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小説

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#短編小説

【小説】月へと続く道

 調弦したG線の上に弓を乗せ、ゆったりと滑らせる。  弦の振動が艶やかな木の空洞で花開き、…

【小説】霊障

 ちょっとした冗談のつもりだった。  学生時代からの友人の美奈と飲みに行った帰り道。一緒…

【小説】恋の病

 恋煩い、という言葉が浮かんだ。  恋というもの、それ自体が病気なのだ。  恋に罹患した者…

【小説】孝行者

 磨き上げられた上品な木目の上で、金の天秤が鈍い光を返す。  蒼い血管の浮いた手が白銅の…

死角

 見られている。  視線を感じる。歯磨きしていても、授業中のノートに落書きしていても、眠…

【小説】案山子 最終話

▼前の話 ▼第1話  ホウコはずっと書写をしていた。月が出てからも机に覆いかぶさるように…

【小説】案山子 第6話

▼前の話 ▼第1話  日が昇って報告を受けた天使達は機嫌を損ねていた。 「神聖なる神の花をあなた個人の感傷のために貶めるなど、決してあってはなりません」  ホウコはひれ伏し、「申し訳ありません」と声を震わせる。 「あなたには期待していたのに。これは最悪の裏切りです。ああ、しかし、慈悲深い御神はお許しになるでしょう。ただし、嘘吐きの背信者が愛の花の苗床に相応しいかどうかは我々には判断できません。悔い改め、愛の花の裁きを待ちなさい」  申し訳ありません、申し訳ありませ

【小説】案山子 第5話

▼前の話 ▼第1話 「今日も疲れたな」  案山子をするぼくの足元で老人が言う。 「読めな…

【小説】案山子 第4話

▼前の話 ▼第1話 「なあ、本当にこんなとこにいんのかよ」 「いるって。入ってくの見たも…

【小説】案山子 第3話

▼前の話 ▼第1話  日暮れ間近は水遣りの時間だ。  昼間の太陽で温まった水を、天井付近…

【小説】案山子 第2話

▼前の話  祈りの声で目が覚めた。  重なり絡み合う数十の声。老人は低く、男は太く、女は…

【小説】案山子 第1話

 真っ暗な空に小鳥が飛んでいる。  一羽や二羽ではない。何十羽もの白い小鳥が蛾のように、…

【小説】反照

※注意  がっつり性描写があります。苦手な方はお控えください。  ***  恋の一つでも…