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凄い人の凄いところ


凄い人の凄いところを見つけられると、
自分を褒めたくなるような嬉しさが湧き上がる。

それは決して器の広さとかそういう意味ではなく。
勿論自分の為に褒めるのだ。


最近、朝井リョウの小説をよく読む。
私は節目ごとにパタンと本を閉じて、溜息を吐く。

朝井リョウは人生を何回経験したのだろう。
それくらい、彼の作品の中には何人もの魂が宿っている。


小説は、1つの作品の中にも様々な楽しみ方がある。
「小説は」と言ったが大体の芸術作品はそうである。

世界観を好む人。
例えばラノベによくある異世界だったり、
現実のようでどこか不思議な世界だったり。
(余談だが、私は後者の作品が結構好きだ)

普段は味合わない感情を生むのも良さの1つである。
ハラハラしたり、ドキドキしたり。
泣ける小説が売れるのも、読者は感情移入を好むからである。

朝井リョウの作品は、
何が良いって、比喩や描写である。
本を読んだ時、物語の最後ではなく途中で
「これを天才というのか」と思った程である。


『言葉を紡ぐ』という表現があるが、
彼はどちらかというと『言葉を作る』という方が近いだろう。

恥ずかしながら私は朝井リョウの原作を読み始めたのは最近で、
だからこそ今鼻息を荒げながら新鮮な気持ちで記事を書いているわけだが、
既に見た映画の作品も、絶対に小説を読むべきだと思った。

勿論朝井リョウ原作の映画はそれはそれで味があって好きなのだが、
先程述べた『言葉を作る』部分の才能はやっぱり原作ならではの魅力である。

例えば、小学4年生の女の子が自分でも気付いていないような違和感を、
朝井リョウはその心情を鮮明に、遠回しに書き上げてしまう。
直接的に説明するのは簡単である。
文字を連ねれば良いのだから。
遠回しに、登場人物が気付いていない感情を
第三者を使って読者に読み取らせる能力。
凄すぎる。
クリティカルヒットである。


世界地図の下書き

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またある時は、売れている女性役者の心情を
なんともリアリティーある泥臭さで描写してしまう。
(貴方は、役者をした人生を通ったことがあるのでしょうか?)
そうして小説家という職業の本質でもある
『読者を、自分の歩まなかった道を歩かせる手法』を
高い精度で作り上げてしまうのである。
スペードの3

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私は朝井リョウの泥臭い描写が凄く好きだ。
『言葉を作る』という表現をさせて貰ったが、
それは造語という意味ではなく。
人々が、どうやって言葉にすれば良いのか分からない
難しい心情や世の仕組みを、
言葉を紡いで紡いで、1つの表現に作り上げてしまうことだ。
これこそが小説の良さの頂点では無いか。


凄い人を見つけてしまった。
凄い人の凄いところを見つけられると
自分を褒めたくなるような嬉しさが湧き上がる。
だってその瞬間、
確実に自分の肥料となって、私は1つ賢くなる。

凄い人の凄いところを見つけたら、
その人に近付けば自分も1歩凄くなる。
即ちそれは、生きる上での目標になる。

学生時代、小説を「好みか」「好みで無いか」
で評価していた自分は本当に愚かだ。
心情や場所、説明的部分の表現の仕方、
その一部分に、面白さが詰まっている。

それが、小説というものではないか。


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