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【連載】家族会議『父の不満と理想編』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まった家族会議の全記録!録音記録をもとに連載で書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議 1日目#2|父の不満と理想
わが家が抱えている問題点は大きくふたつ。
まず、父と母が姉の気持ちがわからず傷つける発言をしてしまうこと。それから、夫婦仲の問題だ。夫婦間でのコミュニケーションがとれないから、家族に問題が起きたとき協力して解決できない。
だから家族会議をやるにあたっては、夫婦間のわだかまりを解消することも目的のひとつとなっている。結婚してから今まで、夫として父親として、何を思い何を考えてきたのか、引き続き父に話してもらった。
父:結婚当初からの話をするとね、えーっと、結婚しましたと。おかあさんとね。で、これね、言っちゃいけないことを言ってるんだ、お父さんは。
わたし:お母さんに対して?
父:うん。「俺はどういう女性とでも上手いことつきあえるから大丈夫だよ」と。
わたし:それって、結婚する前ってこと?
父:結婚してからだね。その発言の真意は「心配せんでもええよ」ということを伝えたかったんだけども、はたしてそうとってるかな?と…。
父は岩手県出身だ。だけど仕事で関西に住んでいたことがあるから、こうしてときどき関西弁が混じる。
「おぼえてる?」と父が問いかけると、「おぼえてるよ。今言われて思い出したって感じ。」と母。平気を装ってるけどちょっと不機嫌そう。
わたし:それって子供が生まれる前ってこと?
父:そうそうそう。生まれる前かな。
わたし:それは、「安心していいよ」っていう意味だったんだね。
父:でもそう伝わってないんじゃないかなって感じが…
わたし:うーん、確かにちょっと、伝わりづらい言葉だね。
父:ま、そういうのがあったと。それから何が読み取れるかっていうと、自分が言って自分が感じてるんだけど、どれだけ・・・えー・・・なんていうのかな、高飛車っていうか、上から目線っていうか、な男なんだろうと、いう風なのは、そのころあまりわかんなかったんだけど、優しく言ったつもりなんだけど、あとから考えてみるに、あとからって言ってもだいぶあとだな。どれだけ上から目線で言ってんのかなと感じます。
父の上から目線は、数年前から指摘している問題点だ。「どういう女性とでもつきあえる」っていうのは、確かに上から目線な発言ともとれる。だけど、わたしから言わせてもらうと上から目線というよりただの勘違い男だ。
そのときの父の意識として、母を上から見ていた感覚があったのだろう…とは思うけど、こうして「ちょっと嫌な気持ちにはなるけどそこまで気にしていない」ような事例を持ち出して反省したかのように見せかけるのが、父の得意技でもある。
父:で、お姉ちゃんが生まれて間もなくかな。おばあちゃん(母方)が来て。仕事、お父さんが帰ってくるの20時21時が定時なんだわ。そのころふつうだったわけ。遅いともっと遅くなる。そのときに「おばあちゃんが言ってたよ」ってお母さんから聞かされたのが、「お父さんほんとに仕事してんの?」と。
うーん、そうか。やっぱり、公務員を旦那に持った奥さんと、ちょっと考え方が違うんだなと。そうすると、わたしの嫁さんもそういう環境で育っているから、これ、ちょっとこっちの環境に慣れていただくのは容易なこっちゃないなと。というふうな考えを、そこで持ってました。
わたし:うーーーーーん…。この間、この言葉に傷ついたって言ってたよね?お父さん。
父:まぁ、ショックだった。
父は気持ちを言葉にするのが苦手だ。正確には、悲しみなどの弱い部分を出すことができない。とくに母に対して。
真面目に働いているのに「本当に仕事なの?」と言われるのはショックだろうし、ムカつきもしただろう。理解されないことに悲しくもなったのではないか。それを父は「環境に慣れてもらうのは容易ではないなと思った」などと、母に理解を示すような言葉に変換してしまう。
実際に母の生まれ育った環境と自分の環境が違うことを理解したならば、環境に慣れてもらえるように、自分のことや仕事のことを話せばよかった。だけど父は、ただ不満としてずっと抱え込んでいただけだ。
父は怒りの感情だけは、暴走するカタチで表面化する。傷ついたことや悲しかったことはひた隠しにするけど、怒りだけは瞬時にでてくる。怒鳴るというカタチで。
そういうとき、怒りの原因がわからないことが多かった。どこに埋まっているかわからない地雷を踏んでしまったかのように、突然爆発するからだ。今でこそ根本になにがあるのか分かるようになったけど、家族はずっと、それにビクビクして生きてきた。
こうして話してもらわなければ、父が何を思っていたのかわからない。家族会議をやる意味はこういうところにあると思う。
わたしはさらに父の語りを続けてもらった。
父:鹿島(転勤による引っ越し)に来て、なんだろうな。まぁ大阪の時に言ってたのは「友達がいっぱい遊びに来るような家庭をつくろうね」とは一応、お母さんに口では言ってて、おかあさんからも「そうだね」と。ま、そうだねと言うしかねえだろうけど、そういうふうに言われて、でも現実はそんな穏やかじゃなかった。
