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君がいただけで01

3月28日…11年後の約束

高校を卒業した年の、この日に始まったんだ。中学の同級生の彼と。

中学生の時、つきあっていた…

っていうのかな?一緒に帰ったことも、手を繋いだこともなかったけど。今の子達には、あり得ないかもしれないけれど、手紙を書いてポストにいれて、そうやって気持ちのやり取りしていた。友達のこと、水泳大会のこと、時々は私のお陰で学校に行くの楽しくなった…って、書いてくれていた。けど、学校では、なんにも喋れなかった。一瞬、目を合わすことさえも。目さえあわなければ、遠くから後ろ姿を見つけるだけで幸せだった。逆に手紙のやり取りをしていることで、2人だけの秘密を持ったような、特別な存在になっていたような気がする。

でも、リアルな付き合いを、上手に出来なかったから、長くは続かなかったよね。子供だったのかな。

不思議なのは、それでも、その後も時々、彼が私のストーリーの中でキーマンとして出てくるの。事実、アラフィフとなった今でも、絶対に忘れられない人に。今も好き…とかって、わけじゃないけれど、私の深いところに、ずっと棲んでいる。

別々の高校で高校生になった時、突然、「会いたい」って連絡してきたことがあった。正直「今日?今?」みたいなタイミング。若干、あわあわしていたら、「今日、なんの日?」って。その日は、私の誕生日だった。彼は、プレゼントを届けたくて、想定外の行動をしてくれた。

とはいっても、完全な美談ではなく、後々、聞いた話では、当時、彼女がいたらしい。それでも、彼の中に特別な存在として、私がいたとするなら、無罪ではないものの、重罪ではなくていいか…という気も。私も高校生らしく、好きな先輩がいて…と、言ったことも。

そんな微妙な距離感を経て、高校卒業前に通っていた教習所で再開。幼なすぎる付き合い方しか出来なかった頃よりは、少しだけ大人になって、会いたいって思えるようになっていた。あの頃から、ずっと私のことだけを一途に…ってわけではないけど、それでも、こんな風に思い続けてくれる人は、いないんじゃないかって…ようやく。そうして始まった日が、3月28日。

それからの私達は、今までの時間を取り戻すように、たくさん会った。彼は、県外の専門学校への進学が決まっていたので、この限られた時間が愛おしかった。遠距離程ではなかったけど、しいて言えば、中距離恋愛?彼も、まめに地元へ帰ってきてくれたし、私も慣れない電車を乗り継いで、彼に会いに行ったりもした。

あの頃、私はなんにも知らなかったんだな。彼が教えてくれること、連れて行ってくれるところ、その全てが楽しくて仕方がなかった。彼は、車やバイクが大好きで、そういう話もたくさんしてくれた。一度だけだけど、中型バイクの後ろに乗せてくれた。不謹慎だけど、このまま事故っちゃって、死んじゃっても一緒ならいいかな…って思うくらい。気付けば彼のことが、大好きになっていた。こんなに、好きなのに、言葉にするのは、とても苦手だった私。好き…とか、会いたい…とか、もっと一緒にいたい…とか、なんにも言えなかった。言えなかったけど、全部、彼はわかっていたよ。親に怒られるから、もう帰らなくちゃいけない…も言わなくても、ちゃんとわかってくれて、時間には送り届けてくれた。

19歳の私は、この時、確信していたよ。この時間は、特別だって。一生、忘れないだろうって。ずっと、一緒にいられるかはわからないけれど、それでも、本能的に、この大切な時間を、ちゃんと残しておきたいと思ったのかな。ある提案をした。

30歳になった、つきあった記念日に、2人が卒業した中学で会おうよ。その時に、一緒に居ても、居なくても…って。

残念ながら、30歳になった時、2人は一緒に居なかった。19歳の時に、交わした約束は果たされる?

私は、別の人と結婚して、次女の出産間近だった。約束の時間が夜だったということもあり、行くことにも躊躇していたし、10年以上前に当時の彼女と交わした約束を覚えていて、来てくれるのか?風の噂では、彼も結婚していて、子供がいることもわかっていたし。

彼との共通の友達に、お願いをした。私は、今、こんな状況で約束を守れないのだけれど、彼にこの手紙を届けてくれないか…って。もしかしたら、来ないかもしれないけれど…って。手紙には、行かれない事情や、今の私の暮らしや、彼と出会えてほんとによかったってことや、ずっと忘れないだろうってことなんかを、書いた気がする。

友達が教えてくれた。

彼、来たよ。手紙、渡したよ…って。

本当に、来てくれたんだ。ありがとう、ありがとう。その時にね、この先も、このことを支えに生きていけそうな気がした。あらためて、いい時間を過ごすことが出来たんだと。ずっと一緒に、居ることは出来なかったけど、君のお陰で私は、幸せだった。


100年経っても、忘れない。


何かの偶然で、この文書を彼が見つけたら、私だと気付いてくれるかな。結局、いつまでも言葉に出来ない私。今さら、言葉にして伝えることもないけれど。

でも、君との思い出を、言葉に、文章に残しておきたいな…と、だいぶ時間が経った今でも、思うの。

少しづつ、あの頃を書き記してもいいですか?

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