fuzkue-静かに一人きりで本を読むときに行きたい場所
物心ついた時から、本を読むのが好きでした。というよりむしろ、私にとっては食事や睡眠と同じように、本を読むことは生きていくのに欠かせないものの一つです。
中学生の頃くらいから、誰かからぐさっとくる一言を投げられた時や、忘れたいくらい恥ずかしい失敗をしたときは、とりあえずエンタメ系の本を読んで物語に没頭するようになりました。いわゆるページターナー(page-turner)とよばれる、読み出したらとめられない本に夢中になり、一冊読み終わる頃にはだいたいすっきりとして、深い眠りにつくことができました。
次男を産んだあと、3ヶ月くらいたったとき、週に1度は夫にこどもたちの寝かしつけをお願いし20時ー23時くらいまで外出する時間を作っていました。近所のカフェで、コーヒーと甘いものと本にひたすら集中する時間。私は一人の時間がものすごく大切なタイプなので、その時間があったからなんとか毎日やってこれたなぁと思います。
それがここ数ヶ月、コロナの影響で飲食店が自粛休業や短縮営業をするようになり、外で一人時間を過ごすのが難しくなりました。
家で子どもたちを寝かしつけた後に、リビングで一人本を読むことはできますし、そうしていたのですが、やはり子どもの寝言や泣き声を常に意識しながらになります。
あー、そろそろ一人で本を読みたい。
と思っていた矢先、ツイッターで知ったのが本の読める店fuzkueでした。
本の読める店って何?
本屋?ブックカフェ?それとも別の何かなの?
ウェブサイトではこんな風に説明されています。
「本の読める店」は、「今日はがっつり本を読んじゃうぞ〜」と思って来てくださった方にとっての最高の環境の実現を目指して設計・運営されている店です。この店が考える「たしかに快適に本の読める状態」は、大きく分けて2つの要素から成り立っています。ひとつは穏やかな静けさが約束されていること、もうひとつは心置きなくゆっくり過ごせること。
それです。
私が欲していたのは、それです。
上に引用した言葉に続く、「本の読める店とは」の説明は、他では聞いたことのないフードやドリンクを頼むと減っていく独自の席料システムについてや、パソコンが使用できないこととその理由など、このお店の自己紹介が書かれています。
まるでお店に語りかけられているかのようなリズムと温度感の文章で、長いにもかかわらず最後まで読めてしまいます。
というわけで、保育園のお迎えを夫が代わってくれることになった先日、仕事の後に行ってきました。fuzkueは初台と下北沢にあるのですが、私が向かったのは下北沢。
今年の春にできたばかりのBONUS TRACKというちいさな街のような場所の一角にあります。ここには他に本屋のB&Bや日本と世界の発酵食品を集めた発酵デパートメント他、かなり個性豊かな小さいお店が軒を連ねています。どこも面白そうなお店ばかりで、今度早い時間にいけたときにはゆっくりまわってみたいなと思いました。
そしてここがfuzkue 下北沢の2階席です。窓からはBONUS TRACKの中庭の緑が見えて気持ちがいいです。靴を脱いで、写真に写っている白い大きなクッションに体を預けてごろーん。
最高だ・・・。
ここに本を読みに来たことを忘れて、しばし天井を見ながらぼーっとしてしまいました。
こんなに静かな空間で、一人。幸せ。
10分くらいぼーっとした後で、ようやくコーヒーとポテサラトーストを注文。その後しばらく本に没頭していると、店員さんがそーっとほぼ音を立てずに食事を運んできてくれました。
このコーヒーが素晴らしくよかった。
何がよかったかって、最初の3口目くらいまではコーヒーの華やかな香りがふぁーっと広がってしみじみ「あぁ、おいしい」と感じるのですが、その後本を読みながらコーヒーを飲むようになったときに美味しさに気を取られないんです。
飲み終わるまでずっと美味しさを主張し続けるのではなく、最初に美味しさを味あわせた後は、すっと後ろに引いて読書タイムのお供に控えるというか。なので本を読んでいるときの思考が乱されない。
季節のポテトサラダ(さつまいもやオリーブが入っていたような気がする・・)がのったトーストも、小腹を満たしてくれました。
そしてこの場所で本を読んでいると時間が止まったような感覚になります。静かだし、時計もない。ひたすら本と自分の時間を堪能できます。
ふと気づくと、2時間近く経っていて、慌てて席をたちました。そして同じエリア内にある本屋B&Bをぐるっとまわって、さっと帰路につきました。
あぁ、とんでもなくよい場所に出会ってしまいました。
箱根の本箱と同じく、一人になって本を読みたいときの行き先リストに加えます。
fuzkueで読んだ本はこの2冊
本屋B&Bで購入して帰ったのはこの2冊
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