2023年4月17日 小松庵銀座 森の時間|画家・梅﨑弘さん個展「光と風」オープニング&トークショー
4月17日(月)銀座ギャラリータイム「森の時間」は、画家の梅﨑弘さんをお招きして個展「光と風」のオープニングパーティー&トークイベントを開催しました。
店内は見渡すかぎり「青」の世界で包まれていた!あまりに魅了され、お蕎麦屋さんにいることを忘れてしまうほどの空間。そこに飾られていたのは「光と風」をテーマにした梅﨑弘さんのヨーロッパの作品の数々でした。6月4日まで開催予定です。
幻想的なブルーの絵から始まった小松庵銀座ギャラリー
3年前コロナ禍の中、銀座ギャラリーは小松庵銀座のアテンダント佐野由美子さんが1枚のブルーの絵に惹かれるようにある画廊へ入ったことから始まります。ちょうど梅﨑弘さんの個展が開催されていて、そこで出会ったアートディレクターの風戸重利さん、そして小松孝至社長へと繋がり、現在の小松庵総本家 銀座ギャラリーが始まりました。
そういった偶然と奇跡的な出会いが結びついて、お蕎麦屋さんに併設する「銀座ギャラリー」が出来ました。そして今回、銀座ギャラリーで初めて梅﨑弘さんの個展が実現しました。
梅﨑さんが画家の道を探すために仕事を辞めて、すべての家財を整理し、3歳の息子と妻を連れてヨーロッパへ向かったのは35年ほど前のこと。その当時を思い出しながら、今回は画家としての決意やポルトガルとの出会いなどを話してくれました。
北極圏、南はモロッコまで野宿や居候をしながらヨーロッパ各地で過ごした6年間。なかでも大きな学びの場となったのはルクセンブルクで働いたこと。「ルクセンブルク王室百年展」の準備のため、100年前の王室を再現するという仕事に携わりました。半年間、パリ大学の教授なども名を連ねるようなインターナショナルチームの一人としてアクリル工房で勤務。総勢100人のスタッフのうち絵画担当は約10人でしたが、日本人は梅﨑さんだけだったそうです。
「職人が作った6畳ほどある大理石風の下地に、王冠の版画をアクリルで立体的に仕上げていきました。結果、日本人らしい仕事をしたと高い評価を得ましたが、作業中は恐怖の日々でした」としみじみ振り返る梅﨑さん。いつも脳裏から離れなかったのは「作品の完成はおまえが筆を置いたときだ」という絵描きでもあった社長の言葉。それに、たった一人の日本人が描いている姿に興味を持たれ、ずっと視線を集めるなかでの作業は想像を超えるプレッシャーの連続でした。当初は1、2週間で仕上げるつもりが、やっと筆を置けたのは1ケ月後。しかし、辛く苦しかったこの経験が写実や物の見方を変えてくれたとのこと。日本人の技術力を試されたともいえる濃密な時間を過ごしたルクセンブルクでは多くの気づきがありました。
そして、画家人生を変えるほどの光景に遭遇したのがポルトガルです。偶然、山間の秘境といわれたサンジョアンデカンポを訪れたのは、数年に一度の渇水期でした。湖底に佇むビラリーニョという村が夏枯れの湖に現れていたのです。その姿に衝撃を受けて以来、ポルトガルとのご縁はつながり、深淵なる「青」に魅せられ夢中で絵を描き続けて今があります。
また、思いがけず個展を開催することになったのもポルトガルでのこと。画家の友人に描きためた絵を見せたことが発端でしたが、無名で、お金もない、後ろ盾もない状況でのスポンサー探しには一苦労。友人のアドバイスもあり、現地の大手日本企業に勇気を出して話を持ちかけるも断れてばかり。精神的にもかなり追い詰められましたが、どうにか1社からの支援が決定。「開催に至るまでは、ヒヤヒヤするような予想外の展開もありましたが結果オーライ!今でも企業の担当者名はよく覚えています(笑)個展では絵も数点、ご購入いただきました」
「青」の世界に没頭するきっかけを見つけ、また個展開催に関わる人々との出会いがあったポルトガルは、梅﨑さんを画家として育ててくれた場であったようです。
「6年の歳月を経て帰国。9歳になった息子を日本人として育てたい、という思いからでした。日本がヨーロッパやアメリカから評価が高い理由は、長い歴史や文化があり、現代科学や物づくりに長けているだけではない気がするのです。音、におい、触感など五感を刺激するものが背景にあってこそ、はじめて文化は伝わっていくのではないでしょうか」
日本を離れ、多くの人の生き様や考え方に触れてきた梅﨑さんの経験に裏づけられるようなその言葉が心に残りました。
大勢の参加者が集い、ワインを飲みながらのトークイベントは終始とても和やかなムードでした。参加者のなかにはベルギー大使館で梅﨑さんと出会ったという、ホルン奏者の飯島さゆりさんもいらっしゃいました。来月はそのご縁あるお仲間で新たなイベントも開催されるのだとか。こちらも乞うご期待!
