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詩-コトノオト-

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休日/雪/ホットチョコ

休日/雪/ホットチョコ

雪の予報が子守唄になったから
朝、目覚めたところがやたら寒い

天気管に広がる羽根は
丸まった背中から消えたもの

窓の外、雪は積もりはじめた
湿った雪の落ちる速度は想像よりも遥かに速く
わたしのことなど気にも留めずに
ずんずん寒くなる

何処へも行きたくないなぁ

チョコレートはひと欠片25g
鍋で温めたミルクに溶かして

浮かべたマシュマロは
浸かったところから形を失う

明日になれば
いつも

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窓際の胸像

窓際の胸像

風は校庭を煽り
走り回る子どもらの
白い肌に砂を吹き付け
彼や彼女らを美術品にした
大いちょうから
黄色な葉は
(Good bye!Good bye!)
無限に飛び出し
みんな何処へ行く

逆上がり
宙返り
なんのその
柵を越え
門限破り
怖くない
窓ガラス
割らない
監視員
居ないプールに
揺れる藻の
サンドレス
腐蝕した
パニエとレース
綿密な枝の影を巻き付けては
巻き付けては器用に臍帯をほど

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蛋白石のねむり

蛋白石のねむり

乱雑に重ねられた手紙に
ぽつぽつと雨が降りはじめ
境界を失くした紙片は
月曜日の集積所で
収集を待つ月刊誌の断面に似てくる
昨夜、思い立って一括りにした恋愛ドラマは
明け方の湿気を吸って
鍵を失くした日記帳のように清潔だ

(菫色の月光が注ぐとき蛋白石のねむりは静かに/饒舌になる)

週末のラインを操る
指先だけに顕れる
Lamé
所謂、みずうみのねむる蛋白石は
てらてらとして
月のあかるい間に秘

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ピーコック・オア

ピーコック・オア

孔雀が水浴びをした朝は
雲が幼鳥の胸のようにふっくらとして
四月の曇天に 白いブラウスが震えている

自転車を漕ぎ出せば
肺は冷たい空気で満たされ
見慣れた貯水池はすっかり青空だった
わたしは突然 溺れてしまって
体育のプールはどうしていつも寒いのか
青く錆びて動かない唇で文句も言えず
終業のチャイムが鳴るまで太陽を探していた

鳥が四羽 連れ立って飛んでゆく
彼処はきっと暖かいのだろう
(手を引

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レモンシロップ

レモンシロップ

夏の終わりを労わるような
レモンを切る感触が
湿った肌を清拭する
作りあげた層は
糖水を思い出して
砂糖はよく泣いた
一滴、一滴、が
保存瓶の底に溜まる
結晶と溶解の
繰り返しにあらわれる揺らぎは
天気雨と蝉時雨のなかで産み落とされた
蜻蛉の卵の羽ばたきだ

清潔なスプーンで掬う最初のひと匙は
くちもとに密やかな光を留め
反時計回りで探る味蕾に
苦味が追いかけてくる
ひみつ、の合図にとまる蜻蛉と

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ヒカルヒフ

流れ星が消えた後のことを知らないけれど
きみが星じゃなくて良かったと思う
重力がはたらいているから
高鉄棒でグライダーをしても降り立つ場所がある

砂にまみれた挫創を洗うと球体は輝きを増して
瘡蓋を作ってはぴかぴか光る皮膚で
サッカーボールを追いかけ
グラウンドをまた駆けてゆく

(Twitter 2018.11.12)
毎日が記念詩@mydear2000s #皮膚詩 に寄せて 2019.1.

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雨待ち

そろそろ雨は降りますか
(いえいえ まだまだ)

どこもかしこも折れたままの
骨をしまって羽ばたけない
わたしの胸はこんなに青く
疑いようがないというのに

水辺は凍り
鳥達は諦めたのだ
もう足掻くこともできない

音もなく霜がおり
無抵抗に踏み荒らされた
可哀想な霜柱
土に埋もれて
あれはわたしの骨でした

そろそろ雨は降りますか
(いえいえ まだまだ)

にじり寄る氷柱の先

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ほしにうまれて

いみは なく
いとも ない
ほしは きままに かがやいて
だれかが かってに むすぶもの
かみのけだって こっぷだって
せいざになれる ほしに うまれて

(Twitter 2019.1.8)

三月

冬の記憶は全然モノクロで
吐き出す息も
傍らのコーヒーも
まったく白と黒ばかり

木々の枝の先の先
くっきりとしたシルエットも
皺だらけの手招きみたく
なんだか少し恐ろしかった

6Bの鉛筆で書いた文字の柔らかさ
確かな筆致で膨らんだ
練習帳はもう閉じない

あとは開くだけの梅の花
枝のシルエットも丸みを帯びて
真っ赤な花を咲かせてよ

(Twitter 2019.3.14)

船長

実に我儘な船長である。
太陽が昇るときに金の、
沈むときにはルビーの光芒が指す方へ
と言って方位磁石を持たない。
迷ったら鳥に聞け、
イルカや鯨に聞けと言って地図を持たない。
お天道様には敵わないと言い、
だからふいに嵐にのまれ慌てふためく。
そういうものだと言って静かな海のおもてが眩く輝くのに
幾度も心を踊らせるのだ。

(Twitter 2019.3.17)