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とても大事な友達の結婚を祝える自信が無かった。

とても心の距離の近い大事な友人が結婚した。
10年以上の付き合いの中で、彼女と私はお互いの恋愛経歴のほぼすべてを把握している。

今日友人の旦那として紹介されていた彼との出逢いの瞬間も、初めてのけんかも、結婚するまでの信頼関係を築くきっかけとなった時間も、知っている。
旦那くんは年下で、
私の友人を「世界一可愛い。世界一美人」と褒め、いつものろけを聞かせてくれるとてもいいやつだ。
今日もウェディングフォトを着た彼女の写真を何枚も見せながら、「似合うでしょう。可愛いでしょう」と私に自慢した。

友人は、いつも髪の毛の一部を青く染めている。
フリーランスで仕事をしている芸術肌の彼女のトレードマークが、今日だけはいわゆる”サムシング・ブルー”に見えた。

私は今日、この結婚パーティーに大寝坊する夢を見て目覚めた。
眠りも浅く肌のコンディションも最悪だった。
久々に会う友人がたくさんいる、私にとっても特別な日だったのに。

理由は分かっているし、その理由は最低だ。


私には4年以上付き合っている彼氏がいる。

数か月前。
彼は、私との結婚の可能性を曖昧に否定した。


好きな人と将来を考え、同棲し、結婚する。
そんな未来を自分勝手に想像していた私はバカだったのだろうか。
彼の曖昧な否定は、とてもショックだった。
これまでも、何度か同棲したい気持ちや結婚の希望はやんわりと伝えていた。
”やんわりと”が良くなかったのかな。

「同棲とか、結婚とか、したいって思う?私はしたいと思ってるよ」

出来る限り明るく、暗い話にならず、圧をかけないように伝えた。
彼の答えはとても残酷だった。

「普通」

その場では軽く受け止めたものの、この「普通」は曖昧な否定だと気が付くのにそう時間はかからなかった。

彼はきっと、結婚願望が無い。
本当は、ずっと前から分かっていた。
それでも、彼が好きだから。
一緒にいたいから。
傷つきたくないから。
その事実は、見て見ぬふりをし続けて4年が経った。

それでも、私を一方的に傷つけないために、彼なりに言葉を選んでくれた結果が「普通」だ。
その優しさにどうしようもなく、ムカついた。

その否定の数日後、彼は高校の友人の結婚式に出席していた。
楽し気な写真を見せて貰った。
少しおどけた彼の笑顔。
彼の友人である新郎の男性と、その隣で可愛らしい笑顔を浮かべる新婦の女性。明るく快活そうな可愛い子だ。
とても素敵な写真だった。幸せそうだった。

(私は、こうはなれないんだ)

羨望でも、嫉妬でもなく、ただただその事実を突き付けられて、虚しくなった。


結婚したサムシング・ブルーの彼女は、今まで私が抱えてきた悲しみも、辛さも、虚しさも、知っている。
彼女は、いつも、ただただ話を聞いて、頷いて、私の虚しさに寄り添って。
何も言わないことを選ぶ。
別れな、でも、
大丈夫、でも、なく。
ただ、話を聞いて、私の虚しさに共感しながら、素直な言葉で私を諭す。
きっと、今回のことも彼女はいつものように聞いてくれるんだろう。きっと私は、いつか、いつものように、彼女に話してしまう。

昨日の夜。

私は彼女の結婚パーティーを楽しめる自信がなかった。
見ず知らずの新婦の笑顔にあんな虚しさを抱いてしまった自分が、大切な友人の幸せな笑顔や、大事な時間を共有するのに十分な心持でいられるのか。
彼女の幸せを心から願っている気持ちの傍らで、悲しみが湧き上がってしまったらどうしよう。
大好きな友人を120%の祝福の気持ちで抱き締めたいのに、その自信がなかった。
私は、私の弱さも、どこまでも自分本位な性格も、弱点も、よく知っているから、怖かった。

でも、そんな心配は要らなかった。
彼女の笑顔、そして、彼女を愛する旦那くんが「可愛いでしょう」「美人でしょう」と彼女を全力で愛する想いでいっぱいの会場に着いた瞬間。

私の心は、友人への愛で溢れた。
パーティーは楽しく、心から笑い、何度も何度もお腹を抱えた。
久々に会う友人たちと懐かしい話に花を咲かせ、友人の大切な友人は当たり前に皆いい人でとてもとても大事な時間を過ごすことが出来た。


私は、友人の旦那くんが私に向かって友人を褒め、愛し、いっぱいの愛を自慢してくる時間がとても好きだ。

大好きな友達が、とってもとっても愛され、とってもとっても大事にされている。
それを感じる度に心が癒され、満ちていく。

きっと、彼女も同じなのだと思う。

私の虚しさに寄り添ってくれる時。
きっと彼女も私の虚しさを、感じている。

あの虚しさは、今も私の心を巣食っている。
心の穴は埋まっていないし、結婚や同棲、将来と、そして付き合っている恋人ときちんと向き合わない限りは虚しさから解放されることは、きっとない。

でも、今のところ。
私には大切な友人と、その友人を愛する旦那くんがいて。
他にも笑顔と楽しい時間を何度も何度も共有できる大事な人達がたくさんいる。
いつか大事に向き合う人が出来たのなら。
今私を大事にしてくれる人たちが、私が大事にされていることが分かるくらい幸せになろう。


サムシング・ブルーの友人へ
あなたの幸せが、心から嬉しいよ。
これからも大事に愛されてね。
私もあなたのことが大好きよ。
結婚おめでとう。


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