和歌・春涙
「春雨のさはへふるごと音もなく
人に知られで濡るる袖かな」
小野小町・玉葉和歌集
きめ細やかな
さらさらとした春の雨が
静かに世界を濡らしてゆく
その春雨が沢へ降るように、
音もなく
わたしは涙を流す
ぽろぽろと
冷たい雫が頬をつたい
涙をぬぐう袖は濡れる
愛しい人、
わたしがひとりで
あなたを想って泣いていることを
何も知らないのね
*
百花繚乱の春の季節に
ひとり
恋の重さに耐え忍び、
涙している美しい人。
まるでそれは花散らしの雨で
散ってゆく桜のようで、
なんとも切なくいじらしい。
こんな歌をもらった男性は、
今すぐに彼女のもとに
駆けつけたくなるのではないでしょうか。
その可憐なすがたを抱きしめて、
涙をぬぐわずにはいられない‥…。
そんな気持ちにさせる歌です。
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