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【 明晰夢の見方 】 無意識から創造性を得る夢見のヒント

私自身は瞑想実践の中で意図せずに体験したことにより、明晰夢を見る方法を模索して、見方のコツを覚え、一時期は頻繁に見ていました。

訓練次第では大抵の人は明晰夢を体験できるだろうと考えています。

私は、明晰夢の利用といった点で、なかなか魅力的な活用方法を思いつかず、またいろいろとデメリットを感じることもあり、今現在では明晰夢を積極的には見ようとはしていません。

しかし一度、明晰夢を見る技術を会得すると、いつまでもその能力が残るためか、就寝前に少し意識すると今でも体験することがあります。
たとえ見たとしても夢の中で「あぁ、また明晰夢か」と思うだけで、何かがあるというわけではないのですが。


私自身は明晰夢を上手く活用できませんでした。明晰夢に関心がある人が一定数いるようだし、クリエイティブな環境にいる人なら、無意識から創造性を得るなどの点で、大きな恩恵を得ることもあるかもしれません(特にアートや映像制作などの視覚系のクリエイターとは相性が良いかもしれないと思っています)。

なので『 瞑想の書 』 には付録として含みました。

瞑想の書の明晰夢の部分は、ネット上でも多くの情報があるということもあり冗長になるのを避けるためにも、かなり簡潔なものとなっています。

今回、瞑想する人 note の有用性が高まることも願って、瞑想の書の明晰夢の部分の補足・追加情報をnoteにします。

関連:瞑想の入門・初心者向けの記事まとめ

※参考文献
脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ」 アンドレア・ロック(著)  伊藤 和子(訳) ランダムハウス講談社
明晰夢 夢見の技法」スティーヴン・ラバージ(著) 大林 正博(訳) 春秋社

明晰夢の前に――そもそも夢とは?睡眠のサイクル、脳の活動

明晰夢では就寝中の夢の中でも、ある程度は自覚的意識を保てます。
つまり日頃見る夢に対して、意識を持って接することができるのです。
夢の中で探検したり、会話したり、自分の感情に向きあったりできます。

もし夢自体に、何か訴えかける重要な価値があるのなら、明晰夢のよって自分自身の夢の世界で探求することは、大きな恩恵がありそうです。


ではそもそも日頃就寝中に見る夢とは何なのでしょうか?
夢の中に登場する事物やシンボルには隠された意味があり、それを読み解くことによってアイデア、アドバイス、創造性など、何か役立つものが得られるといったことが本当にあるのでしょうか?

[ レム睡眠とノンレム睡眠 金縛り ]

睡眠にはサイクルがあり、深さによって4段階に分けられるノンレム(non-REM)睡眠と急速眼球運動が確認できるレム(REM=Rapid Eye Movement)睡眠とに分けられます。

このノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルは、だいたい90分周期であると言われています。
目覚めに近づくほど、ノンレムの深い睡眠は減り、レム睡眠の時間は長くなっていきます。

「夢を見るのはレム睡眠の時だ」とよく言われますが、実際のところはノンレム睡眠でも夢見はあるようです。
しかしノンレム睡眠期の夢は不鮮明なことが多く、鮮明で強い感情をともなう夢らしい夢を見るのはレム睡眠期であることが多いとよく言われています。

レム睡眠では、もちろん身体は眠った状態ですが、脳の活動は活発で、一部の脳部位では覚醒時よりも活発に活動しています。
レム睡眠は逆説睡眠とも言われています。

基本的には脳の障害などが無い限り、誰もが毎晩夢を見ると言われていて、見ないと言う人も、実は見た夢を覚えていないだけのようです。

ちなみに他の哺乳類や鳥類にもレム睡眠があることが分かっていて、人間以外にも夢を見る動物はいるとされています。


レム睡眠期は脳からの運動ニューロンの伝達が遮断されていて筋肉は弛緩しています。なので夢の中で動き回っても、現実の体は静止しています(レム睡眠は「体の睡眠」、ノンレム睡眠は「脳の睡眠」とも言われます)。

この時に目が覚めてしまうこともあり、これが金縛りです。

金縛りは睡眠麻痺と呼ばれていて、特に脳や身体に大きな変化が生じる10代に生じやすいようです。この金縛り中は幻覚も体験しやすく、これが幽霊と解釈されたりしますが、ただの幻覚です。

 [ 夢と脳 ]

脳の中で何が起こって夢が生じるのか、決定的なことはまだよく分かっていません。
脳幹から電気信号が発生して、各部位に伝わり夢が生じるという説があります。


しかし前頭葉や頭頂葉の一部など、脳幹部以外の障害で夢を見なくなることが報告されているので、脳幹のみが夢の発生に関与しているわけではないようです。


鮮明な夢を見ることが多いとされるレム睡眠期は、脳のある部分は覚醒時より活動が低下しているのですが、ある部分は覚醒時より活動が高まっています。

活動が抑制されているのが、論理的な思考・自省心、適切な注意・集中や、合理的な判断、計画性、生じていることを記憶することなどに関する脳の働きです。
人間らしい思考・合理性、自制をつかさどるとされる前頭葉の領域が部分的に、選択的に抑制されているのが注目されます。

活動が昂進しているのは、本能的な情動、感情をつかさどるとされる辺縁系です。
自由連想や創造性と関係しているとされるアセチルコリンの分泌が増加しており、ドーパミン神経の活動も見られるとされています。

つまり脳の状態から見ると、レム睡眠期は合理性が低下して、情動・感情過多で、自由連想も見られる状態です。
また視覚・イメージの脳領域の活動も見られるのが特徴です。

また一般的には、夢の内容は、怒り、不安、恐怖、焦りといったネガティブな感情に関係するものが、ポジティブな感情に関係するものよりも多い傾向があるとされています。
他には何かを探したり、探求したりする内容のものも多いと言われています。


夢には役割があるのか?