一回お客さんを呼んだんだよ。会社の人間を。そのときにお母さんは、いろいろ自分の能力をフル回転して作ってくれて、もてなしたんだわ。
で、そのとき、ものすごくありがたいんだけど。手厚く迎えてくれて。そのときの感想は…向こうも悪い気はしてないと思うんだわ。あんなに手厚くするとこどこもないもん。
たぶん、回数多くなったら疲れるんだろうな、と。
お父さんのイメージはフランクでいいなと。おおざっぱにただ来て、なんかあるもの出してっていう感じでいたんだけど、やっぱり、きっちりきっちり対応して、そしたらこれ、あんまりきっちりきっちりやられると、たびたび呼んだらまずいなっていうことで、呼びづらくなったというのがあったね。
母曰く、このとき「フランクでいいよ」などと言われもしなければ、どんな人が来るのかも聞かされていなかったという。父はイメージがあるなら言えばよかったし、母も聞けばよかった。関係性的に無理だったんだろうけど。
母としては、情報がない中で精一杯おもてなしをしたのだと思う。父に理想があったのはわかったけど、どうしても母の肩を持ちたくなるわたしがいる…。
ただ言えることは、圧倒的にコミュニケーションが足りない夫婦だということだ。
まぁ、批判をすると父は怒鳴りだすかだんまりを決め込むので、そのまま続けてもらうことにした。
父:あと仕事と絡んでんだけど、夜中に、鹿島って田舎だから、夜中に仕事が終わって泊まるとこがないって言われて、突然うちに泊めざるをえなくなっちゃって、突然夜中に会社の人間を泊めた。おかあさんは突然来られてびっくりしちゃって、これお母さんに対して申し訳なかったなと。
わたし:連絡もしなかったってこと?
父:そうそうそう。そういう思いはあったわ。あのときは、お母さんに連絡するっていうよりも、なんていうかな、仕事でトラブルが治ってホッとしたっていうか、ホッとして「この男をどうすんべ」っていうのを考えてたから、うちのことまで頭が回らないっていうのが正直なところだったんだけど、そういうのもあったと。
まぁ、父はそういう人だ。自分の一存でなんでも勝手に決める。母は母で、そんな父に従ってきたのだからありそうな話だと思った。父はさらに続ける。
父:あとは会社では、お正月か、あれは家族でいたときだな。鹿島神宮にお参りに行って、「今年は事故のないように」ということで、手をパンパンと叩く寸前にポケットベルが鳴ってさ。トラブル発生ですよ。あーやだなと思った途端にお父さんの頭は切り替わってね、「さ、戻るぞ」と戦闘モードだよ。嫌な思いさせたなと。いう感じがありますね。
だから、鹿島のときには本当に、まぁそのころは何も言ってなかったけれども、仕事のことではほんとに家庭を顧みずに、迷惑ばっかりかけたなと、そういう思いが非常にあります。これは正直なところそうです。
それで、こちらに来て(さらに転勤で引っ越し現在の住居へ)、なんていうか、鹿島のときよりは全然呼び出しも少ないし、そういう意味では穏やかなんだけど、厳しさは、なんていうの、お客さんとの厳しさは、そういう切った張ったじゃなくて、お金の面の厳しさ。責任持たせられてさ。そういうのがあったんで、ピリピリ感は相変わらずだったな。だから現役時代、全部家族に迷惑かけっぱなしだなと。
それで定年になってから、なんていうのかな、会社から離れてやってるとね。やっっっぱり今まで迷惑かけたなっていうのが全面に出てんだなーお父さんの頭の中に。
わたし:うんうん・・・
ただ家族としては、仕事のことで迷惑かけられたと思っていない。仕事が大変そうだとわかっていたから、邪魔しないようにしてきた。だから仕事を優先してもらうのは構わない(時と場合によるけど)のに、「仕事のことで迷惑をかけた」と勝手に反省し感傷に浸っている。
父としては、「仕事」という正当な理由を盾にして、文句を言わせたくないだけなのだ。
父:そうは、表現は出てないのかもしらんけれども。
わたし:うん。なにも言ってないけど?(笑)
父:あのー、気使うんだよ、みんなに。
わたし:うーーーーん
確かに定年後、家事やら何やらやりはじめた。べつに仕事のことを迷惑かけられたと思ってないし、母は母で家事は自分の役割として納得してやってきた。
わたしたちが父に求めているのは『対話』なのに、勝手に家事をやって、「手伝ってやっているのに感謝の言葉のひとつもない」と怒っているのが父なのだ。しかも家事の大半は今でも母がやっているのに、「俺ばっかり」とストレスをためている。
父の壮大な勘違いはさらに続く。
父:せめてもの罪滅ぼしだと思って、気をつかった生活をやっていると。
わたし:うーーん・・・(罪じゃないことに対して罪滅ぼししてるけどね)
父:それがまた、自分で気ぃつかって自分でストレスためてる感じなんだな。
わたし:うん・・・(それはわかってるんだね)
父:だからちょっと何か言われるとね、普段だったらワーッとなるところを、それをグーーッと押さえてやってると、自分が嫌になってくる。だんだんに。明らかにストレスだなっていうのがわかるような感じ。あと入院の時のやつも漏らしてるかな?
