見出し画像

主語は大事だよ!伝え方の工夫

2022.12.28 音声配信より
Nottaを活用して文字起こし。

stand.fm音声配信はこちら💁 押せば飛べます

わかりやすく手短に伝えるっていうことは、これは発達障害のお子さんに対しても有効ですし、失語症の方とか、あとは脳にダメージを負って、頭の働きに後遺症が出た高次脳機能障害と言われる方々、に対しても有効です。
一般的な子育てに関しても、これはきっと有効なんじゃないのかなと思っている「伝えかた」の話題です。

放課後デイの片付けと声かけ


これは放課後等デイサービスであった出来事です。放課後等デイサービスに、お子さんたちが来ると、ランドセルとか上着とか水筒とか持ってきますよね。学校帰りの荷物そのままで来所されます。1個のロッカーを1人で使う感じで、そこにランドセルや荷物を入れてもらいます。
ランドセルから宿題出して筆記用具出して、テーブルがある机があるところに持ってきて、宿題やったりしますよね。

宿題が終わった学習が終わった「お片付けしよう」とか「荷物をしまおうね」って、大人の方が言いますよね。
お子さんたちはどうするか。ロッカーに持っていく。ただ、ランドセルの上にポンて置いておくんですね。

そうすると楽しく遊んで帰ります、っていうときに、帰り支度がちょっとわちゃわちゃして、帰り支度に時間がかかったり。中にはですね、スタッフが、片付けしちゃうていう場合もありますし、大体帰る時前後の時間で遊びが止められないとか、トランプで負けちゃったとか、何か自分の思う通りにいかないとかで、帰り支度のときって、時間通りきっちり気分よく帰るっていうのは、わりかし難しかったりするんです。

これ現場現場に出てらっしゃる支援者の方や親御さんは分かると思うんですけど、遊びに行って「さあ帰るよ」っていうときの気持ちの切り替え。これはね、すんなり行く方が珍しい。しかもお子さんが複数いますし、みんな発達凹凸抱えてるお子さんたちなので、しょっちゅうもめたり喧嘩したり、するんですよ。それから、落ち着くまで時間がかかりながらワチャワチャして帰る。
そのときに、ランドセルの上に宿題や筆記用具などが乗っかってて、自分がイライラしてるのに、またこれをランドセルに入れないといけないっていうと何か手間だったりして、自分できっちり片付けるっていうことができなくて結局スタッフが手伝ったり、あとはランドセルだけさっと持って行って、急いで帰るぞっていうときに忘れ物しちゃうっていうね。

そのロッカーの中に、物が乗っている状態で、ランドセルだけ持っていく。ランドセルの中に荷物をしまっていないことで、その帰り支度のときにあたふたする、という状況が起こりやすくなる。それを防ぐためにどうしたら良いか?と思ったのが一つ。

どこのお風呂?どこのトイレ?


もう一つは、これね面白かったんですけど、自閉症スペクトラムのあるお子さんと個別でお話してたときに、大体こういうお子さんって話したいことがあって、会話の相手がいて話したいっていうときに、大体話題が唐突だったりすることが多いんです。それは慣れてるんですが、「さとうさんのおうちはどこのおうち?」って聞いたんですよ。"◯◯市のおうちだよ"って答えました。
その次に「さとうさんのお風呂は、どこのお風呂?」って聞いたんですよ。"おうちのお風呂かな"って言ったんですけど、なんかね、なんかその答えじゃないんだよっていう感じで、しっくりきてなさそうな表情をしている。

その次に「さとうさんのトイレはどこのトイレ?」って聞いたんですよ。だから、この【どこ】というのはどこの場所の?そのどこではなくて、どこのメーカーのトイレなの?っていうことを聞いてたのではないか⁈と、閃きました。
だから
"んー、TOTOだったと思うよ。LIXILではなかったと思う"って、話したんです。そしたら「ふぅーん、そうなんだあー」って言って、満足そうでした。