夢には役割があるのかどうか、役割があるのなら、どのようなものなのかについては諸説あります。

レム睡眠の役割

レム睡眠については、心身の発達・正常さのために生物学的、神経科学的な役割があるとされています。進化生物学の観点からも研究されています。

ヒトにおいては胎児期から睡眠が始まっており、この時期の睡眠はレム睡眠(動睡眠)の割合が大きいです。成長に応じて徐々にノンレム睡眠(静睡眠)の割合が大きくなっていきます。

生後2週間くらいまでは1日の半分以上は睡眠中ですが、その睡眠の半分がレム睡眠であるとされます。
1歳まででその割合は30%くらいになります。成人だと20%くらいです。

これらの点から、レム睡眠は脳の発達・成長に関わるとされています。
また様々な研究から記憶、学習、新しい環境や技能への適応に関わるともされています。
(ノンレム睡眠も記憶・学習に関わるとされていますが、それぞれ対応する記憶・学習の種類が違うようです)

夢の役割

しかし夢の役割に関しては諸説紛々としています。

夢には重要な役割はないとする意見もあります。
脳幹からランダムな信号が発生して、脳内を駆け回り、デタラメな視覚イメージと情動が発生して、ちぐはぐにつなぎ合わせたのが夢だとする意見です。
レム睡眠期の脳活動による「 副産物 」が夢であって、夢自体には重要な役割はないとする意見です。

こういった意見においては夢の内容は、脳内放電による意味のないものであって、その人の隠された感情や欲求を表していたり、精神分析に役立ったり、創造性が得られたりといったものではなくて、もし仮にそれらに役立ったとしても偶然そのように見えるだけ、ということになります。


一方で夢には役割があり、私たちが夢に積極的に向き合えば恩恵が得られさえするという意見もあります。

夢見の成立には脳幹から発生する信号(PGO波)以外にも重要な脳部位の活動が必要であるという事実や、学習や心理療法の観点からの夢の内容の研究などから、私たちにとって夢には積極的な意義があるとする意見が導きだされています。

こういった意見においては、見た夢を覚えて記録したり、解釈したり、心身の健康や創造性のために夢に向き合ったりすることには価値があることになります。


夢に役割があるとすれば、どのようなものなのか?

夢に役割があるとするならば、その考察には、夢らしい夢を最も見やすいとされるレム睡眠期の脳活動にヒントがあります。

レム睡眠期には辺縁系などの脳領域の活動が高まっています。
これらの脳領域は、情動の活動や感情に結びついた記憶、意欲、報酬、動機、自己認識、新奇なものへの興味、探求心などに深く関わるとされています。

そのため大まかには夢は、本能的な情動、感情に結びついた行動、記憶、学習、自己認識などの処理・整理・統合に深く関わるとされています。
また、これら情動に結びついた要素と、新皮質の高次の認知・情操系とを結びつける役割があるとも言われています。

夢の中で感情・情動に駆り立てられ体験することで神経回路が形成され、それが役立つというわけです。
神経回路自体は残るので、夢は忘れてしまっても構わないようです。
むしろ現実との混乱を避けるためにも、夢は記憶に残りにくいようになっているようです。

夢解釈の意義や心理療法的な役割、創造性との関係も指摘されています。

夢解釈について

夢見と関係の深いレム睡眠期の脳活動から、夢の内容は人の感情・情動を反映している可能性が示唆されています。

夢を記録してそれを解釈することが、自分自身の心に向き合う助けになる可能性があります。

この場合でも、全ての夢が訴えかけるものを持ち解釈に値するというわけではないようです。
鮮明で明確な感情をともなう夢は、解釈によって得られるものがあることが多いとされます。

また夢解釈に関しては杓子定規的な一律なやり方が正しいわけではないようです。
ユングやフロイトのスタイルや、夢解釈・夢占い辞典に載っているものが解釈のルールだというわけではなくて、スピ系の人がよく言うような神秘的なお告げなどではなおさらなくて、夢に登場してきたものが自分自身にとって何を意味するのか、どのような心理が生じたかが重要のようです。

例えば夢に登場した「車」は、ある人にとっては家族旅行やデートを連想させ、レクレーションや人との交流の楽しさを表すかもしれません。
別の人にとっては、仕事を意味するかもしれません。
過去の交通事故の連想から、注意、警戒、不安といったものを意味する人もいるかもしれません。

そしてその車で自分一人で、もしくは同乗者がいて、自分が、もしくは他人が運転して、まっすぐな道をもしくは曲がりくねった道を、速い速度でもしくはノロノロと走る夢の解釈は、その登場したものが自分にとって何を意味するのか、夢の中での自分の感情はどうだったのか、どのような展開で何を思ったのか、などと主観的に向き合わなければならないようです。

