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ミニ同窓会

ミニ同窓会でもしようって声を掛けた時、
割とすぐに「いいね!」って返事がきたから、
あ、意外と私と会う気あるんだって
密かに気を良くしたのは事実。

日にちだけ決めたところで、
お互い仕事に戻らなくちゃいけなくなって、
お店と、誰を呼ぶかはまた追々ってなったけど、
「久々に会いたいし、最優先させるわ」
という彼の思わせ振りな最後の一言は、
私の胸のザワザワを冗長させた。

大学時代に付き合ってた頃から20年は経つ。
別れてからも一友達としてSNSでは繋がったし、
お互い気にせず写真も載せてたのもあって、
これと言って特別に久し振り感はないんだけど、
実際に会って話すとなると
どんな会話になるんだろう?と沢山妄想した。
移動中、お風呂の中、
本を読んでる途中、ベッドに入った後。



そして妄想、し過ぎた。
何せ妄想は自由だから。



私の頭の中で、
五反田からすぐのダイニングバーに、
彼は少し遅れてお店に入ってきた。
わ〜!久し振り〜!手を振る私に、
照れくさそうな笑みで、久し振りと返す彼。
決して内気ではないけれど、
慣れるまで少し時間がかかるのは相変わらず。
「ユウと加恵ちゃんは?」
「2人とも仕事で遅れるって」
「そっか。あ、とりあえず生にしよっかな。」



恥ずかしさを誤魔化す為にも、
まずはさっさと二人で乾杯して、
改めて「久し振りだよね」と繰り返す。
だけど時間と共に一通りの近況報告も終わり、
アルコールもいい具合に入ってくるから、
彼のシャイさもほとんど消えていて、
自然と昔の話に入っていく。



学生時代、車で軽井沢まで行ったよねとか、
あのレストランの店員にムカついたねとか、
ぶっちゃけあの映画どうだった?とか、
喧嘩した時、飛び出してどこ行ったとか、
あれこれ思い出しながら30分以上。
付き合ってたの短期間だったくせに、
話は尽きない。



あの頃を思い出して話し始めるだけで、
今この空間だけ、距離がグッと縮まっている。
当時はもちろんいい事ばかりじゃなかったけど、
全てプラスの思い出に変換される不思議。




ねぇ。
私と別れる時さ、もういいや、別れよう、
もう別れたいって思った?


んー。どうだったかなぁ。
はっきりと覚えてないけど、
多分、ちょっと疲れたとこはあったかも。


あはは、そんな遠慮して言わなくていいよ。
私、ワガママ過ぎたもんね。
分かるよ、今の私が当時の私を見たら引くもん。
どうしようもなかったなー、あの頃。
自分のこと、女王だと思ってたもんね。


でも、ちぃちゃんのそれが良かったんじゃん。
正直あんなに疲れ果てた恋愛ないけどさ、
ちぃちゃんみたいな人、未だに居ないなぁ。
旦那さん、ちぃちゃん扱えるの凄いよね。笑


何それ。笑


でも間違いなく、
ちぃちゃんと付き合えたの、いい思い出。
はちゃめちゃなとこ、好きだったのかも。
…アレも、はちゃめちゃで楽しかった。


アレもはちゃめちゃって。笑笑


ちぃちゃんみたいな奔放な子、
僕はなかなか出逢えないタイプ。


奥さん、違うんだ?
じゃぁ、私みたいなイイ女、
失って勿体なかったね。


あのワガママさを思い出したら、
イイ女って言葉は分からないけど。笑
でも、うん、そう思う、ホント。



あの頃、沢山した。
若かったのかな。
ばっかみたいに、朝晩してた。
だから、その話は絶対に、
酔いが回ってきた頃に出ると確信してた。



結局、ユウと加恵ちゃんは
それぞれ仕事で来られないと連絡があった。
タイミング良過ぎる作り話みたいに、
改めて私たちは完全に二人だけの席になった。

ちぃちゃん。
…このあと行かない?
って言ったら、…怒る?


彼は昔から、気不味いことは
女の子みたいな上目遣いで話す時がある。


私は特に驚くこともなく、
小さくフフッと笑って、その提案を受け入れる。
だって、今日会う前から、
むしろミニ同窓会しよって話した時から、
ずっと、そうなると思っていたし、
多分、そう望んでた。



彼は、忘れられない特別な人ではない。
ずっと前に別れた後も、
私は沢山の人と付き合ってきたし、
未練なんてものもほぼゼロだったんだけど。


それでも、
お互いのカラダを知ってる元カレの存在は、
ふとした退屈な毎日に、時に刺激になる。
特に失えないモノがある似た者同士の私たちは
リスクが同じ分、危険までは冒さない。
そして多分、求めるレベルは完全一致している。



だから。



私の妄想は、
きっと、
現実になる。

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