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短歌と和歌と

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中学生向けに和歌・短歌を語る練習をしています。短歌は初学者。和歌は大学で多少触れたレベル。
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2021年10月の記事一覧

【新古今集】大和国と弓張の月

【新古今集】大和国と弓張の月

敷島や高円山の雲間より
光さしそふ弓張の月
(秋歌上・383・堀河院)

 光芒。
 薄明光線。
 天使の梯子。
 この現象に多くの呼び方があることは、それだけ人々に愛されてきたことを物語ります。雲間から地上にするりと繋がる光。
 加えてそれが夜だったらどうでしょう。闇に沈む地上に差し下ろす清らかな月光。まるで夜空から地上を照らし出すサーチライトのよう。光を操り地上をのぞく誰かがいるのかな。

 

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《新古今集》月と涙

《新古今集》月と涙

いつまでか涙曇らで月は見し
秋待ちえても秋ぞ恋しき
   (秋歌上・379・慈円)

 月はまぼろしをまといます。遠くの友人、親兄弟、そして恋人。
 しばしば自らの憂愁も投影されます。
 だから『新古今和歌集』にもこんなやりとりが載せられました。

 月を見てつかはしける      
見る人の袖をぞしぼる秋の夜は
月にいかなるかげかそふらん
    (409 藤原範永朝臣)
   返し
身にそへ

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【新古今集】ススキが濡れる

【新古今集】ススキが濡れる

花すすきまた露深しほに出でて
ながめじと思ふ秋のさかりを
  (秋歌上・349・式子内親王)

 すすきがしとどに濡れています。それでもすすきは茎が強いから、倒れ伏すこと無くゆらり、ゆらり。秋の盛りを迎えた野原にはそんなすすきがたくさん。

 式子はすすきを見つめたくなかったんです。いえ、見つめることを否定しているんじゃないですね。「ほに出でて」見つめることをするまいよ、と思っていたのです。

 

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