心理療法的役割

何らかの疾患やうつ病などの影響が無い場合の夢には、心理療法的な役割もあるとする研究もあります。
恐怖や不安などのネガティブな感情との折り合いをつけたり、トラウマの解消に役立ったりといったことです。

例えば犯罪やテロや自然災害などで大きな被害を体験、目撃して、酷いショックを受けたとします。
初めのうちは、そのショッキングな場面が夢に現れ、悪夢にうなされることもあります。
しかし、徐々にそのような夢が変容していくことがあるのが報告されています。

その時には過去のポジティブな記憶や連想などが材料にされることがあり、夢の中の恐怖や不安といったネガティブな要素が変化していき、夢自体がポジティブなものへと変容することがあるのです。

上述の大きな被害の夢では、初めは恐怖に打ちのめされ、逃げ惑うばかりであったものが、徐々に危険を乗り越えたり、積極的に負傷者を助けたり、といったような内容になることがあるのです。

特に本人がポジティブな変化を望み、自らの内面に向き合い、心理療法などの他者の支えもあると、そういた夢の変容が生じやすいという研究があります。

ただし、うつ病の人の場合には、夢の中でもネガティブな傾向があり、夢見を阻害したほうが良いという研究があります。

夢と創造性

夢見中は、情動優位で新奇性への興味、探求心、報酬系、常識にとらわれない発想、自由連想などが高まっている状態です。

また目や耳からの感覚入力が抑制・遮断されています。
そのため夢の世界や展開は、全てが自分自身の意識の内部にあるものから形成されます。
自覚的な意識が失われている状態であり、無意識領域にあるものが夢の材料になっていると言っても良いかもしれません。

無意識というのは日々の生活の中で意識され注目されるものではありません。
大部分の人は無意識がどのように働くのかについては、日頃考えたりすることもないだろうし、あえて実感しようともしません。

無意識というものは、なんとなく神秘的で、現実感の無く、ボンヤリしたもので、催眠術ショーなどで面白おかしく話題にされる程度のものだと考える人もいます。

しかし心理学や脳科学では、人間の決断や行動の大部分が無意識の強い影響下にある、という研究があります。
また無意識は混沌としているばかりではなくて、自分自身が想像する以上に高度な情報処理や思考作業をしているということも言われています。

身近な例でも、仕事、スポーツ競技、車の運転などをしている時や、人付き合いなどで、ふと心に浮かんだこと――論理的な思考過程を すっ飛ばして生じたヒラメキやインスピレーション――が正しいものだったというようなことを、しばしば経験します。

こういったことは無意識の働きによるものとされています。
実際に芸術、発明、科学などの分野で、このような無意識からのインスピレーションが大きな成果に結びついた例が多く見られます。


また無意識は、日頃自覚している自我意識に対しても独特な影響力を持っているようです。
例えば止まっているエスカレーターを上り下りしている時の違和感が無意識の働きによるものとされています。

無意識のうちに、移動している時のエスカレーターにあわせようとして、違和感が生じるようです。

面白いのが、エスカレーターは止まっていると認識しているにも関わらずに、そのような違和感が生じることです。
無意識の影響力の強さを実感できる例だと思います。

ちなみにこの止まったエスカレーターの例も、この文章を書いている最中にピン!とひらめいたものです。
止まったエスカレーターの上を私が歩くことは、記憶の限りではこの数ヶ月は無かったハズです。去年1回あったかどうかも定かではありません。

上の「身近な例でも、仕事、スポーツ競技、車の運転などをしている時や ~~ が正しいものだったというようなことを、しばしば経験します」の文章だけで、無意識の働きの身近な例をあげるのは終わりにしようと考えていたのですが、その文章の途中で、止まったエスカレーターの映像が突然浮かびました。

夢によって自分自身の無意識に向き合うことができれば、それは創造性に役立つかもしれません。

芸術家などの創造性を重視する人たちは、夢を覚えている能力が高いとする意見があり、またそういった人たちの中には実際に夢から創造性の恩恵を受けていると主張する人が多くいます。

夢と創造性の実例

無意識が創造性の源になり得るのは、日頃何となく気づく以上に無意識が私たちの意識において、実は大きなそして重要な領域を占めていて、膨大な情報や活動の痕跡を蓄積し、また本能的で混沌としたところもある一方で、高度な情報処理や思考作業をしているからであると言えるかもしれません

そして無意識は自覚的な自我意識(顕在意識)に対しても強い影響力を持つという認識も重要だと思います。

レム睡眠期の脳は外部からの情報入力が遮断されている状態であり、つまり夢は睡眠中の自分の無意識から構成要素を得ています。

夢は無意識との接触であると言えるでしょう。
では夢から創造性を得た実例はあるのでしょうか?

