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「文豪」について、改めて考える活動提案

なんで「文豪」?

授業で小説家を扱うとき、「文豪」と紹介することが多々あります。

マンガにも「文豪ストレイドッグス」があるように、
「文豪」は割と一般的な言葉になっていると思います。

「文豪」って聞くと、なんとなく「すごい人なんだなぁ」というイメージもわくかと思います。

ただ、改めて考えたときに、「文豪」って、なんなんだろう?
なんでこの人は「文豪」と呼ばれているんだろう?

そんな疑問が湧いてきました。

ここでは、「文豪」について調べたこと、やってみたい活動について書いていきます。

はっきりした答えはなく…。

まずは「文豪」について調べてみました。

結論、はっきりしません。

広辞苑で「文豪」と引いてみたら、次のように解説されています。

文章・文学にぬきんでている人。文章・文学の大家。

『広辞苑』より

うん、イメージ通りって感じですね。

じゃあ、どんな人が「文豪」なのでしょうか?

芥川龍之介、森鴎外、太宰治、夏目漱石…

教科書にもよく載っている面々が挙がるかと思いますが、ただ、
じゃあなんで「文豪」なの?
どうなったら「文豪」って呼ばれるようになるの?

と思って調べてみたのですが、
はっきりした答えは見つけられませんでした。

何が、どうすごいのか?

文豪と呼ばれる所以って、結局何なんだろう…。

広辞苑の定義に立ち戻ると、「文章にぬきんでている」とあります。

つまり、表現力がすごいってこと…?

確かに、教科書に載るからには優れた小説、すなわち優れた文章なはず。

日常的に私たちが使いこなしている文章より優れているはず。

ということで、次の活動を考えてみました。

表現してみる?

文豪が文豪と呼ばれる所以を求めて。
こんな活動を設定してみました。

夏目漱石『こゝろ』を用いています。
(本文未読での活動を想定しています。)

Q、次のシチュエーションを読んで、最後の問いに答えてください。

登場人物は、Aくん、Bくん、Cさんの3人。友人同士です。
AくんはCさんのことが好きですが、誰にも言えずにいました。
そんなある日、BくんがAくんにある秘密を打ち明けます。
B「実は僕、Cさんのことが好きなんだ」
衝撃を受けるAくん。

問、この時のAくんの様子を描写してみてください。

穴埋め形式にすると答えやすいかな?と思います。

以下に当てはまるように、Aくんの様子を描写してみてください。

Bくんは、思いもよらないことを言った。
「実は僕、Cさんのことが好きなんだ」

Aくんは、~~~~~~~~。

もちろん、「Aくんは」で始まらなくても大丈夫。

ポイントは、「Aくんが衝撃を受けている」描写にすること。

「実は僕もCさん好きなんだよね」などとその後の行動を想像して答えるのではなくて、ここでのAくんの心理描写を書いてみてほしいところです。

想定される描写を挙げてみます。

・びっくりした
・衝撃的すぎた
・え?!と思った

まずは直接的なものが挙がるかなと思います。

そこから一歩踏み込んでみます。

「ような」を用いた直喩、または隠喩で表現できますか?

友人が、自分と同じ人を好きだった。その衝撃を表す比喩表現。

どうでしょう?

ここはかなり苦戦するかなと思います。

ちなみに私が思いついたのは、
「雷で打たれたような」
(これくらいしか浮かびませんでした…)

なかなか出てこない子もいると思います。

思いつかなくても、ここで「難しいなぁ」と実感してもらうことが重要かな、と思います。

一旦、活動はここまで。

夏目漱石はどう描いているか

上記の活動を行ったあとに、『こゝろ』を読んでいきます。

以下のシーンが出てきたときに、
なんとなく「文豪ってそういうこと?」と思えたらいいのかな、と思ってます。

 彼の口元をちょっと眺めた時、私はまた何か出て来るなとすぐ疳付(かんづ)いたのですが、それがはたして何の準備なのか、私の予覚はまるでなかったのです。
 だから驚いたのです。
 彼の重々しい口から、彼のお嬢さんに対する切ない恋を打ち明けられた時の私を想像してみて下さい。
 私は彼の魔法棒のために一度に化石されたようなものです。
 
口をもぐもぐさせる働きさえ、私にはなくなってしまったのです。

夏目漱石『こゝろ』

教科書によく載っている、有名な場面です。

彼=K、私=先生
ですよね。

そして太字の部分。
Kの告白に言葉を失い、硬直してしまった「私」の様子が描写されています。

このシーン、前述の活動のシチュエーションと全く同じですよね。

「彼の魔法棒のために一度に化石されたようなもの」

友人が、自分と同じ人を好きだった。それを打ち明けられた時の衝撃。

こんな表現ができるところ。それが「文豪」と呼ばれる所以なのかな、なんて思ったり。

だから夏目漱石は「文豪」なのかな、と思ったり。

どうでしょう?

前述の活動で自分が書いてみた表現と比べてみて、この表現、どうでしょう?

ここの表現について感想を書いてみたり、
もっといい表現が思いついたら、書いてみて!なんて促してみたり。

他にも、いたるところに表現力がすごいなって思う箇所もあると思うんです。
それを抜き出してみたり。

普段なんとなしに読んでいる教科書の文章も、ちょっと違った視点で楽しめるかもしれません。

ちなみに、『こゝろ』の描写で私が一番好きな表現は、
「鉛のような飯を食いました」です。

うわぁぁ、となるシーンで出てくる表現です。
(文豪とは程遠すぎる表現力…)

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