見出し画像

夢の続きのちょっと前

カン、カン、カーン!!!


声援はひとつも無いけれど、
遠くで甲高くてうるさい鐘の音が聞こえる。
ということは、負けたのかしら。

私は今リングの上で、
容赦なく殴りつけてくる疲れと闘いながら文字を打っているところである。

なんだか最近とてもいそがしいのだ。
いそがしいというのは日が昇る前から出社して、終電を逃す程働くことを指している訳ではない。

身体はちゃんと家にいるのだが、どうも脳みそだけが会社に取り残されて、家にいる私は趣味の創作に勤しむ力もなくポケーッとしてしまう。
繁忙期に差し掛かるといつもそうだ。
本業でも作品を作る仕事をしているので、そちらに気を取られると執筆が全く手に付かなくなってしまう。
人間とはバランス良く作られたものだ。

SNSで創作活動をしていると、
良い点にも悪い点にもなり得るのだが
活動の意欲が数字に現れる。
相互関係とも呼ばれるもので、
ちょっと目を離している隙にフォロワーが容赦無く減っていたりする。
私はその時悪い癖で『ブランド力が落ちたなぁ…』と思ってしまう。

ブランド力とは数字のことではなく、自身のである。
フォロワーを惹きつける力だ。

この考え方は良くない。
現状私のSNSは「創作仲間を探している人」に向けて発進しているはずなのだから、創作していない私に需要を感じない人がいるのは当たり前なのだ。あたり前田のクラッカーなのだ。
魅力と需要は大いに違う。
そこの線引きが出来ていないことを、ここ数日大いに実感する。

…ちょっと待ってくれ。
今、とてつもなく驚くことに、
見たことのない猫がベランダの方から入ってきて、
私の膝に座った。
この部屋は5階なのにそんな筈は無い。
ダブっとしてとても可愛い猫ではあるが、そもそもこのマンションで猫は飼えない。
犬や鳥じゃなくて良かった。
犬や鳥はあまり得意では無い。
何故猫が入ってきたのか分からないが、
猫を部屋から追い出して続きを書こう。

…さて、私の生活で最も悔やまれる点ではあるが、私はロングスリーパーである。
倫理的に許されるならいつまでもグーグー寝ている。
ロングスリーパーが睡眠時間を削るとどうなるかというと、眠いとかではなく精神的な不調が現れる。
イライラするし、無気力になる。
それはいけない。
他人に迷惑を掛けてはいけない。
そう思うと、なんと無駄な時間が多いのだろうと溜息が出る。
最早寝ながら文章を書ける機械があれば良いのに。


と、思ったのが幾数年前の話になるだろうか。
私は漸く寝ながら文章を書く機械『シンピツ』を開発することに成功した。
寝る時にこの鉛筆型の機械を握るだけで、
Bluetoothで接続されたスマホのアプリに、考えたことがメモ書きされるという具合だ。


しかしこれはまだまだ実験段階である。
時々夢が考えを邪魔して、話が逸れてしまう点が厄介なのだ。
エッセイならまだしも、創作だと余計に夢が影響してくる。
私が書きたいのは物語なのだ。
物語をシンピツで書くのは、まだ現実的では無い。

今日も眠りから覚めたら、
機械を改良することにしよう。
どれ、今日の文章は上手く書けているのだろうか。

20xx.4.15 実験 82回目


この記事が参加している募集

スキしてみて

よろしければサポートをお願い致します!頂いたサポートに関しましては活動を続ける為の熱意と向上心に使わせて頂きます!