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23歳の君へ。"種"をひとつ、プレゼントしよう。

この手紙を読んでいるということは、君はこの先の未来がどうなるか、知りたくて仕方がないようだね。無理もないことだ。君は就職活動に失敗して、内定がひとつもなく、知人に誘われるがまま、大阪のとても小さな会社で働き始めた。

男3人でルームシェア。朝から晩まで働いて帰宅し、缶のオイルサーディンを白ごはんにぶっかけただけだけの「オイルサーディンぶっかけ飯」を分ける。月に一度の王将の焼きそばが贅沢。夏にはエアコンがないから扇風機だけで、布団なしで安っぽいクッションを枕にして寝ている。

毎日片道1時間半かけて移動し、朝から晩まで働いて月末には3万円を受け取る。大学の同期や同年代が、日本人なら誰でも知っているような会社で働いていたり、希望に胸高鳴らせて自分の夢へ一歩一歩進んでいる時に、君は自分に自信をもてずにいる......

あ、なんでそんなに詳しく知っているかって?それはそうだよ。僕は5年後の君だからね。

* * *

少しは信じてもらえたかな?よし、じゃあ本題に入っていくよ。

はじめに、正直に言おう。君がこれからおくる4年ほどの生活は、けっこう厳しい。つらいことがたくさんある。......おっと、ここで読むのをやめないで。

不安で答えを知りたくて、この手紙を開いた君には悪いけど、ここには「こうすればいい」みたいな話は一切書かない。だって今の僕が正解なわけじゃないからね。そんな話よりも、君に伝えたい "3つのこと" がある。

最後まで読めば、きっとこれからの人生に役に立つだろう。

ひとつ。点と点はつながり、意味を成すこと。

スティーブ・ジョブズの "Connecting the dots"を知っているよね。 君くらいの年齢だと、まだ彼の言っていることをほとんど理解できていないに等しい。

実際いま君は、目の前にある仕事や作業、出来事が何に繋がるのかまったくわからないことが多いだろう。「いったい何の意味があるんだ」と思ってしまうこともあるだろう。

それもそのはず。だって「そういうものだから」、と言うと少し乱暴かな。「何かに繋がる」とか「意味がある」とかって言うのは、未来から見て振り返った時にわかるものなんだ。だから、いまの君が未来の「意味」を知ることは、そもそもできない。

それに言ってしまえば、意味のあるものなんてない。求めるものでもない。意味をつくるのは自分だ。......ちょっと頭が混乱してきたかな。じゃあ2つめに進もう。進んでいくうちに、わかることもあるからさ。

ふたつ。「点」とは、「希望の種」であること。

意味っていうのは、「希望」でもあるんだよ。これはいま僕が、つまり28歳を迎えようとしている君が毎日実感していることなのだけど......

「〜〜には意味があった」「〜〜したことが◯◯に繋がった」という時、人はきっと目を輝かせてワクワクしたり、喜びの涙を流したりする。「あぁ、いままでいろいろあったけど、ここまでやってきて良かったな」と。

そうなるためには、自分で「未来にその瞬間が生まれるように、いまの自分が下ごしらえする」必要がある。とはいえ、この先どうなるか誰も保証はできないし、予測できないことがたくさんで、「君が求めているような正解」はない。希望の種を蒔いたところで、何も変わらないと思ってしまうかもしれない。

でも......もしつらいことがあっても、何かに負けてしまいそうになっても、希望の種を蒔くことをやめないで。これは僕の中で確信に近いのだけど、人は「絶望すると死んでしまう」。

希望があれば、生きていける。前に進むことができる。嵐の中も、踏ん張ることができる。そしていつか(それは近い将来かもしれない)、種が育ち、葉をつけ、花になる時がくる。君はきっと、その風景を気に入るだろう。

みっつ。どんな「希望」を蒔くのか、そして、「いま蒔いているのか」を考えること。

3つめが一番大切なことだから、いまから話すことだけは憶えていてほしい。

君はどんな「希望の種」を蒔きたいだろうか。言い換えれば、君の幸せとはなんだろうか。いつどこで何をしていたいのか。君は誰といたいのか。「なんだ、よく言われることじゃないか」と思ったかもしれない。でも実際に本当に大切なことなんだ。

ここまで、「希望の種を蒔く」という話をしてきたよね。それをする上で、忘れてはいけないことが実はあって......それは「時間は有限」だということ。君の身体はひとつ。君と関わる人の身体もひとつ。何もかもできるわけじゃない。

どんな種を蒔くか、すぐには答えがでないと思う。でも、考え続けることが大切なんだ。難しく感じるかもしれないから、ヒントを書いておくね。

「蒔いた種はほったらかしせずに、水をやって育てること。蒔いてみてどうだったか、成長過程を見守ってほしい。時には枯れてしまうこともあるけど、それはそれで間違いじゃない。

あと、これが実はとても大切なのだけど、「蒔いているときは、希望と思えない種」もある。最初に言ったことを思い出して。意味をつくるのは自分だったよね。「希望」という意味をつくるのも、君だ。

* * *

がっかりしたかな?答えが見つからなかったから。いまはこの手紙に書かれていることに、あまり実感がわかないだろう。だから最後に、君への想いを28歳の君から送ろうと思う。

僕はとても君に感謝している。君が自暴自棄にならず種を蒔き続けたことで、僕はいま、充実した日々を過ごせているから。熱意をもって仕事に取り組み、周りには素敵な仲間や友達がいて......これからどんな風に生きていこうか、楽しみなんだ。できることなら、いま僕が見ている景色を、君に見せたいよ。

ちょっと説教くさい手紙だったかな。年を重ねると、こんな話をしてしまうものだって、いま思ったよ。僕も「33歳の僕」や「42歳の僕」からひょっとしたらこんな手紙を受け取るのかもしれないね。僕も、彼らがワクワクできるように、これからも希望の種を蒔いていくよ。

くじけそうになったとき、どうすればいいかわからなくなったとき、この手紙を読み返してほしい。

いまを大切にして、ひとつ、またひとつ、希望の種を蒔いていこう。育てていこう。そして君にとっての僕のように、いつか誰かに種をプレゼントしてくたら嬉しい。

ー 28歳の君より

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