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第7回 資本政策と株主の関係 / プレイドIPOの軌跡

こんにちは、プレイド Legalチームの澤井と申します。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、普段、私が注力しているガバナンスの視点から、プレイドのIPO終盤での資本政策と株主の話にフォーカスしてみたいと思います。


プレイドのガバナンス

「ガバナンス」って、人によって様々な捉え方があるワードだと思います。
プレイドでも考え方が統一されているわけではなく、その捉え方や思いも日々アップデートしてきているような感覚でいます。
最近は、すごい端的にまとめてしまうと、会社の主だった事項について、議論の場とともに、承認、報告、モニタリングの環境がバランスよく配置されていることだと考えたりしています。

これは一つの問題意識から来ているところでもあって、例えば、代表取締役や社長が意思決定していればそれでよいのか?ということだったりします。
トップがすべて見えている規模の会社であれば、その確度は高くなりそうですし、トップがOKであれば、会社の決定としては治まっているかもしれません。でも、本当に最適な意思決定なのか?と考えれば、トップも全知全能ではありませんし、答えは「NO」かもしれません。別の人が決めた方が、より適切な答えが出るかもしれないし、仮にトップが最終決定するにしても、別の人の意見は踏まえてほしいとか、そういったケースも想定されます。
この視点は、パブリックになるということでは、IPOの前後で大きく変わっていく部分だと思います。

これをどのタイミングで、どのように担保していくのか、工夫しがいがあるところです。
一つ考えられるのは、アーキテクチャとして組織や決裁権限、ルールを網羅的かつ細かく設計することが考えられます。これは規律や効率性を生み、また所定の決断を推進するとの点ではメリットがあるかもしれません。
ただ、これだけであると、どうしても全社一丸で事業を考えスケールさせていくスタンスに馴染みにくいような気がしますし、決断における、なぜ?といったことに対する思考停止や、他者への積極的な干渉を無意識に制限していく方にも働くかもしれません。
そのため、組織や決裁権限、ルールは極力最小限で、後付けしていくくらいの気持ちで、バランスを見て体制を考えていくことが大事な気がします。
少なくとも現時点では、ルールのような形は極力少なく、柔軟にと思っています。
必要な骨格は持ちつつ、今のプレイドの状態や規模に応じた最適な解を求めることができる、あるいはそういった決断に寄せていけるような体制。具体的には、会議体や決裁という形にこだわらず、例えばプロジェクトのような集まりかもしれません。またslackのチャンネル、あるいはメーリングリストで済ませることもできるかもしれません。誰がどこで何を知り、参加できるか、議論できるかということを意識しています。

プレイドでは、こういった考え方を根底に取締役会や社内の意思決定プロセスの検討を日々重ねてきています。

株主との対話

IPO前のプレイドでは、既存株主から出資を受け、ともに事業を進めるにあたり、ガバナンスの観点でもその関係性をうまく作ってくることができたのではないかと思います。
具体的には、参入ステージに応じたざっくりとした役割分担とコミュニケーションと言えるかもしれません。
シリーズAB、初期のVC株主には、役員の立場をもって経営にもより深く入ってもらいました。やはり会社のバリュエーションが念頭に置かれるせいか、それを生み出すための事業戦略や体制等に重きが置かれるものの、多岐に亘って助言を得たり、アジェンダによっては明確に反対意見も出してもらいます。そういった良い緊張感のもと足場を固めてくることができました。
また、リードが二社ということで議論の規模として最適であったようにも思います。
シリーズC以降のVC株主は、毎々の経営参画よりは、予実や重要議案に対する隔月のモニタリングや平時の営業協力をメインに担ってもらう体制にしました。
このように、誰がどこまで関わるかを明確にすることで、プレイドの経営判断が冗長にならず、また内部でのパワーバランスの配慮や妙な根回しといった非効率な労力を要せず実直に、コンパクトに議論を進めてくることができたのかもしれません。
その上で、お互いが話しやすい環境(距離感)についてはかなり意識したところです。形式的なだけのアジェンダは徹底的に圧縮して、議論の時間を十分にとったり、定例会議の外でもライトに意見をもらえる場をセッティングするなどしました。
こういった繰り返しによって、平時から協力を得やすい関係性を作ることができたのかもしれません。