PROFILE
梅﨑弘(うめざきひろし)
1955年 福岡県大牟田市に生まれる。
1981~1982年 第一回目渡欧。
1989~1995年 第二回目渡欧。
1990年 ルクセンブルク王室百年展、壁画 舞台美術などのアートプロジェクト参加
■EXHIBITION■
2023・個展 ギャラリーエスプリ(大牟田/福岡)
2022・個展 ギャラリー風(福岡/福岡) 2019開催
2018・個展 ギャラリー・オカベ(銀座/東京)
2004 ,2006, 2008, 2010, 2012, 2013, 2014, 2016, 2018, 2020企画展開催
2017・個展 宮部の森美術館 (大牟田/福岡)2014, 2015, 2016開催
・Gois国際交流作家展に招待出品(ゴイシュ/ポルトガル)1999年より毎年
・フランス・ベルギー国際交流芸術祭(ブルージュ/ベルギー
2013・アートinレジデンス・エストニア EUジャパン財団協賛(5~9月)
・個展 エストニア国立図書館ギャラリー(タリン) エストニア国立近代美術館招聘
・GalleryBIJ Krepel Salon Europeen Aux Pays-Bas A Klarenbeek(オランダ)
・LE MÉRITE ET DÉVOUEMENT FRANÇAIS銀賞受賞
2012・第一回 炭都国際交流芸術祭in大牟田 実行委員長(以降毎年)
後援:朝日・読売・毎日・西日本・NHK福岡
・九州青年美術展審査員(以降毎年)
2010・個展 ギャラリー・キクオカ(名古屋/愛知)
2009・個展 読売新聞西部本社・エントランスホール(福岡市)
後援 在日ポルトガル大使館
2007・個展 福岡市美術館 特別展示室B (福岡市/福岡県)
後援:在日ポルトガル大使館/福岡県/毎日/読売/西日本
2004・個展 あすなろホール(下諏訪町/長野県)
後援:ポルトガル大使館/下諏訪町/信濃毎日新聞社/長野日報社
2002・個展 ポルトガル大使館ギャラリー(東京) 主催:ポルトガル大使
2001・国際交流作家選抜展に招待出品(ビゴー/スペイン)
1999・リスボン市現代アート50人国際交流作家展に招待出品(ポルトガル)
■COLLECTION■
○Portugal:ORIENT財団/青少年財団/AGUA美術館/ビラリーニョ博物館/他
○France:クルクリ市 ○Luxembourg:在ルクセンブルク 日本大使館
○Belgium:(株)丸紅ベルギー 〇Estonia:在エストニア日本大使館 ○Venezuela
〇日本:ホテル・ウエルビューかごしま/R&RCorporation/東急建設/他多数収蔵
小松庵総本家 銀座 森の時間(平日16:00〜17:00)は展示してある作品をじっくりご鑑賞いただける、ギャラリー・タイムです。(この時間はお食事の提供はしておりません。)
今後も不定期でワークショップやトークショーなど様々なイベントを企画していきます。お気軽にご参加ください。
小松庵総本家 銀座(Tel. 03-6264-5109)
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