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和歌・黄泉がえり

「山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく」

万葉集巻2・158 高市皇子


わたしの姉が死出の旅へと向かった

死者の魂は山へ入るという

姉を追いかけて
黄色の山吹の花が美しく咲き誇っている、
山の清水を汲みに行きたい

黄泉(よみ)の水を手に入れて
姉を蘇らせたい

しかし生きている私には、
そこに行くまでの道がわからないのだ…

*

山吹の花の黄色と山の清水で、
黄泉(よみ)の国を連想させる。

山吹が咲くのはちょうど今、
緑がいっせいに芽吹く頃。

生命力に溢れた季節の情景に、
死の世界が重ね合わせられる不思議。

しかしそれゆえに
命の美しさを感じる歌。

若くして亡くなった
美しい人が逝く場所は、
このように美しい場所なのだろう。

山吹の花


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