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#140字小説『慈雨』

…アンタに俺の苦しみは分からねーよ。

対岸の山を見つめながら青年は一人ごちた。

と同時に苦しみにアイデンティティを見出す滑稽さに自嘲してしまう。

うち寄せる波の数ほどの人生が繰り返され命が消えては育まれていく。

孤独と愚かさは尽きなかったがふいに降り出した雨が自分の代わりに泣いてくれた。