歴史上、多くの人が夢からインスピレーションを受けて、各分野で成果を上げてきたと報告されています。

ウィリアム・ブレイク(詩人、画家)は、夢の中で亡くなった弟から自作の詩画集に最も適した印刷技術を教えられたといいます。

ジュゼッペ・タルティーニ(音楽家)は夢の中で悪魔の演奏を聴いて、有名な「悪魔のトリル」を作曲したという伝説があります。夢で聞いた曲を完全には再現できなかったと言われています
ちなみにこの曲は演奏の難易度が高いようです。

ポール・マッカートニーは夢の中で音楽を聴いて、それをもとに作曲したのが有名な「イエスタデイ」だとインタビューで語っています。

オットー・レーヴィ(生理学・薬理学者。ノーベル生理学・医学賞受賞)は夢の中で実験方法を思いついたと言われています。

“彼はまた、実験法の思いつき方が独特であることでも知られている。1923年のイースターの土曜日、彼は神経伝達が電気ではなく化学物質によって行われていることを証明する実験法を夢の中で思いついた。彼は起きるとすぐに枕元の紙に概要だけを書き込み、睡眠に戻った。彼によると、夢の内容を思い出そうと努めたが思い出せなかったこの日は、人生で一番長い日だったそうである。彼は次の日も同じ内容の夢を見た。この時は彼はきちんと起床し、実験室に行ってすぐに実験を行った”  Wikipedia オットー・レーヴィ

ドミトリ・メンデレーエフ(化学者)は夢で周期表を見たそうです。

“1869年の2月17日、元素の原子量とその化学的特性との関係について考えていたメンデレーエフは、そのまま眠りに落ちてしまった。居眠りの最中、彼は夢の中で、すべての元素が原子量の順に並んだ表を見た。目を覚ました彼は即座にその表を紙に書いた。彼はこの表から、元素を原子量の順に並べると化学的特性が周期的に繰り返されるという発想を思い付いた”
 Wikipedia ドミトリ・メンデレーエフ  

エリアス・ハウ(発明家)は夢をヒントにミシンの針のアイデアを思いついたようです。

“針の先端に糸を通す穴を設けるというアイデアをどうして思いついたのかという逸話は、母方の家系の記録にある。ある日、ハウは野蛮な見知らぬ国の王のためにミシンを作らされる夢を見た。王は彼に24時間の猶予を与え、それまでにミシンを作って縫い終わらないと処刑されるのである。ハウはがんばってミシンを作ろうとしたが完成できず、連行される。そのとき、兵士たちが持っている槍の穂先に穴が空いていた。これだ、と気付いたとき目が覚めたという。朝の4時だった。彼は急いで先端に穴のある針を作り、それ以降は順調に設計が進んだという”  Wikipedia エリアス・ハウ 

アウグスト・ケクレ(化学者)は夢によってベンゼン環の構造を思いついたという話は有名です。Wikiによると疑わしいという意見もあるようです。

アインシュタインの相対性理論にも夢が関わっているようです。

“ある晴れた日の昼休み、アインシュタインは学校の裏にある丘に寝転んで空を眺めていた。いつの間にか眠り込んでしまい、不可思議な夢を見た。それは、自分が光の速さで光を追いかける夢であったという。彼は目が覚めると、すぐに思考実験を試みた。これがのちの相対性理論を生み出すきっかけになったといわれている”   Wikipedia アルベルト・アインシュタイン

湯川秀樹も夢の中で中間子理論のヒントを得たと言われています。枕元にメモ帳を用意していて、何か思いついたら書き留める習慣があったようです。


参考文献の「脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ」にはこんな具体的な例も載っています。

”ハーバードの物理学者ポール・ホロウィッツは宇宙探査用の望遠鏡の制御メカニズムを設計しているが、レーザー信号をとらえる新型望遠鏡を建造中、技術的な壁に突き当たるたびに、解決策が夢に現れたという。

「それらの夢にはナレーターがいて、言葉で問題を解説し、解決策を教えてくれる。視覚的に解決策が与えられたこともあった。夢の中で男が何かの装置を作っている。光学レンズを調整したり、回路を作っているんだ。いずれも、そのときどきに私が手こずっている部分だった」

ホロウィッツは枕元にペンを用意し、夢に見た事柄を書きとめることにした。ありふれた夢と同様、創造的な夢もめざめた直後に記録しないと忘れてしまうからだ。
書いたメモは研究室に持って行き、同僚に見せて設計に生かす。

同僚たちはしまいにはホロウィッツが夢で解決策を思いつくことに慣れっこになったという“    引用:脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ

夢は脳内のランダムな電気信号によって生じる副産物で、夢自体には重要な意味は無いという意見があることは前述しました。

夢で創造性が発揮されたという場合でも、創造性が意図されたわけではなくて、たまたま夢で見た光景、事物が当該作業に役立った、つまり、偶然だったということもあるでしょう。

リンゴが落ちるのを見て何かのインスピレーションを得たとしても、まさか、リンゴがそのインスピレーションを与えるために落ちたわけではないし、その人の無意識が超常的能力でリンゴを落としたわけでもありません。

リンゴが落ちるのを見たのは偶然です。
このような場合では、夢であれリンゴであれ、偶然に目撃したものから発想が得られるような意識や思考の状態、段階だったのでしょう。

