでも怯まず会話しているのです。もちろん高い語学力は、あれば良いに越したことはありません。ですが、それ以上に、相手の文化的背景や、それに伴うコミュニケーション手法の違いなどを学び、実践を積むことが大切だと考えています。

異文化対応のための包括スキルセット

多様なメンバー間や多様な環境で、自己の価値を最大限発揮するために必要な要素は3つあると考えています。

異文化対応のための包括スキルセットの3要素

語学スキルはやはり、ベースとしては必要です。何を言っているか全く分からない、何を言うにも言葉が出てこない、であれば「議論に入る」ということのスタートラインにすら立てません。「多少聞き逃すこともあるが概要は理解できる」や、「ゆっくりなら自分が思っていることを中学生レベルの語彙であってもなんとか伝えることができる」のであれば、ひとまずOKです。

次に異文化理解力。先ほど述べた話ですが、やはりいくら語学スキルが高くても、自分とは異なる文化的背景をある程度理解しないと、議論に入るタイミングや、どこまで批判したらいいのか、どこまで自分の意見を伝えたらいいのか、自分の意見を伝える際の温度感など、コミュニケーションにおける機微などが分からず、結局言いたいことを言えなかったり、あるいはハレーションにつながります。

最後にドメイン知識。これは忘れがちですが、一番大事です。結局、何を伝えるかです。語学スキルや異文化理解力は、この「何を伝えるか」のための手段に過ぎません。プロフェッショナルとして確固たる知識を持っていれば、上記二つを最低限磨けば相手には伝わります。語学はそこそこできて議論には入ってくるけど、、、結局大したこと言ってないんじゃない?と思われないためにも、まずは中身(議論の内容、ビジネスのプラン、あるいは自分自身の中身、なんでもいいんです)を磨くべきです。伝えることが何もない中身スカスカの人が、なぜ語学力や異文化理解を高める必要があるのでしょうか?

少しシビアになりましたが、自戒も込めての記事になりました。
プロフェッショナルとしてのレベルが向上すれば、自然と自信はついてきますし、その自信が語学力を最大限に活かす後押しとなってくれます。異文化理解は、経験を積むことによって身をもって学び、さらにより良い議論を展開できるようになるでしょう。
一つ一つは個別のスキルでもあり、これら全て包括したものが「異文化対応スキルセット」として機能すると思います。この3要素の関係性を意識することによって、よりダイバーシティに溢れる世の中を生き抜いていく力を身につけることができるはずです。


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