少し脱線しますが、コンパクトな議論とは言ってもアジェンダ次第では議論が最高に盛り上がったのも事実で、その議論が成熟するまでの間は厳しく「NO」を突きつけられるということもありました。
今振り返ると思わず笑ってしまいますが、散々議論して、概ね理解が得られたと思って最終議場に諮ったら「NO!」次回持ち越し。次も改めて精査して、取締役会よりもさらにスモールなメンバーでミーティングを重ね、ボードでも議論し、相当整った雰囲気の中、最終議場に諮ったら「NO!!」。長いもので数ヶ月に亘って議論することもありました。
ただ、振り返ると、とてもよい結果になりました。社内の経営メンバーとしては、何度も自らに問いかけ確認を重ねることにもなりましたし、その過程で覚悟もより強固なものとなり、その後の推進力にも良い影響が出てくると実感したものです。

プレイドの場合は、皆が納得できるまで、とことん話し合うことができたように思います。
そして、これが、IPOの終盤でも極めて良い影響を持ってきてくれることになったのではないかと思います。


IPOにフォーカスした資本政策

プレイドでは、公募・売出しにあたり、社外のすべてのVC株主に、各自が保有する株式の80~90%もの売出しに協力してもらうことができました。

しかも、一部の株主には360日のロックアップ(グローバルオファリングでは180日が一般的と言われています)、残りのすべての株主には180日のロックアップに応じてもらえることになりました。

ここからは、IPOにフォーカスしたプレイドの資本政策として、公募・売出しまでに既存株主との間でどのようなコミュニケーションがあったのか、どういった点をプレイドとして重視してきたのか、また、どういったハードルがあったのかについての話に移っていきます。

非上場企業にとってIPOはあくまで選択肢の一つに過ぎません。そのため、IPOにフォーカスして事業活動を行うわけではありませんが、IPOを一つの目的としてみた場合に、どういった思考や株主との関係性がIPOにプラスに働く(可能性がある)のかについて少し考えてみる機会となれば幸いです。


重要な第一歩

プレイドでは、オファリング手法として比較的早いタイミングでグローバル・オファリングのアイデアがありました。
オファリングのテクニカルな側面や、その検討も大事な過程ではありました。ただ、プレイドとしてはオファリング手法そのものへのこだわりよりも、自らのメッセージを国内外に発信し、プレイドを知ってもらうことは、ある意味当たり前のマインドとしてあって、そのためには、持続的な企業価値の向上のために多くの優良な投資家に入ってもらうことが当初より必然であったとも言えます。
〔次のリンクもご参考ください〕

また、IPOのタイミングでは、上場後の株式の流動性や株主構成を決定することになります。これは、今後何年、何十年と続く将来の資本政策に向けた極めて重要な第一歩になります(たった一回しかない大勝負とも言えそう)。
そして、このためには、IM(インフォメーション・ミーティング)やロードショー等を通じて優良な国内外の投資家に入ってもらい、一定程度の流動性は確保しつつ、ベースは安定保有していってもらう必要があります。


売出しのために

で、ここでフォーカスしたいのが、売出しのベース。つまり、売出しのメンバーを考えること、そして、その株式数(ボリューム)や流動性を確保すること、加えて、残るメンバーについては当面のロックアップを約束してもらうこと(以下「ベース」)です。

このベースは、上場時の買い手に対し、中長期的に株式がブレずに成長していく安心感をもってもらうためのものでありますし、見方を変えれば、余計なことにあまり気をつかわせず、プレイドのビジネスの評価に集中してもらうためのものでもあります。
また、一定のボリュームで買い手の裾野を広げることと捉えれば、国内外のたくさんの投資家の中から、高い確度で、プレイドの事業成長を支援してくれる投資家に株主になってもらう機会を確保するためのものにもなりそうです。

IMやロードショー等では、確固たるビジネスやプロダクト、技術、成長戦略、そして成長可能性があること、これらを伝えることになります。
ここでは十分にコミュニケーションが可能ですし、ここで議論しパフォーマンスを見せることになります。
でも時間やメンバーも有限のコミュニケーションであるとも言えます。また、コミュニケーションをとることができない、開示書類を見るだけの投資家もたくさんいます。だからこそベースをキレイに示す必要があります。
理想的には、注釈や補足、弁明もいらないベース。
ベースは、たかが形かもしれません。また、最終的にはどこまでいっても、ベースに対する評価との因果関係は明確にならないかもしれません。
でも、IPOの成功というものがあるとすれば、そこから逆算する上で避けて通れない重要な作り込みとも言えます。
このベースの作り込みには、長期的な作り込みと終盤の仕上げがあると考えることができそうです。


