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木を伐採するのに適した時期 新月伐採をどう思いますか?

オーストリアには「新月の頃に伐った木は虫がつかなくて、材が長持ちする」という古い言い伝えがあるそうです。

木の伐採には適した時期と月相があり、最適なのは冬の新月または下弦の月。このような時節に木を伐り出すことを新月伐採と言います。

春夏は緑に茂り、秋冬は葉を落とすといった成長サイクルからも、木を伐り出したときの季節が木材に影響するというのは、なんとなく理解できますが、月相が製材後の木材の質に影響するというのはいかがなものでしょう。

クリスマスのミサの日に木を伐って家を建てると、その家は十倍も長持ちし
聖ファビアンの日や聖セバスチャンの日に伐ると、木から樹液が流れ出す

質の高い樹木を、正しく選ばれた日に伐採し、しかるべく貯蔵、乾燥、加工すれば最上の木材になる。
このような信念を行動に移した方が、オーストリア、ザルツブルク生まれのエルヴィン・トーマ氏です。

伐採する樹木の選定はもとより、伐採の時期、貯蔵などにこだわり、さらに化学薬品を一切使わずに加工する建材(木質パネル)を開発。

ピュアウッドと名付けられたこの木質パネルは、板の木目を水平、垂直、対角線といったように交差させて幾層にも組み合わせて構成するのですが、板の固定に接着剤を使いません。板には固定用の穴が開けられていて、そこに完全に乾燥させた固い木製のダボを差し込みます。すると、ダボが周囲の水分を吸収して膨張、板同士がしっかりと組み合わさるそうです。

このように創られた木質建材は化学物質などを含まず健康的で、強度も高く、防火・耐火性 断熱性能に優れていて、各種の外部テストにも合格。
実は目がぎっしり詰まった密な木材は燃えにくく、また燃える際にも長い時間がかかるため、良材であればコンクリート材よりも耐火能力が高いとか…

ちなみに、トーマ家が家族ぐるみでお付き合いのある農家の400年も前に建てられた母屋には、木製の煙突があるそうです。

環境問題の一環となるのでしょうが、1980-90年代にはシックハウス症候群などが顕在化。
90年代といえば、ドイツでは森の死現象も起こるなど、森林や環境に対する関心が高まっていった頃です。

日本でもこのような環境や木材への思いに共感した方々が、この建材で住宅や施設を建てています。

自然の住まい株式会社

伝承や習慣、人の世界や認識を超えるものに関しては、常に合理的、科学的に確証が取れるものでもありません。
但し、経験則などからより良い効果が得られるのであれば、それを取り入れることを悪いこととは思いません。

月相を考慮した生産活動というと、ルドルフ・シュタイナーのバイオダイナミック農法を連想します。

バイオダイナミック農法:人智学者のルドルフ・シュタイナーによって提唱された有機農法・自然農法の一つ。化学肥料や農薬を使わず、太陽の動きや月の満ち欠けといった天体のリズムと作物を調和させ播種、栽培、収穫などの農作業を行います。

シュタイナーの思想や方法論はとても興味深く、共鳴する部分も多いのですが、すべてを受け入れ、取り込むことには疑問や抵抗を感じることがあります。

何れにせよ、言い伝えの時代と現代ではとても多くのものが変わってしまいました。
温暖化や気候変動だけでなく、急激に伸びた人の寿命や目まぐるしく変化する生活様式など、20世紀以降、加速して移り変わっていく現状を簡単に昔と比べることはできません。
とは言え、廃れること無く長く言い伝えられていることには、何らかの根拠や理由があるのではないでしょうか。

新月伐採に関しては、効果があるとも全くないとも言われています。
住宅の建築というものは、ほとんどの方にとって生涯に一度あるかないか… しかも出来上がれば、多くの時間を過ごす、かけがえのない生活の場となります。
であれば、共感できるものにとことんこだわるのも良いでしょうし、不合理だったり正当な価格でないと思うものを選ばないというのも当然だと思います。

木材や建築にこだわらず、先ず、一つの思想として触れてみて、気に入った箇所があればそれを留めておけばそれで良いのではないでしょうか。
盲信でも拒絶でもなく一つの有り様として受け止め、自分なりに解釈し適用していけば、きっと、自己の世界は広がっていくと思います。

参考文献:
木とつきあう智恵     
エルヴィン・トーマ 著

2022年7月7日 小暑

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