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昨日発売『いつでも転職できるを武器にする-市場価値に左右されない「自分軸」の作り方』【1章⑤ 無料公開】

こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。
昨日より連載をスタートしている『いつでも転職できるを武器にする-市場価値に左右されない「自分軸」の作り方』(KADOKAWA)
発売日前ですが、出版社のご好意により、本文の一部を全文公開しています。本日は1章を全文公開します(「はじめにと目次」「1章①」「1章②」「1章③」「1章④」の全文公開はこちら)
※1章の文字数が多くて読みにくいので5分割して掲載します。

問⑤その会社で本当に活躍できるか自信がありません

答 資質との相性でみる。
「仕事とフィットするか」はダイレクトにわかる。
会社のカルチャーとフィットするかは経営理念を
「YES/NOの判断基準」に落とし込んでてみればわかる


資質がフィットしていれば仕事の成果はラクに速く出せる
 転職先でちゃんと貢献できるか、不安はつきものです。今までの経験から、ある程度仕事はできる自信はあるけど保証はない。営業職から経営企画職に変わるなど、仕事内容が変わる場合、その期待と不安は日増しに大きくなるものです。

 あなたの、新しい会社や仕事(転職でなく社内異動含む)との相性は、実は事前に8割以上は摑めます。

 「仕事」と「会社の価値観」とあなたの資質がマッチするかをみればいいのです。

 苦手な相手とのコミュニケーション面はどの組織でも発生するので後述しますが、上司や職場の仲間との相性の根っこもわかります。仕事と資質の相性は解説しましたので、ここは会社や職場との相性中心に解説します。

 A社で優秀だった人が、同業のライバル会社のB社に移ったら結果が出ず、評価されず、普通の人になってしまったという話はよく聞くものです。
仕事と本人の資質はフィットしているはずなのに、なぜこんな事態が起きるのか?

 それは、その会社のカルチャーと合わないからです。

 会社のカルチャーは経営者の哲学、ビジネスモデル、歴史などから形成されていくものです。カルチャーは言わば「空気」。無色透明の壁になります。

 元からいる社員は、壁を無意識にかわすことに慣れ過ぎて違和感に気づきません。外からくると、その壁にぶち当たるのですが透明で見えないゆえに成果が出せないのです。

 会社のカルチャーは経営理念(ビジョン、ミッション、バリューなど)としてまとめられていますが、ちゃんと摑むにはコツがあります。

 そもそも、会社のホームページ、会社案内、採用案内、ブログ、メディア実績には「いいところ」しか書いていないことは、あなたもわかっているでしょう。

 会社と個人の関係は結婚に近いものがあります。立場も対等です。結婚期間中はお互い幸せな関係でいるために、努力しましょうというスタンスです。

 ここで質問です。あなたは、これから付き合おうと思う初対面の相手にいきなり自分のダメダメなところをPRしますか? しないですよね。
噓は言わないけど、まず、いいところを見せよう。気に入っていただき、お付き合いが始まったら徐々に本当の姿をみせていくという手順になるはずです。

 会社の場合、インターンなど、実際に内部で一定期間仕事をしない限り、転職後、配属されてから、本当の姿を知ることになるのです。 
ご安心ください。ここを見抜く方法を伝授します。

ポイント あなたと企業の相性を事前に知る必要がある


企業カルチャーとの相性をYES/NOで引き出す
 会社のカルチャーを知るには経営理念の癖を知りましょう。日本の会社の9割以上の経営理念はA社からB社に変えても全然気づかないくらい曖昧です。

 経営理念には、実は実現できていない理想を書いているケースも多いからです。

 その実態を見抜くためには、経営理念を読むだけでなく、YES/NOの判断基準に落とし込んでみましょう。会社の経営理念は、その会社の物事のYES/NOの判断基準になっているのが本来の姿だからです。そして、その判断基準を、

①自分の資質にあっているか
②本当にその判断基準どおりに意思決定をしているか

 この2点から裏を取るのです。こうすれば、その会社の本当のカルチャーがあぶりだされます。

 経営理念がハッキリしている会社は外から見ても判断基準が明確です。
アップル社の故スティーブ・ジョブズが出した経営哲学は「Think Simple」です。「シンプル」をYESにすると、反対のNOは「複雑」になります。

 確かにスティーブ・ジョブズ氏の時代のアップルはシンプルでした。iPhoneのデザインもシンプルでボタンの数は最小限。マニュアルもなしで操作可能。iPhoneのラインナップも少数に絞り込み、その世界観や性能、デザインで世界を圧倒する反面、シンプルな分だけ生産ラインも絞り込み、コスト削減や在庫リスクを減らすことにも成功していました。

 これを複雑にしてしまうとブランドイメージにブレが生じ、ファン離れに繫がり、生産コストも在庫リスクも高まってしまいます。機能、デザイン、生産、販売までシンプルで一貫することで競合にない価値を生み出していたことはあなたもご存じの通りです。

 このように、会社の経営理念を取り出し、それをYESとするなら、反対のNOは何かを書き出せば、会社のカルチャーの背骨がハッキリみえてきます。

 何がYESかNOかがわかれば、それがあなたの資質とフィットするかみえてきます。

 私はわたし。会社は会社で経営理念に沿って判断すればいいと割り切るのもいいですが、自分の資質とフィットした方がストレスは激減します。コツは3段階で分解することです。

 最初は経営理念の項目を書き、YESと置きます。例を出して解説しましょう。

「みんなで決める文化」(YES)

次に今書いた経営理念の項目のNOを書きます。反対の意味のキーワードを置けばOKです。

「みんなで決める文化」(YES)→「トップダウンはない」(NO)

 最後に、「ゆえに、どんなことが実態でありそうか」を書きます。
「みんなで決める文化」(YES)→「トップダウンはない」(NO)→ゆえに「権限を与えてくれないのでは?(いちいち決済承認が必要では?)」、「みんなで決める分だけ意思決定のスピードが遅いのでは?」など、思いつくものを書き出していくと「ベンチャーと言うが、実は堅実なカルチャーなのではないか?」などと仮説が立ちます。

 これを全ての項目で実施し、つじつまがあうように一本背骨が通っているか、矛盾がないかを精査します。その上で、この判断軸で実際に意思決定が行われているかを聞けば、実態のカルチャーが見えてきます。確認する時は直球で質問するといいでしょう。

 直球を投げた時の相手のリアクションで噓か本当かがわかります。
組織のカルチャーはYES/NOの判断の積み重ねで生成されます。
カルチャーになる判断は「瞬時」です。無意識レベルの判断基準なので空気になるのです。ゆえに、相手がYES/NOで判断しやすいように直球で投げるのです。

 直球を投げてデッドボールになるのが懸念される時は、ひと工夫すれば大丈夫です。

 「ふと、思ったのですが……」と前置きすると角が立ちません。そして、一度ポジティブに解釈していることを伝えた上で聞くのです。

 さらに、特に注意すべきは矛盾点です。「みんなで決める文化」なのに「イノベーション」も経営理念としてあったら、矛盾しているように見えるのでチェックが必要です。なぜなら、実態の真逆を目指す姿勢として経営理念にいれるケースがあるからです。そういう会社が圧倒的なことを忘れないでください。

ポイント 経営理念はうのみにせず、経営や現場の判断基準を探る材料として使う





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