しかし上のホロウィッツの夢の例は、そのような偶然とは違った例のように感じます。
むしろ積極的に解決策を訴えかけているようにも感じます。

夢見の意識の領域には独特なメカニズムが働いていて、覚醒時に創造性を発揮する上でも、その恩恵を受けることがあるということを強く示唆しているように思われます。

他にも、調べるといろいろと実例が出てきます。
夢の中で古代の神官に楔形文字の解読を教えられた人類学者、難問の解き方を夢の中で教えられた数学者、夢で運動技術の改良を促されたスポーツ選手、行き詰まると夢を活用する映画制作者(動画制作者の中には夢を活用する人がしばしばいるようです。映画『インセプション』のクリストファー・ノーランは明晰夢を見る、と自ら語っています)、、、などなど。

夢が創造性他に役立つ重要な働きがある、という考えに批判的な学者は多いです。
しかし実際に有名無名を問わず、多くの人が夢から恩恵を受ける経験をしてきたのは確かだと言って良いでしょう。

特に創造性が重視される環境にいる人には、夢にもっと注意を払うべきだと言えるかもしれません。

夢と脳と創造性に関しては面白い意見が紹介されています。

“コーネル大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校で英語学と演劇を教えていたバート・ステーツ元教授によれば、自己組織化により夢が生まれるときの脳の状態は、作家や画家、科学者や理論数学者が覚醒中に創造的な活動に没頭するときの脳の状態とよく似ているという。


制作中の画家か作家の脳内の活動をPETスキャンその他の撮像法で調べれば、レム睡眠中の脳と同様の活動が見られるはずだという。

「画家や科学者、作家、それどころか、小説を夢中になって読んでいる人でも、起きているときに想像力を働かせている状態は、夢を見ている状態に似ています。別の世界に入り込んで、この世界の実際的な事柄にはあまり注意を向けていません。想像の世界に遊べば、夢を見ているときと同様、周囲の状況を正しく認識できなくなります。 ~~ 」”   引用:脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ

私自身は、クリエイティブな環境にいるわけではないためか、夢から際立った恩恵を受けた記憶がないです。

しかし上述のように、夢に向き合い無意識に向き合うことで、得られるものがあり、大きな成果に結びつくこともあるのが示唆されています。

特にクリエイティブな環境にいる人で、今まで夢に注意を払ってこなかったのなら、一度くらいは夢の活用について試してみるのが良いかもしれません。

夢への向き合い方の一つとして、私は明晰夢を提案します。


明晰夢とは

明晰夢とは、夢の中で「今自分は夢を見ていて夢の中にいる」と自覚でき、ある程度は夢の中で自覚的意識と思考力を保てるような夢です。
私の体験では覚醒時と比べると、明晰夢でもやはり、自覚的意識の明晰さと思考力は落ちる印象です。

明晰夢の中では、夢の中でも起きているときと同じようにハッキリと意識を保てると感じても、目覚めた後に振り返ると、やはり覚醒時の意識と比べて明晰度が低いと分かります。

「明晰夢の中でこういったことをしよう」と決めてから、明晰夢を見ても、なかなかそれが思い出せないことがあります。決めたことがあったことすら忘れていることがあります。

明晰夢に注目する研究者はいて言及もされていたのですが、科学的にも公に認められたのが、1980年代になってからです。
明晰夢を見ている人が、その状態で、今明晰夢を見ていると眼球を動かしてサインを送り、その存在が科学の分野で検証され確かめられました。

存在自体は大昔から知られていて、アウグスティヌスの書簡の中にも記述があるようです。

イスラム教神秘主義の伝統においても知られていたという記録があり、面白いのだと、チベット仏教(密教?)――仏教がチベットに導入された歴史的な経緯からチベット仏教は「密教色」が強いとされるのですが――においては1000年以上前から明晰夢を修行に利用する「夢ヨーガ」というのが伝えられているようです。


楽天ROOM:【本】夢・明晰夢・臨死体験・体外離脱など


関連note : 「強め」の明晰夢を見た話。


チベット仏教のダライ・ラマ14世が、夢、明晰夢について語っています(明晰夢の見方も)。↓ ↓ 

京都精華大学45周年記念事業 ダライ・ラマ14世講演会 11.24講演録

(そういえば、以前、ダライ・ラマ14世が登場する夢を見たことがあります。夢の中で、笑顔のダライ・ラマ14世から非常にキレイな紫水晶をもらいました。自分にとって何か意味のある夢だったのかなぁ?)

明晰夢の時の脳に関しては、研究があまり豊富ではないようですが、通常のレム睡眠期の夢見状態よりも、(覚醒時ほどではないにしろ)活動レベルが高いようです。
特にレム睡眠期に通常は抑制されている前頭葉の活動レベルが高まっているのが確認されているようです。

注意点・リスク

明晰夢にはリスクもあると考えています。

睡眠の質に影響を与える可能性があります。
また記憶の混乱が生じることがあります。過去の記憶として頭の中にあることが、「現実世界」での体験の記憶なのか、それとも明晰夢の世界での体験の記憶なのか混乱することがありました。

他にも追加しておくと、統合失調症や睡眠障害などの疾患がある場合には明晰夢の実践は避けた方が良いとする意見があります。

そのような場合には、明晰夢の体験だけではなくて、後に明晰夢を見るための実践自体が悪影響を及ぼすかもしれません。

また実践によって睡眠障害などが生じる可能性もあるかもしれません。

明晰夢は何の害も無く、ハッピーなものだとする意見がありますが、体験者の私からすると、そのような意見には無責任なところがあると感じています。

関連note:明晰夢は危険なのか? ↓ ↓

私の体験――実体験から

初めて体験すると夢の中で「これが明晰夢か!?」と驚くと思います。
その明晰夢の質にもよりますが、舗装された道路、民家の壁、木の樹皮や葉っぱ、空に浮かぶ雲、、、これらの複雑な模様が細部まで再現されています。

