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百人一首

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2021年10月の記事一覧

和歌・逃れられない悲しみ

和歌・逃れられない悲しみ

「奥山に紅葉踏み分け
 鳴く鹿のこゑ聞く時ぞ秋はかなしき」
 古今和歌集・猿丸太夫

(山奥まで分け入って
散り落ちた紅葉を踏み分けたなら、
鹿の鳴く声が聞こえた。
秋は物悲しいものだ。)

この歌で奥山に紅葉を踏み分けているのは
鹿だとする読み方が一般的だけれど、
わたしは人と解釈する方がしっくりくる。

俗世が嫌になって
人里離れた山奥に居場所を求めたけれど、
物悲しい鹿の鳴き声を聞いたら

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和歌・センチメンタルな秋

和歌・センチメンタルな秋

「寂しさに宿立ち出でて眺むれば
 いづこも同じ秋の夕暮れ」
 良暹(りょうぜん)法師

寂しさに耐えかねて
外の空気でも吸って気を紛らわそうと
家の外へ出てみた
しかし
辺りを眺めても
どこもかしこも同じように
物悲しい秋の夕暮れが広がるばかりだった…

孤独や寂しさは
ネガティブなものとして嫌われがちですが、
いにしえの人びとは
実に感慨深いものとして
しみじみと味わい愛おしんでいます。

昔の

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