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論文セルフ解説:"A Unified Statistical Rating Method for Team Ball Games and Its Application to Predictions in the Olympic Games"(20190819追記)

Sports Analyst Meetup #2 で宣伝させていただいた拙論文が公開されました.オープンアクセス料金を(弊学が)支払ってどなたでもお読みいただけるようにしたので,ダウンロードしていただければうれしいです.以下リンクです.どっちかからダウンロードできるはずです.

Spoana#2 イベントのページとそのときのスライドは↓.

論文は英文ですし皆さんお忙しいでしょうからセルフ日本語解説を書きます.以降,まず一文で要旨を言い切った後,論文の各章・節の概要を日本語で説明していきます.式番号などは本文をご参照ください(ダウンロードしてね!)


一文で要旨をまとめると.

オリンピックの球技5競技10種目について,過去の試合結果を適切な数理モデルを通して各チームの実力を評価する手法(提案手法)は,世界ランキングや専門家による予測よりも予測精度が高い.

1章:イントロ

・オリンピックの5競技(バスケットボール,ハンドボール,ホッケー,バレーボール,および水球),男女計10種目の予測モデルを作ってその精度を評価します.予測対象はリオ五輪です.

・評価の比較相手は世界ランキングです.世界ランキングのうち,設計が良くないものがあることを指摘することがこの論文の目的の一つです.

・ランキングはチームの勝つ能力のうち,安定して発揮される部分を抽出して(つまり,運や相性に依存した部分を削除して)定量化されるべきである,というのが筆者の立場です.

・また,提案手法を専門家のメダル予測とも比較します.定量的なモデルと専門家の知見のどちらが予測精度が高いかを比較することがもう一つの目的です.

・また,「スポーツの情報化」の文脈において,競技間の共通の構造を利用し,かつ計算コストが小さい実力評価手法が必要ではないか,と提案します(図1).

(本文には書いていないのですが,スポーツ研究の質や量って,その競技に関して動いている人間とお金の量にずいぶん依存してしまいます.それとは関係ない方法を開発したいな,というのが隠れテーマです.低コストなのでわかることは限定的なのですが,競技がメジャーかマイナーかを問わない方法を開発したつもりです.)

2章:レーティングの定義と算出方法

・各チームは実力評価値としてレーティング値と呼ばれる値を持っています.対戦チーム間のレーティング値の差がロジスティック回帰モデルを通して得点割合を説明すると仮定します(式(1), (2))

・レーティングは結果(実得点割合)と予測値との誤差の二乗和を最小にするように調整します(式(3), (4)).

・競技ごとに得点割合と勝率の関係が異なる(図2)ので,競技パラメータを導入します.競技パラメータは結果(勝敗)と予測値の誤差の二乗和を最小にするように調整します(式(9)-(11)).予測勝率が算出できるので,大会前に実力分布を評価できます.エントロピーが適切でしょう(式(12)).

3章:予測結果

・データセットはリオ五輪直前のおよそ2年間の主要国際試合としました.各種目250から450試合程度含まれています(表1)

予測結果は公式ランキングよりも有意に良かったです.提案:262/370,公式:238/370.実得点割合との相関も提案手法がおおむね強いです(表3,表7)

・ランキングポイントと提案レーティングで実力評価がけっこうひっくり返ってます(図5,表2)

・メダル予測は,色までを10個,メダルの有無までを19個当てることができました.これは公式ランキング,スポーツ専門誌(Sports Illustrated),アメリカ全国紙(USA Today),統計予測企業(Gracenote)のどれよりも良い結果でした.が,サンプル数が少ないため有意性は示されていません(表6)

・提案手法では正規化を行っているため,競技間での実力分布の比較も可能です(図6-8).

4章:まとめ

・同じことを東京五輪でも実施したいですね.競技も増やしたいですね.

・でも野球とサッカーは諸事情あって難しそうです.

ダウンロードランキング(20190706追記)

電子情報通信学会の論文サイト,毎月「ダウンロード数ランキング」なるものを公開しているのですが,拙論文が2019年6月のランキング1位となったようです.実にありがたい.皆様ありがとうございました.

ダウンロードランキング(20190819追記)

2019年7月もランクイン(4位)していました.皆様ありがとうございます.


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