明晰夢の中で木の葉っぱの模様をジッと見つめ、触ってみてその感触を確かめるなどして「この葉っぱの模様も感触も現実のものと変わらないじゃないか。これがホントに夢の世界なのか?これが夢だとすると、これらを俺の脳が作っているのか?自分が作った世界に自分がいるのか?」と私はしばしば驚いていました。

一般的に夢は不安、焦り、恐怖などネガティブな感情に関わる内容のものがポジティブなものよりも多いと言われています。
しかし明晰夢では、私の場合は、ネガティブな感情の内容はあまりなかったように記憶しています。

明晰夢の中の登場人物と会話もできます。私は夢の中の交番でお巡りさんに道を教えてもらったことがあります。

奇妙なことなのですが、参考文献の「明晰夢 夢見の技法」の中に明晰夢では文章を読むのが「実質的に不可能」という記述がありますが、私も文章を読めなかったです。

明晰夢の中で道に新聞紙が落ちていました。
「夢の中の新聞には何が書いてあるんだろう?自分の脳が作りだした夢なのだから、自分の無意識の中にあるものでも記事になっているのかな?」と興味をもって拾って読もうとしました。

漢字や平仮名が書かれていたのはすぐに認識できたのですが、文章を読もうとすると、なぜか文字がウニョウニョ動きだして形が崩れ、読むことができなかったです。

明晰夢の世界は、これは質に左右されることだと思いますが、質の良い明晰夢の場合には、景色が鮮やかなことが多い印象があります。
通常の夢よりも、また覚醒時のときよりも、自然の景色がキラキラしていて鮮やかだったことが多い印象があります。

明晰夢では空を飛んだり、自由に行動できると言われています。
確かに通常の夢と比べても、思考力を保ちながら、自己認識を保ちながら、行動できます。
ただ私は、空を飛んだり、壁をすり抜けたりは苦手でした。空を飛んだのは2、3回しか無かったと記憶しています。

一度は明晰夢の世界が夜で、オリオン座が見えたので、その方向に飛んでみたことがあります。
なぜか途中で壁にぶつかりました。

景色を変えたりも苦手でした。
夢の中で景色を変えようとイメージしたのですが、上手く行ったのは1回くらいしかないと記憶しています。
その時は遠くの景色に山を登場させました。

明晰夢状態の維持にも気をつかいます。
夢の中で感情が高ぶった場合には覚めてしまうことがあります。
明晰夢の質が悪いと、明晰さが低くボンヤリして、普通の夢に移行していくことがあります。

私は夢の中で、意識的に景色を眺め、ものを触り感覚を確かめ、自分自身を明晰夢の世界に馴染ませて、状態を安定させようとよくしていました。

かなり質の悪い明晰夢の時には、これは夢だと気づいた当初から、ボンヤリしてきて自覚的な意識を失いそうになり、普通の夢に移行しようとしたことがありました。
その傾向に抗うつもりで意志をしっかり持ったら明晰さが高まり、しかし、しばらくするとまたボンヤリして普通の夢に飲み込まれそうになったので、再び意志を強め、明晰さを維持し、といったことを何回か繰り返した後に、結局は自覚的な意識を失い、普通の夢に移行したことがあります。

あとこれは私の記憶違い、勘違いかもしれませんが、明晰夢の中で行動しながらも、横になって眠っている現実の身体の状態、感触を感じることもできました。
明晰夢の世界で、その世界の身体をもって行動しつつも、どういうわけか、現実の身体の呼吸の状態や、布団の感触を把握できたことがあったのです。
これは毎回では無かったです。

ある時は明晰夢の世界にいながらも、現実の身体の方の鼻が詰まって呼吸がしづらく感じたので、鼻を通そうとして強めの呼吸を何回かしました。
その時に「こんなに強く呼吸をしたら、明晰夢から覚めてしまうかもしれない」と夢の中で思いました。
案の定、目が覚めてしまいました。

OBE(体外離脱体験)と関係?

他に面白いことでは、OBE(Out of Body Experience 体外離脱体験)と明晰夢は関係があるという意見があります。
OBEは明晰夢の一種であるという意見です。

私はこれは、まぁそうだろうなぁ、とは思いますが、よく分かりません。

私は、周囲の風景が薄暗くボンヤリした質の悪いものでしたが、OBEは2回ほど経験があります。
どちらも金縛り状態からOBEになったと記憶しています。その状態で見た周囲の様子は現実の様子とは違っていました。

体外離脱に応用できるかも? ⇒⇒ ヴィム・ホフの呼吸法

明晰夢と体外離脱体験(OBE)の関係については、『瞑想の書』に少し記事を追加しました。(20/08/07)

明晰夢を見る方法

明晰夢を見る方法は、探してみるといろいろと出てきます。
瞑想の書』でも簡潔に触れました。この瞑想による方法は最も簡単なものの一つだと思います。

 有名な方法を紹介します。

 [ 二度寝法 ]

