「自分」を駆使して壁と向き合う。
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「自分」を駆使して壁と向き合う。

小波 季世|Kise Konami

 先日、友人たちとボルダリングに行ってきた。ボルダリングは実に数年ぶり。経験上、ボルダリングでは、普段使わないような筋肉を使ったり動きをしたりすることが多いため、事前に念入りに体をほぐす。

 ボルダリングの楽しみ方はそれぞれだが、どこのボルダリング施設も基本は同じだと思う。壁一面に色とりどりのストーンが配置され、各ストーンには決められた色や数字が割り当てられている。同じ色や数字のついたストーンが1セット。1セットのストーンには「スタート」と「ゴール」がある。「スタート」のストーンに触れ、体を地面から離した瞬間からゲーム開始。1セットのストーンと壁を上手く使い、「ゴール」のストーンに両手でタッチできたらゲームクリア。途中で進めなくなってしまったり、「ゴール」ストーンに片手でしかタッチできなかったら、ゲームオーバーだ。

 難易度は様々だ。するするっと簡単に登れるようなものから、ちょっと頭を使うもの、頭も体もフル稼働させる必要のあるものまで。両手両足のリーチが長かったり、筋力だけがあったりすればクリアできるものではない。逆に、頭の中の戦略がばっちりでも、自分のスタミナが足りなかったり、先手ばかり考えて目の前の動きをおろそかにしたりすると、あっという間に失敗する。

 ボルダリング施設には様々な人がおり、誰かがある壁を登っている時は他の人は待機するというルールがあるため、他の人のプレイを見て勉強することも多い。その日も、ボルダリングのプロのような人と経験者らしき人2人がすぐ近くでプレイしており、2人のやりとりがとても勉強になった。

 まず、教え手の人があるコースを実際に登りながら、コツを伝授する。

「3つ目のストーンでこの姿勢になりたいなら、スタートはこの姿勢から」
「XXさんの手足の長さなら、こう進んでいけると思います」

 その後、習い手の人がアドバイスを元に登り始める。教え手の人は要所要所で声をかけていく。

「お、そうです、そうです!いいよ、いいよ!」

 ゴール近くまで進んだところで、習い手の人の気が緩んだのか、習い手の人は壁から落ちてしまった。

「あ〜〜!!惜しい!!難所をクリアしたあと、動きが雑になりましたね」

 習い手の人は、悔しそうだ。どうしても今日中にクリアしたいのだろう。教え手の人も同じ気持ちなのか、今のプレイのよかった点、改善点を詳細にフィードバックしている。

「体力も消耗してきたと思うので、1本1本、丁寧に行きましょう!」

 そうなのだ。ボルダリングは、やればやるほど体力を消耗する。だからむやみやたらにプレイ回数を増やしたからといって、成功率は上がらない。自分の持って生まれた体型、その時の体力、戦略を駆使し、全体像を把握した上で、目の前のストーン1つ1つに向き合いつつ、同時に少し先を見てゴールを目指す。ボルダリングは人生に似ているかもしれない。

 2020年の東京オリンピックでは、ボルダリングも公式競技になっている。クライマーたちの華麗な一挙一動から文字通り目が離せない。


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小波 季世|Kise Konami

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小波 季世|Kise Konami
随筆家。徒然なるままに徒然なることを。 本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)。東日本大震災後の国内外の人的交流に関する論文で第二回 杜都(もりのみやこ)人類学賞受賞。 KIRIN×note #また乾杯しようコンテスト 審査員賞受賞。