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小説 桜ノ宮 あとがき

緊急事態宣言が出される少し前に、大阪環状線に乗った。

大阪駅から目的地の京橋へ行く間、車窓からは雑多な街や腐った青汁のような川を縫うように桜が咲き始めているのが見えた。

何となくその美と汚さの混じったさまを見て、このあたりを舞台に小説を書いてみたいと思ったのが始まりだった。

最初は、多くの人が大好きな不倫ものを書くつもりだった。

しかし、私自身が不倫に興味がなかったので、前から書いてみたかった探偵ものへと変更した。

ついでに前から書いてみたかった宗教も取り入れてみた。これに関してはかなり雑になってしまったが、カルト宗教というものは、そもそもトンチキかつインチキであるものなので、設定としてはこれでいいかなと思っている。

宗教に性を絡ませたのは、私の中でその2つは1セットになっているからである。

中学生から大学生にかけて好きでよく観ていた伊丹十三監督作品に影響されているからだと思う。

「桜ノ宮」は私にとって一つの挑戦でもあった。

私は齢40半ばに差し掛かろうとしているが、大人が主人公である話を書いたことが無かったのだ。

いびつであってもカッコ悪くても、この作品を仕上げるのだと心に決めていた。
また、プロットや人物について最初から決めるのをやめ、いきあたりばったりで書くことにした。
「今」という想像もしなかった世界を書くには、そのほうがより面白くなるかもしれないと思ったから。

ただ、反省点はいくつかあり、特に、㉙で広季が妻の陰毛を剃り落とすところは描写が細かくては下品になりかねず、思案の末、あまり味わいのない場面になってしまった。

「変態」には「知性」が必要という言葉に縛られていたのが理由だが、結果、そのようにはならなかったので、ここもカッコ悪くていいから思う存分やればよかったと省みている。

大人の話を初めて書いてわかったのは、子供を主人公にしたものよりもとても楽に進められるということ。

何でもっと早く書かなかったのだろうと思う。

目の前に広がるまだ知らぬ世界へ今、私は胸を躍らせている。

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