なるほど。どこのメーカーの?だったんだな!っていうことで、なるほどなるほど!よかったよかった!そっちね!って思って。
そこに、主語が隠れてたんですよね。「どこのトイレ?」っていう質問が、どこの場所にトイレがあるのとか、何市にあるの、というわけではなくて【どこのメーカーなの?】っていうそこだったんだっていうのに気づいた。そこに主語が隠れてたんだな。聞きたいことのエッセンスがそこにあったんだなっていうことがありました。

ロッカー片付け問題。どうしたら分かりやすくなるのか。

ひとつめに提示した、ロッカーに物をしまう。っという話題。これは「片付けよう」「しまってこよう」ってスタッフが言ったとして、その子たちは指示の理解は間違っていないですよね。
荷物をロッカーの中に入れた。
だけど、そこの指示に主語がない。わかりやすく具体的な指示をしていないっていうことになるんです。

例えば、よし宿題が終わった時「この宿題をしまおうね」っていうだけではなく
「ランドセルの上に置くだけが片づけじゃないよ、ランドセルの中にしまって来ようねそしたらかっこいいよ。帰るときもラクだしね」なんてちょっとメリットを付け加えて詳しく伝えると、いつもは反抗的な態度で知的機能が高いお子さんでも、素直にしまってくれます。「ランドセルの中にしまってくれて、サンキュー!これ帰るとき楽だわ。忘れ物もないね。」ってすぐに気軽に褒めるようにしています。

“なんでランドセルの中にしまわないの?ほらしまって”っていうふうに注意されちゃいがちなんですね、こういう子たちって。だけどその子たちには悪気はなくて、片付けようと言ったから、“いやロッカーの中に片づけたじゃん”っていう、その子たちなりの理論があるんです。

大人の指示は具体的に!主題や主語が大切!

「ロッカーにしまおうね」では指示が曖昧すぎて誤解を生むので、「ロッカーの中に入ってるランドセルを開けて、ランドセルの中にしまってきて」と詳細に伝わる工夫が必要だった。たた、「どこのメーカーのトイレなんですか」とか、「どこのメーカーのスマートフォンなんですか」とかって具体的に聞かれると「TOTOだよ。Androidですよ。」と答えやすいですよね。

これらは、具体的に主題や主語を伝える事がいかに重要か、を感じた出来事でした。質問や指示の内容理解のためには、推測する・類推する想像力っていうのが結構必要ですよね。「どこの」というのはどこを何を指し示しているんだろう?って推測するっていうことって、ものすごく高度なこと・難しいことだと思いませんか?

「ちょっと、待ってて」
っていうふうに言ってしまいがちだけれども
「よし、30分になったらおやつを食べよう、それまで待っててくれるかな。」
そういうふうに具体的にわかりやすく伝えるっていうことは重要です。

特に自閉症スペクトラム(ASD)があるお子さんは、言葉の裏を読むとか、この人がどういうことを伝えたいのかなっていうことを推測する・イマジネーションするっていうことが苦手なので、だから、わかりやすく具体的に主語を意識して伝えるっていうことが大切なんだよっていうことなんです。

氷山の土台を見つめる

“わかりやすく手短に伝えましょう”って育児書や保育士さんのテキストにも書いてある事だと思うんですけど、それって氷山の海から出てる表面の上面の部分だけなんですよね。だけど、私たち言語聴覚士は、その氷山のその下の部分、海に隠れてる土台の部分を結構下積みで勉強してきているので

このときにどういうふうにしたら、このお子さんがわかりやすいんだろうとか
この会話の食い違い方や違和感っていうのはどこから生まれてくるのかな?
どうそたら、コミュニケーションを取りやすくなるんだろう?
っていうことを考える。

氷山の海の中に入ってる部分の土台を考えることができるので、療法士の頭の中では、ものすごくフル回転でそういうことを考えてるんですけど、ただ表面上はニコニコ笑って楽しくお話したり遊んでいるっていうふうに周りから見えますよね。
「クールブレイン ウォームハート(冷静な頭脳と温かな心)」が必須なのです。

今回のテーマ「主語は大事」「わかりやすく手短に伝える。」
言葉とかコミュニケーションって、やはり深いです。

はい。では今日はここまでにしたいと思います。
また次回お会いしましょう。ありがとうございました。

この記事が参加している募集

#この経験に学べ

55,242件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?