目覚ましをセットして、いつもより90分くらい早く一旦目覚めます。
この90分くらい早く一旦目覚めるというのは、ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルが関わっていて、目覚めやすく、夢を思い出しやすいためです。

そして夢を思い出し「今度は夢だと気づく。明晰夢を見る」と決意しながら、再び眠ります。
夢を思い出せなくても決意しながら眠ります。

目覚ましをセットしなくても、自然に一旦目が覚めるようになるまで、続けると成功しやすいと言われています。


この二度寝法はおそらく最も有名な方法です。
しかし私はあまり好きな方法では無かったです。というのはやはり目覚ましセットまでして一旦目覚めて、再び寝入るのが辛かったからです。

睡眠時間があまり取れなかったり、不規則だったりする人は、この方法は辛く感じるのではないでしょうか?

たまに早く目覚めた時にこの二度寝法を試すのなら良いかもしれないと思います。
私がこの二度寝法で明晰夢を見るのに成功したのは数回ありますが、その全てがたまたま早く目覚めた時に試したものです。

関連note:明晰夢、体外離脱体験(OBE)が生じやすいタイミング

 [ リアリティチェック法 ]

これもかなり有名な方法です。
覚醒時に何回か、今自分は夢を見ているのかどうかチェックして、これを習慣にします。
そうすると夢の中でも確認するようになり、夢だと気づくキッカケが生じやすくなるとされます。

この方法は簡単で、なかなか有効な方法だと思います。

この方法はオススメできます。

明晰夢を見る上で最も重要なこと――それは「意志」!!

明晰夢を見ることに関しては、もって生まれた素質などもあると思いますが、訓練次第の要素が大きいと思っています。

明晰夢の見方に関しては、いろいろなことが言われていますが、最も重要な要素はズバリ「意志」です。
明晰夢を見ようとする意志
です。これが最も重要です。

明晰夢を見ようと強く決心し、意志を持ち、夢に関心を持ちます。
夢日記をつけることを強く勧めます。

私たちが夢の世界に関心を持ち近づこうとすると、夢の世界も私たちに近づいてこようとします。

精神論ではなくて、夢に関心を持ち夢日記をつけつると、夢を思い出す能力が高まります。
夢研究の分野でもこのことは報告されています。脳の神経活動に、夢に注意を向けるような活動が生じるのだと考えています。

面白いことなのですが、真面目に夢日記をつけて思い出す訓練を続けると、複数の夢を思い出すことがあります。
「複数の」と言ったのは、1回の睡眠で見る夢は1つとは限らないからです。

私も夢日記をつけていた頃は、2つ以上の夢を思い出し「この夢はこの夢の後に見た」なんてことがありました。

夢に関心を持ち夢日記をつけるだけで、後は他に何もしなくても、自然に明晰夢を見る能力が育つこともあります。
夢に関心を持ち、自ら夢に近づいて行って、いつの間にかに夢の世界、明晰夢の世界に入り込むのです。

明晰夢と瞑想は関係があるのか?

瞑想の習慣のある人は夢を思い出しやすく、そして、明晰夢を経験しやすいという意見があります。
私も夢・明晰夢と瞑想には関係があるだろうなぁ、と思っています。

特にある種の瞑想に関しては、直接的に明晰夢と関係すると自らの体験から確信しています。

私が人生初の明晰夢を体験したのが、瞑想のやり方を模索していた時期で、ある瞑想法を試して、そのまま眠くなり就寝した時です。
夢の中で「これが明晰夢か!ホントにあるんだ!」とビックリしました。

この時の体験をもとにしたものが『瞑想の書』の明晰夢の部分にあるものです。

その時は明晰夢のことは知ってはいましたが、明晰夢はおろか夢にもあまり関心がありませんでした。
それまで経験もなく、詳細な事前知識もなく、関心すらも無く、夢日記もつけず、意志したわけでもないのに、いきなり瞑想によって明晰夢を体験しました。

それからは明晰夢を見るための方法を模索して、自分でも経験を積み、明晰夢を見るための瞑想をしなくても、就寝時に意志するだけで見るようになりました。


瞑想と夢-レム睡眠の関係については、いろいろな考察があると思います。

瞑想と夢見状態においては、両方とも外部からの情報入力が避けられています。
瞑想によってあらわれてくるのは「内なる意識」であるとも言えます。
夢見では、外部からの感覚入力が避けられているので、意識の内部にあるものが材料になって夢が生じます。

瞑想中は身体は静止していますが、弛緩に偏るポカンとした状態ではなくて「瞑想態」という状態が生じ、弛緩だけではなくて活性もみられます。
レム睡眠期は、骨格筋は弛緩していますが、脳・神経生理のメカニズムにより、脳活動においては外部からの刺激がなくても自律的な活性が生じます。

要は、瞑想では外から見ると眠ったように静止しつつも、明晰な意識を保つというもので、明晰夢は実際に眠っているときに明晰な意識を保つというものと言えるかもしれません。

こういった似ているようなところがあるので、私は当初から瞑想を、明晰夢を見るために活用できるだろうと模索していました。

夢(明晰夢)を創造性に活用するためのヒント――それは信頼!?

