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奇妙な仕事

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特殊介護職(ミステリー作家の秘書)をやっていた話 ①

前職でタイトルどおりの仕事をしていた。
月給25万円、完全週休2日制。9時5時勤務で残業なし、夏休みは約1か月。主な業務は先生に紅茶を淹れること、ランチの支度をすること、そして毎週1冊ミステリー小説を読み、読書感想文を提出することだった。

求人はネットで見つけた。
「レア☆作家秘書のお仕事です!」というタイトルに目をうばわれ、気づいたら応募ボタンをクリックしていた。業務内容の詳細について書かれて

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特殊介護職(ミステリー作家の秘書)をやっていた話 ②

「1時間以内に、こちらの問題を解いてください」

テスト用紙の表面には、ごく普通の設問が並んでいた。計算、漢字の読み書き、敬語やマナーに関する○✕、時事ニュースの穴埋め問題。しかし、裏面が厄介だった。うろ覚えだが、こんな感じだ。

A~Fまで6人ぶんの証言を読みながら、間取り図の中に人物の移動経路と時間帯を書き込んでいく。

2人以上の証言が一致している部分はアリバイ成立ということだと思うが、口裏

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特殊介護職(ミステリー作家の秘書)をやっていた話 ③

特殊介護職(ミステリー作家の秘書)をやっていた話 ③

謎の試験をクリアし、「○○ミステリー工房 秘書」の肩書を手にした私は、それから約1年半、ひたすら雑務と読書に明け暮れる日々を送った。

今回はミステリー工房での主な仕事、"小説紙芝居”の作成について紹介する。

先生は多忙である。執筆業以外にも生計を立てるための本業があり、基本的にはそちらに集中しているため、ご自身の創作に刺激や深みを与えるためのインプット(読書)をする余裕がない。長編ミステリーは

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