長期的な作り込み

プレイドでは、冒頭のガバナンスの点でも述べたように、比較的早いタイミングから既存株主との関係性の構築、平時から議論できる場という作り込みをしてきました。

また、一度目の上場計画をストップした2019年の春のこと。上場審査中ではなかなか動かせない資本政策を再開し、一層の高みへスケールする好機にもなりました。
その一つとして2019年の秋にGoogleから出資を受けることができました。
株主として参画してもらうことでプレイドのバリューやブランディング、クライアントマーケティングに与える影響がとても大きかったし、パートナーシップによる協業の加速も大きな目的の一つでありました。
〔次のリンクもご参考ください〕

そして、2020年の秋には、ロングオンリーの優良投資家として定評のあるT.Rowe Priceに株主として参画してもらうことができ、上場後を見据えた最高のラインナップを整えることができました。特に、同社に360日のロックアップを約束してもらえたことは、今回のIPOの安定的なバリュー形成に大きく寄与する要因になったような気がしています。
〔T.Rowe Priceとは、比較的早いタイミングからコミュニケーションを続けてきたものの、上場申請後の異動というレアなタイミングでの株式譲渡による参画ということでいろいろと神経をつかうことがありました。ご興味ある方はご連絡ください〕


終盤の仕上げ

公募・売出しによって、上場前後で株主構成が大きく変わるのが一般的とも言えます。そして、そのタイミングで株主の役割も大きく変わります。

上場前は、創業メンバーが中心の体制であるし、VCがいれば株主間契約という大きな約束の中で最大の自由をもらい経営を行い、企業価値の向上にコミットします。株主は、投資リターンの点でも、出資のみならず、場合によっては経営をサポートするし顧客紹介・営業協力といったことも当たり前に行います。そして、出口の一つであるIPOまでは一つの区切りとしてスクラムを崩さず、終盤には、定款の株式譲渡制限を解除し、優先株式を普通株式に転換し、VC役員があれば退任するなどして、パブリックに向け少しずつ株主間契約に基づく関与を無くしていきます。

そして上場後はパブリックに開放され、上場後株式の投資家達の出番なのだと思います。良い意味でのメンバーチェンジ。市場の認識や期待も比較的これに近いのではないかと思います。

さて、このメンバーチェンジ。
最終的にはとても良い結果になったものの、当初は思っていたほどスムーズに進まず、いくつかのハードルに直面することとなりました。


対峙

主なハードルは、売出しの株式数についてでした。

グローバル・オファリングで進めることは既定路線であったものの、上場承認予定日の1.5ヶ月ほど前の、最後の最後で正式決定しました。
直近のIMでのフィードバックを踏まえた大よその想定価格を前提とした場合、プレイドのサイズで海外の優良投資家を呼び込み、堅調なアフターマーケットを構築するためには、一定のオファリング株数・総額、オファリングレシオを確保することがポイントとなりました。
具体的には、公募・売出しで200億円程度のサイズを目線として持っていたところです。
具体的な数字や詳細はここでは触れませんが、他社実績の海外ポーションのサイズと上場後株式の長期保有動向・株価、またオファリングレシオと上場後の流動性との相関関係等を参考に、一定のレンジをもってシミュレーションするなどしました。
プライスリーダーとなるチケットサイズの大きなロングオンリーの投資家が入れるかどうかも大きなポイントであったと思います。
これはあくまでプレイドのケースということになりますが、売出しにあたり最大限のボリュームを作らなければならなくなったのです。
かといって、市場に与える印象からも、調整と言えるレベルを超える分量を創業メンバーから捻出するわけにもいかず、既存株主からの捻出がマストです。
また、何より時間がない!振り返ると今回は、1ヶ月に満たない期間での売出し交渉でありました。
〔発行会社の上場パターンによって様々と思いますが、コンパクトな上場もあろうかと思います。そうであれば、以下に記載するような協議はそもそも不要で、ある程度株主の判断に委ねることになると思われます〕

