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人形のこと

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中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」①

中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」①


中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」

12月15日からオープンしております「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」。ちびっ子の動物達と灰鳥さんと小鳥の侍女の饗宴です。

きっかけは、久しぶりに小さな子達を作ったので「プチっとした展示がしたいな」という所から始まりました。ちょっと変わった場所を押さえてくださったので、そちらに向けて準備をしていたのですが、この

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日々是徒然『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生 人形◆中川多理/中川多理展「廃鳥庭園~Le Jardin abandonné」頌 ②

日々是徒然『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生 人形◆中川多理/中川多理展「廃鳥庭園~Le Jardin abandonné」頌 ②

「廃鳥庭園~Le Jardin abandonné」の一つ前の展覧会は
白堊のPassage/過去と未来――[時の肖像]/『薔薇色の脚』中川多理人形作品集 出版記念展
であった。ある種、山尾悠子とのコラボレーションのエンドロールでもあり、また来たるべき疫病と災禍の予兆のなかで、現在を過去と未来の狭間に杭打ちするような、あるいは座標軸を確かめるような、意味合いもあったように見られる。
 鳥越神社裏、

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中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」③

中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」③


中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné

最後の小鳥たち

山尾悠子さんの掌編『小鳥たち』より生まれた連作、小鳥と少女の形態を使い分けるよう厳しく躾けられた編み上げ靴の侍女たち。沢山の侍女が羽ばたいていきましたが、この度最後の3体を送り出す事となりました。

シリーズ連作の作品は、大きさやクオリティを揃えるために型を使用して制作しています。また、より強固な素材に変換する為の

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中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」②

中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」②


中川多理展「廃鳥庭園〜Le Jardin abandonné」

Petit(プティ)-bisque ver.

パラボリカ・ビスの企画「Little creatures展」で生まれた10センチサイズの革ボディのシリーズです。こちらもビスクで焼いたらどうなるかな?という好奇心のもと制作してみました。

かなり縮むだろうし、人形にするの難しいかな?と思ったけれど、ボディのサイズや手足の大きさでバラ

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日々是徒然 『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)を読んで思う徒然のこと①

日々是徒然 『迷宮遊覧飛行』(山尾悠子)を読んで思う徒然のこと①

幻想のありか___身体の欠如/現実の朧気 
注意書き。
ここで書いていることは、『夜想山尾悠子特集』『新編夢の棲む街』『迷宮遊覧飛行』を読んで、徒然に思ったことで、作品に対する分析です。価値観について語っている訳ではありません。こういう風になっているのか…ということです。しかも自身の個人的な見解です。

中川多理さんの人形に触れてはいるところもありますが、中川多理さんと[~について]話したことはな

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『薔薇色の脚』展(中川多理)日々是徒然3.11①

『薔薇色の脚』展(中川多理)日々是徒然3.11①

 2023.3.11日、ボクは鳥越倉庫で若い歌人と中川多理の新作人形について話をしていた。厳密に云うと[について]と語れる言葉がなくて、言葉が[未だない]ことについて——の話をしている。まだ言葉をもらっていない白堊の子たち。
言葉が付帯していないものは、卑語に自由にされてしまう可能性がある。だから少し慌ててもいた。
見て思うのは自由だ。しかし其の先、無知の悪意が作動して拡散、周知、定着するのが現代

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『薔薇色の脚』出版記念個展に寄せて

『薔薇色の脚』出版記念個展に寄せて

2023年2月23日から新刊作品集『薔薇色の脚』の出版記念個展を行います。昨年末より手がけていたビスク作品を初お披露目します。

これまで、人形を作る時に眼前に浮かぶビジョンとして、
遠い先の世界(同じ時間軸には無い世界かもしれない)に、風化し漂白された骨の様な姿の人形達が安らかに目を閉じて遺跡の様に立ち現れる姿があり、そういった象の人形達を繰り返し、忘れない様に粘土で制作してきました。

いつか

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日々是徒然。中川多理『薔薇色の脚』出版展覧会/そこに向う[蜃]の長い呟き。

日々是徒然。中川多理『薔薇色の脚』出版展覧会/そこに向う[蜃]の長い呟き。

 浅草奥の方、吉原に近いところにかつて存在した淡紅色のサロン。

『ガランス』

 合田佐和子が意匠デザインした淡紅色の喫茶店『ガランス』は、当時、珍しかったチーズケーキが二種類あって、オペラをかけているプレイヤーの廻りにはふさふさの毛の猫が三匹うろうろ客を品定めするように歩いていた…四五人入れば狭く感じた、その店のオーナーは小柄の女性で仮にMさんと呼んでおこうか…今でも千束通りでちらりと見かける

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『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について ②

『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について ②

展覧会を前にして中川多理の人形が搬入された。
 写真で製作過程を見ていた。薔薇の脚のプロトタイプ、ビスク版は一度試作段階を手にした。
しかし。
 梱包から解かれた人形たちは——。
言葉を失った。
見ていただく他はない。言葉は、もしかしたら追いつかないかもしれないし、ないのかもしれない。
誰か何かを見てとれる人が、流麗なヘアラインで、言葉をこの子たちのどこかに…
傷をつけずに
さしこめたら。それを機

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『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について

『薔薇色の脚』中川多理人形作品集/出版と展覧会について

 世の中の解禁ムードとは別にコロナは、深く社会を蝕んでいる。これまで罹っていなかった用心深い人たちも次々にコロナになり、かく云う私も遂にコロナに罹った。熱と咳と頭痛で七転八倒する日がけっこう続いた。元々頭痛に弱いせいもあるが、コロナの頭痛は未体験のもので頭が割れるとはこういうことを云うのかと、後でしみじみ思った。頭痛で浅い眠りが破れ、うとうとする夢の中での思考は、覚醒時のそれに何にも繋がらず、逆に

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