 [ 創造性のプロセスモデル ]
創造性のプロセスに関しては、複数のモデルが提唱されているようです。

おそらく最も有名なのが、準備→→孵化(インキュべーション、温め保育する)→→ひらめき→→検証というものだと思います。

まず準備段階では、情報収集し、専門知識を集め、必要な技能を学び、多角的に眺め、試行錯誤する段階です。
課題の達成、問題解決、創造のために集中して努力して没頭する段階です。

この段階で多くのものが意識、無意識の中に詰め込まれます。

孵化の段階では、課題達成のために努力しつつ、もしくは行き詰まり一旦はその作業から離れていたり、休憩や気晴らしなりの他の状況にあるときでも、無意識領域の何らかのメカニズムにおいて、思考・創造作業が継続され、熟成されている段階と言えるでしょう。

そしてひらめきの段階です。準備段階で知識や試行錯誤などの多くのものが詰め込まれ、孵化の段階ではそれらが無意識の不可思議のメカニズムで熟成・発酵され、そしてある時に、散歩していたり風呂やトイレの中にいたり、コーヒー飲んでリラックスしているような時に、もしくは夢などによって意図せずにフッとインスピレーションが生じる段階です。

しばしば、作業とは全く関係の無い状況で、思いもつかなかった斬新で、かつ、課題達成、問題解決に直結するようなアイデアが、独特な感情をともなって突然ひらめきます。

検証の段階では、ひらめいたアイデアの有効性を検証・確認して、必要に応じて修正、発展させる段階と言えるでしょう。

 [ 創造性を得るヒント ]
夢や無意識が密接に関わるのは、このプロセスの内で孵化ひらめきの段階です。
しかしこの孵化ひらめきは無意識の不可思議なメカニズムによるものなので、自我意識(顕在意識)で あーだこーだ できるものではないです。

自我意識が関わることができるのは、まず準備段階での集中的な努力、没頭、試行錯誤と最後の検証段階です。
あとは無意識の創造性を信頼して耳を傾けるということだけなのではないかと考えています。
積極的に無意識の創造性を信頼することが重要なのかもしれません。

これは冗談や精神論のつもりで述べているわけではありません。

私たちが関心を持ち、夢日記を付けるなどして、夢に真面目に向き合うと、まるで夢の世界も私たちに向き合うかのようになり、夢を思い出しやすくなり、また、明晰夢も見やすくなります。
このような脳の神経活動があるんだと思います。

それと同じように、私たちが自らの無意識に信頼をもって向き合うなら、無意識も私たちに積極的に応えてくれるようになるかもしれません。
そのような脳の活動、無意識のメカニズム、潜在能力が私たちの内にあるのかもしれません。


準備段階において創造のために実際的な作業に没頭して、知識、努力、試行錯誤を意識に詰めこみます。
そうしつつも無意識を信頼して、しばしば自らの内を見て、無意識に向き合い、その語りかけることに受動的に耳を傾けようとするのです。

デフォルト・モード・ネットワークの活動(マインドワンダリング)を利用してもいいかもしれません。


無意識からの語りかけに耳を傾けることでは、夢や明晰夢も強力な方法になり得るでしょう。

孵化とひらめきは無意識領域のメカニズムによるものです。その無意識領域のにおいては、私たちが気づいている以上に高度な情報処理がなされていることが示唆されています。

夢は睡眠中の無意識領域にあるものが、その構成要素になっています。
自由連想が高まっている状態でもあり、また、感情に深く関係する活動や自己認識に関わることの処理・整理作業、高次の認知機能との統合作業の遂行にも関わっていると示唆されています。

その上、実際に多くの人が夢から創造性の恩恵を受けてきたという実例があるのですから、夢・明晰夢を活用しない手はないと思います。

無意識の創造性を信頼し、夢に向き合い、枕元にメモ帳を置いておき、見た夢を書き留めましょう。
無意識の構成要素で作られた夢の中で、明晰夢によって自覚的な意識を保ったまま探求できれば、それも良いでしょう。

あと瞑想は無意識との親和性を高め、インスピレーションを得やすくするような効果が ひょっとすると あるかもしれません。まぁ、はっきりとはなんとも言えませんが。

関連note:瞑想と人間性、創造性(クリエイティビティ)

無意識と創造性について著名人の興味深い発言を見つけました。

“頭の中でこんな曲にしようと考えている段階は、あくまで入り口でしかない。作曲の本質は、もっと無意識の世界に入り込んで、カオスの中で自分でも想像していなかった自分に出会うところにある。つくろう、つくろうという意識が強いときは、まだ頭で考えようとしているのだと思う”

“秩序立てて考えられないところで苦しんで、もがいて、必死の思いで何かを生み出そうとする。その先の、自分でつくってやろう、こうしてやろうといった作為のようなものが意識から削ぎ落とされたところに到達すると、人を感動させるような力を持った音楽が生まれてくるのだと思う”
     引用:久石 譲 『感動をつくれますか?』角川書店


1回の睡眠では70~120分くらいは夢を見ているとされています。
1年では合計時間では20日以上が夢の中で、80歳くらいまでで夢の世界にいるのは数年間分になると言われています。

夢の世界は、私たちの暮らすもう1つの世界と言うこともできるかもしれません。
その世界を積極的に認め、その恩恵を受けることはとても素敵なことなのかもしれません。