売出しにあたって、株主には売出しに応じる義務は何らありません。つまり、応じる・応じないは株主の判断によります。
となれば、まずはこのIPOを機に株価がどのように動くかの見通しを踏まえ、売出しによる利益の確定に動く、利益は大きい方がいい、それはそうでしょう。
各株主の出資時からの試算や期待値は様々で、評価が分かれるところではありますが、当時は、プレイドの株価がIPO後も上がっていく見通しを誰もが持っていました(と思われます)。だからまずは全株式を持ったまま、IPO後に好きなタイミングで売っていきたいと思うでしょう(と思われます)。
ファンドであれば何よりLPとの関係もあります。
いずれにせよ、これらを踏まえ、経済合理性で判断されることになります。
でもプレイドはこれに対し、一定の売出しをお願いすることになりました。
結果、やや相反することとなる「経済合理性」対「お願い」の構図。ぱっと見からして、発行会社として分が悪いし、スムーズには行かず、なかなか難しい協議になります。

でもそういった中で、どうすればよいのか?
そもそもこの状況は完全な対立の構図であるのか?この点が一つの突破口と言えるかもしれません。
つまり、ここで大規模なプライスリーダー投資家が投資できるだけの流動性を作ることに協力してもらうことで、一番は最終の公開価格を引き上げることができるかもしれないということ、また持分が多くはないかもしれませんが、IPO後に残る株式について安定的な株価向上の恩恵を受けられるかもしれません。
あるいは、このIPOに参画した実績、発行会社への協力姿勢というレピュテーション、そういった付加価値も一つ、経済合理性に入れていくことができるかもしれません。

上場前の株主の役割は一体何であるのかを改めて考えさせられることになりました。
どこまでが役割であるのか、バトンタッチまで?その際に、投資リターンがどこまで優先されるのか、VC株主が残ることに対する市場からの見え方は?などなど、思いを巡らせることとなりました。

そんな過程で比較的出てきやすいと感じたキーワードをいくつかピックアップしてみます。

「できるだけ高く売りたい。協力しないわけではないが、一般論としては、売出しには参加せずに、IPO後のフリーハンドでの売却が原則」
「仮にある程度、売出しに参加するのであれば、残りはフリー。ロックアップは困る」

ここからスタート。

「バリュエーションが●円までいけば、●割は出せる」
発行会社としては、IPOに向けた株価やバリュエーションにつきIM等を通じて極力解像度を上げ、具体的な感触を伝えていくことにはなります。
しかし、立場的に株価の具体的な予測を確定的に示せない、言いたいけど言えない、つまり確たる根拠がない協議になります。
こういった中で株主に見当をつけてもらう必要があります。発行会社が出せる情報と、その伝え方(ニュアンスを含みます)と、株主が判断するためにほしい情報とのマッチングがポイントになります。

「うちの持分少ないし、影響無いでしょう」
これもある意味正しいし、率直な心情とも言えます。でも、そうではなくて(と思います)、一糸乱れぬというやつ、少しでもほつれたら、公平性を失い、我も我もとどんどん壊れていきそうで、そうなってしまっては時間がない中では死活問題になります。
だから、持分が少なくても影響があることを強く意識してもらうことがかなりのポイントになりました。

「他の株主の対応と比べてアンバランスはないか」
逆の立場で考えてみれば、どういった整理がつけば協力が成立するのかということかもしれません。
様々なスタートアップに投資する株主としては、ここでの判断がレピュテーションに直結するということがあるかもしれません。
そして、この判断が適切であると後押しできるくらいのこと、例えば、他の株主との方向性の一致、横並び、つまりリードあるいは多くを出資している株主と一致していることかもしません。

「高い売出し比率だけが前例化しては困る」
株主にとって、今後の他の投資案件に変に悪影響が生じること、つまり悪い前例化、これは絶対的に避けなければならないのだと思いますし、プレイドとしてもこのような事態になることは本望でありません。
仮に誤解を受けるようなことがあれば、それだけ対応コストもかかりますし、良いことはありません。だから今回の判断をするにあたっての合理性、言い換えれば、今回の案件だけにある特別な事情(グローバル・オファリングのための流動性確保)を加味した結論であると整理できるかどうかということもあるかもしれません。
加えて、本質的にこの問題意識に対処するためには公開価格と初値〜アフターマケット価格のギャップが縮小することが大切なんだと思います。

