見出し画像

読書感想文【ジャックポット】筒井康隆

御歳86歳になる現代日本文学の巨匠
筒井康隆による最新短編集〈全13作〉

コロナ、戦争、文学、ジャズ、映画、嫌民主主義、そして息子の死。
かつてなく「筒井康隆の成り立ち方」を明かす
超私小説。

まず初めに
筒井康隆作品を今まで1冊も読んだことがない方にはおすすめしません
きっと筒井康隆の面白さがひとつも伝わらずに
苦手になって終わってしまうことでしょう
間違いなく読書には正しいタイミングや順番があると、私は考えている
それは作家も成長しているからであり
自分とその作家や作品の
タイミングと順番を間違えると
「苦手な作家」や「読書嫌い」になって
人生が終わってしまうからだ

それでも世の中には残りの人生で
手に取れないほどの作家がいて本があるので
そうやって自分の人生の篩にかかっていくように
なっているのかもしれない

だがしかし、もしこの記事にたまたま出会い
初めて筒井康隆を読んでみよう!
と思った人がいたとしたら
完全にこの作品ではないので
「時をかける少女」「旅のラゴス」
あたりから読む事をおすすめしたい
最終的には「残像に口紅を」を読んでもらい
この作品が「面白い!」と思えた人は
最新作「ジャックポット」に進んでいただきたい

今回の短編集はまるで筒井康隆の遺書のよう
言いたい事を言葉を駆使して言いまくる!
これぞ作家
誰に気を使うでもなく
物語に落とし込める
嫌いな奴を嫌いといい
ダメな奴をダメという
好きな人を羅列してそれ以外はダメという言い方もある
思う存分、のびのびと書いてある
「書きたいことを書く!」という
この極めてシンプルなことが難しくなっている
昨今のエンタメ小説業界もとい世の中

わかる人にだけ刺さればいい

だけどそこには間違いなく
裏打ちされた技術や思想や哲学があり
長年プロとして第一線を張っているからこそ
できる自由
確固たる基礎基本の向こう側
まさに文学界のピカソ

ほぼほぼ言いたい事を
実験的筆つかいで描かれた短編集だが
最後の最後に
親である巨匠の歳よりも
何十年も早く亡くなられてしまった
息子さんとの「再会」を描いた短編はグッとくる

そしてこの作品の装丁は
画家であった亡き息子「筒井伸輔」さんの作品

この短編集は最後の親子の共同作品とも言える

最後に刺さった文章を紹介し
そしてこの短編集の最初の物語に挿入歌がありまして
まさかの御大の作詞作曲で
山下洋輔さんの演奏で御大本人が歌っている
これは是非に見てほしい

死は近きに在り、されど天国は遠く、地獄は並走している
自分の才能をひけらかす奴はたいてい無能である。真に才能があるものは自分では自覚せず、他人に指摘されて初めて自覚するもんだ




この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

いただいたサポートは毎月の書籍代に使わせていただいています!(たまにコーヒー)本当にありがとうございます!