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#twitter小説
#140字小説『ある変態の青春』
私は女に飢えながらも、心中は書きかけの死姦小説を、どう完結させるかと考えあぐねていた。
海では、犬の散歩をする寒そうなコートの女性と、冬物の制服を着たいつもの二人組がいた。
子供相手になんの邪な想いを描くのだ、と女学生の横を通り過ぎようとした矢先。
鼻腔をくすぐる花のような香りが胸を打つ。
#140字小説『みんな誰かのストーカー』
はああ、そろそろ寝ようか?ツイートしとこう。
よし!今日はもう寝るようだな。午後に昼寝をしたから遅くまで起きたようだが私も寝るか。ふああ、ツイートしよう。
お!そろそろ寝るのか。昨日は彼氏と遊んだようだが今日は一日外出してなかったようだな。ふう、私もそろそろ寝るか。ツイートしよう。
#140字小説『一人の人生』
笑っていたアイツの首に手をかけた私は独房へ入れられた。
送られる途中で女看守は言う。
問題は彼が一人で起こしたと。
事実は違うのに。
殺したのが俺でも本当のことを話せ、と私は怒鳴った。
今は冬。
外は雪が降りたまに人が通るが顔を合わせることはない。
そしてそれは夢だった。
起きた私もまた一人ぼっち。
#140字小説『隠れた本音』
息子:もぐもぐもぐ……
無職の父:今朝も朝刊配達ご苦労様でした。
息子:うん!
(もっと褒めろ!崇め奉れ!!)
無職の父:ははは……
(かしこにかしこに〜お返し申す!)
崇め奉る(あがめたてまつる)=1この上なく、きわめて尊いものとして対し、扱うこと。崇敬、尊敬すること。2寵愛すること。大切に扱うこと。
#140字小説『未来の酒精中毒者』
「お母さん、なぜ大人はお酒を飲むの?」
「そうねえ、子供にはない嫌なことや深い悩みが大人にはあるんです」
「僕だって悩みくらいあるさ、だからね?お酒飲んでいいでしょ?」
「まだ20歳になるまではダメよ」
「えー、だったら20歳までは禁酒ね。解禁したらガブ飲みするんだ」
「またそんな事を言って」
#140字小説『泣き虫ピエロ』
階の違う清掃班のあいつが気になる。
いつ見ても私を殴ってくださいとでも云いたげな弱々しい気配を醸しだしてこっちまで迷惑しちゃう。
そう僕は困惑してるんだ。
こんなにも君のことを想っていることに。
お互いを結びつける言葉なんて何一つ持っちゃいないくせに節目がちな瞳が苛立ってやるせなくて。
#140字小説『星空のエピタフ』
死にたい僕は今日も地平の先まで輝く星々を探す。
きっとあのまばたきの一つ一つが死んだ人たちの魂のゆらめきなんだ。
何者にもなれず好きな人にも告白できないミジンコのような僕でもあんな綺麗な光を放てるんだろうか。
仰ぎ見る先人たちの魂はどこまでも澄んだ空を恍惚とたゆとっていて。
#140字小説『お悩みコーナー』
Q
童貞の元引きこもりで
女性にご縁がありません。
告白できる機会があっても
逃してしまいます。
A
そうですね。
お坊さんになるしかないでしょう。
Q
黒髪で清楚な処女なら、、、。
A
お帰りください。
#140字小説『幸福な世界に咲いた花』
俺は女なんて知らない。
まぶたの裏のイメージだけで事を済ませる。
その相手に性別はない。
そこにあるのは真の平和だ。
営みへの煩わしさもなければ傷つく相手もいない。
そうやって40年が過ぎ去ろうとする頃には俺の心にひとつの花が咲いた。
明るくて優しい柔和な花が。
#140字小説『暑い、、現場からは以上です!』
Hey!先生!ケツを出しな!
…まあお下品ね!はしたないこと言って!
…だからエアコンで風邪を引いたアンタのケツに解熱剤の座薬を入れてあげてるんだよ!
親切心だって!
…もう!それを早く言ってよ!
暑いからって肌着も露わになった巷では性犯罪が横行してるのよ!
…戸締まりは厳重にね!
#140字小説『乾いた情熱』
貧しい少年には画家にいつか描いて欲しい絵があった。
大人になった彼はお金を貯めて自分が夢想する大地と空や憧れの人物を描いてもらう。
しかし熱はいつか冷めてしまい大金を出してしまった罪悪感が心を蝕んだ。
夢を叶えた瞬間に彼の心からは憧れが消え去っていたのだ。
#140字小説『慈雨』
…アンタに俺の苦しみは分からねーよ。
対岸の山を見つめながら青年は一人ごちた。
と同時に苦しみにアイデンティティを見出す滑稽さに自嘲してしまう。
うち寄せる波の数ほどの人生が繰り返され命が消えては育まれていく。
孤独と愚かさは尽きなかったがふいに降り出した雨が自分の代わりに泣いてくれた。
#140字小説『モラトリアム・ライフ』
わいの人生は一生モラトリアム。
花吹く春にはたそがれあう恋人たちを横目に海へ駆り出す。
地平線に燃え尽きる夕陽がまぶしく切ない。
まるでわいの人生そのものを讃えているようや。
そして夜には別の顔が。
猫に優しい自然派の新聞配達員。
今日も仕事までの時間を海と語り合いながら創作に打ち込むんや。
#140字小説『闇堕ち、オタク堕ち』
いもしない架空の登場人物に感情移入することの気持ち悪さ。
怖い!まるでこの身を蝕むかのようにオタク化が進行していくようだ。
…それもいつしか快感に変わっていった。
気づいたんだよ。
そんな腐ったオタクの面も俺の大切な一部だと。