「VCが残ることに対する市場からの見え方もある。極力全部放出する方向で社内を説得するから黙って待ってて」

これはかなりしびれました。


「対峙」ではなく超長期目線の「共創」のために

終盤のやり取りの中に多くのポイントがあったものの、何が一番の決め手になるのか?まぎれもない、それは、今までの関係性や事業理解(を作る環境を含みます)だと思います。
発行会社のバリュエーション次第では、理解どころではない、そういった限度もあるものと思いますが、会社がどういった社会的役割を持ち、我々が中長期的にどこに向かっていき、何を成し遂げたいのか、その価値観といったものも含めて理解しておいてもらうことになるのではないかと改めて思います。
〔次のリンクもご参考ください〕


これが重要な条件と言えそうです。

そして、それでも、いずれの当事者の考え方も誤っているということはありません。認識や価値観の違いとも言えるかもしれません。そのため、この段階で必要になる作業をあえて表現するとすれば、この違いを埋めていく、引き入れていく、入ってもらうことではないかと思います。
これは、最初から認識や価値観が一致している株主に入ってもらえることが理想ではありますが(プレイドでは、比較的これに恵まれていたのではないかと思います)、入ってもらった以降であってもその関係性を高い水準で維持したいところであります。
そのためには、平時から議論ができる環境を作っておくこと(これもガバナンス)、そしてIPO後の目指す世界観を共有しておくことがかなり重要なように感じています。
また、究極は多分、初期の投資はCEOをはじめとする創業メンバーに投資したのであることが多いであろうから、この創業メンバーの思いがいかに伝わるかということに尽きるのかもしれません。今回はこの点も改めて実感したところであります。

そして、最後の最後まで、折り合えないことがあれば話し合いをとことんやる。
話し合いの過程で発生するストレスなんて、パブリックとして今後100年!?を超えてプレイドの社会的意義を実現していく大義に比べれば本当に些細なことです(と考えて落ち着こう)。


まとめ

まとめると、ポイントは以下と思います(オファリングの手法やサイズによって目指すところが異なることは前提として)。

1. 既存株主との関係性の構築
 ・長期的な事業理解や価値観の共創ができる環境づくり
 ・平時に議論ができる環境はマスト

2. なぜ、売出しに応じるかの理由付け
 ・IPOに向けた株価やバリュエーションについて極力解像度の高い情報を伝える
 ・経済合理性の判断次第では、悪い前例にならないための理由付けも

3. 他の株主の対応とのバランス
 ・レピュテーションをふまえて、他の株主とのバランスを図る

4. 協議はとことんやる
 ・やはり最後はワンチームを目指したい


おまけ

終盤の協議の難易度によっては時間がとても大事です。上記のような「経済合理性」対「お願い」の構図にあっては時間がないことが交渉の足枷になることがあります。可能な限り前もって動くことの必要性を痛感しました。定性的な判断がどうしても多くなるから、必ず想定外のことが出てくるわけで、その調整に耐えうる(想定して動ける)ための時間にもなります。
また、会社によっては社内決裁に本当に時間がかかります。誰が待っていようが、関係者が多くあろうが、どうやってもペースを早められない場合もあります。

冗談半分でありますが、こんなに難しい協議になるのであれば、投資契約や株主間契約に、せめてもIPO時の売出し協力の条項を入れておけばよかったという気持ちにすらなったところでもありました。
〔出資を受けるときはそんな気持ちや想定には到底至らないと思いつつ〕


最後に

今回のIPOに至るまでの過程では、既存株主の皆様には、出資当初からの長きに亘り言葉で表現できないほどの十分すぎる協力をいただきました。
また、今回の売出しの結論を出すには、プレイドの事業理解と、今後何年、何十年と続く資本政策の重要性を理解いただき、見方によっては、自社の経済的利益とやや相反する面もある中で、我々の意見にも耳を傾けていただき、短い期間での相当の社内調整と、そして英断いただいたものと思います。
プレイドとしても何ものにも代え難い学習の機会にもなりました。
既存株主の皆様には改めて、深く御礼を申し上げる次第です。

ありがとうございます!そして、これからもよろしくお願いします。


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(書き手プロフィール)
澤井貢介。1977年9月21日生まれ。プレイドでは法務全般、知財、コーポレートガバナンス等を担当している。それ以前は、自動車、放送・通信、障害福祉分野の上場企業やスタートアップの法務責任者として、法務・知財、リスクマネジメント、消費者政策のワーキング等に携わった経験を有する。
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CXプラットフォームKARTEを提供するPLAIDで法務・知財を担当しています。