- 運営しているクリエイター
#2
プリンセス・クルセイド 第3部「ロイヤル・プリンセス」#1 【波乱を呼ぶ来訪者】 4
魚を穿つ銛のように聖剣を構えながら、ルチルは静かに海を潜行していた。聖剣の持つ水のエレメントの力で、彼女は空を飛ぶかのように水中を泳ぐことができる。加速に減速、旋回までもが思うままだ。それに対し、彼女を待ち構えるイキシアのほうはといえばーー
(無様なものだな)
ルチルは思わず口角を上げた。彼女の視線の先には、手足を動かしながらなんとかしてその場に留まろうとするイキシアの姿があった。
(自
プリンセス・クルセイド 第2部「ザ・ナイト・オブ・ヴァンパイア」 #2 【ヴァンパイアハンター】 6
「……来る!」
チャーミング・フィールドでの闘いを見届けたアンバーは、水晶から目を離して聖剣を鞘走らせながら部屋の一角に向き直った。そこへ一瞬閃光が瞬き、ジェダイトとカーネリアが虚空から弾け出た。
「クソッタレが!」
ジェダイトは床に回転着地すると、悪態を吐きながら聖剣を構えた。
「でえりゃあ!」
その直後、およそプリンセスらしからぬ叫び声とともに、イキシアが風の魔術を発した。聖剣
プリンセス・クルセイド 第2部「ザ・ナイト・オブ・ヴァンパイア」 #1 【鍛冶屋の娘と王子様】 5
夜遅く、穏やかに寝静まる街を見下ろしながら、アンバーは自室のベランダから月を眺めていた。満月が近いのか、月はもうかなり丸くなっていた。だが今の彼女に、そのような詫び錆びを考える余裕はない。
(王子様か……)
ベランダの手すりに寄りかかりながら静かに目を閉じ、城での食事やダンスのことを思い出す。特にあのダンスだ。優しく、しかし決然とした足取りでアンバーを導く王子の姿は、国を背負って立つ人間の
プリンセス・クルセイド #2 【太陽のプリンセス】 5
「さて、ここで決着をつけましょうか。多少、行儀は悪いかもしれませんが!」
「ひゃっ!」
イキシア王女が横薙ぎに振り回した薙刀を、アンバーはかがみ込んで躱した。頭の上で風が鳴る。
「まだまだっ!」
アンバーが顔を上げると、イキシア王女が流れていく薙刀を強引に振りかぶり、今度は縦に振り下ろそうとするのが見えた。アンバーは屈んだ姿勢のまま、真横に飛び退いて回避を試みる。間一髪で直撃は免れたが
プリンセス・クルセイド #1 【剣を持つ刻】5
アンバーが目を開けた時、辺りには殺風景な荒野が広がっていた。見渡す限りの砂と岩が、地平線の彼方まで続いているかのようだ。正確に言えば、その地平線も、所々にある岩場のせいで途切れて見える。岩場の高さはまばらだが、二階建てから四階建ての家屋の高さほどのものが大多数で、あたかも舞台のステージのようにそびえ立っている。その上に広がる空は厚い雲に覆われていて、広大な景色とは裏腹に陰鬱なまでの圧迫感を醸し出
もっとみる