わたし:うん、お母さんに言われたこと?
父:うん。こっちにきてから入院の時に、お母さんからあのー、年休をとってきたかなんだか、とにかく、病院にきたから「病院代を請求するから」って言われて、あのときにはちょっと、まいったなと思ったけど、ま、一応それ払って…
わたし:払ったの?
父:払ったんです(怒)
母:ぜんぜん覚えてない。いくら払ったの?
父:2日分です。2日分って請求されたから。
母:あ、入院代(世話代)じゃなく会社を休んだ代金ね
入院する父に世話代を請求する母…。「それはさすがにないんじゃない?」と思った人は多いはず。まぁ、そうしないと気が収まらないほど、母はフラストレーションを抱えていたということなのだけど。
父の気持ちを思えば、当然ながら「やりすぎじゃない?」と思う。病気が見つかり入院するという不安なときに、妻からお金を請求されれば傷つくだろう。
そもそも、母がそういう行動に出たのは日ごろからストレスを抱えていたからだ。それを、相手が弱ったときに、ここぞとばかりにぶつけるようなものだ。気持ちはわからないではないが、本来ならその場その場で意見をすればいい。変なところで憂さを晴らすから余計にこじれるのだ。
父:で、その当時はそれでイライラしてたんだけど、そのあとに悪性リンパ腫が発生してね。これは俺「死ぬな」と思った。ほんとに。手術はまぁそこそこ、そこそこじゃなくてきれいに成功したんだろうけど、先生の説明聞いていると「なんでこんな細かいこと説明すんだろう」と。
ということは、ひょっとしたら俺の命「覚悟せよ」って言われてるような気がするわけよ。あのサイクルの短い、1週間単位の発生のあれだとか言われてさ。あのときいろいろ、ほんっとに毎晩そのことばっかり考えてたな。まぁ死ぬんだと思って。
そうはいっても退院して、通院で抗がん剤いろいろやって、まぁ今現在に至ってんだから。
とにかく死ぬんだって思ってる頃、そういったお母さんとの、なんていうか、死ぬ男がほんなことやったって無駄だから、ほんなのチャラにしようと、生死の方を考えたほうがいいなということでチャラにしたつもりなんだけど。
わたし:チャラっていうのは?
父:なしにしようと。
わたし:なしっていうのは?
父:なかったことにしよう。
わたし:なかったこと?ん?なにもトラブルがなかったってこと?
父:うん。だけど、今現在元気でいるとね、人間って欲が深いもんでチャラにできなくなってんだよな。お母さんってこういう人だとかさ、せっかくチャラにしようとしたのが。
わたし:あ。「おかあさんにムカついていた出来事をチャラにしてあげよう」ってこと?お父さんのなかで。
父:うん
わたし:…なるほど。
父:そういうことで、総合するとね、総合すると、とにかく一番最初に言った、プラスをちょっと上回るように努力するんだけど、なんていうのかな。まぁ一回こういう話を全部吐き出して、あのー、どうなるかわかんないんだけど、吐き出した結果で方向性が出ればいいんだけども、願わくば、それを清算しなおしたうえでもう一回結婚し直したいね。お父さんの気持ちとしては、お母さんと。もう一回ゼロからやり直したい気がする。
わたし:うーーーん・・・(無理があるだろ)
父:というのが現状です。大雑把に言うと。
わたし:うん。うーーーん・・・。でもさ、まぁ、つまりお父さんが気に病んでいる失敗っていうのは、今言ってきたようなことなのかな?
父:うん、そっから派生する、あれだよね。
わたし:うん、うんうん・・・
父:その、おかあさんをそういうふうに、ネガティブでとらえちまってるから。そのネガティブにとらえるのはいいんだけども、それを上回るプラスっていうのが、今現在とらえられてないんだよ。
わたし:お父さんが?
父:うん、お父さん自身が。だから、そこがとらえられればいいんだけども。なんちゅうかな、そこがこれからお父さんのやるべきところだと思うんだけども、だから、それができねーなら一回全部チャラにして。
つまり父が言いたいのは、母の「良い面を見ようとしても悪い面ばかりが目についてしまう」ということだ。だからゼロリセットして、良い面だけ見ればいいんじゃないかという理論だ。…そんなに都合よく気持ちをコントロールできるなら、こうなるまえに何とかなっただろう。
わたし:うーん、ま、それはお父さんらしいなって思うけど。
父:で、とにかくもう一回結婚してゼロからスタートしようって。
わたし:うーん、また何十年もかかるよそれ。って思うけどね。同じことを繰り返すみたいな。
父:いや。経験してるから繰り返さないような気がするんだけど。
わたし:でもそれってさ、抑え込むんだよね?きっと。
父:抑え込むのかなぁ
わたし:抑え込むんじゃない?これ言ったら怒るってもうわかってるから、言わない。で、そうやって穏やかな状態をつくろうとして、やっぱストレスを抱えるんじゃないかな?
父:そーかなぁ。でもストレスはでるんだよ。どんなことがあったって。マイナスがあるからね。
わたし:それはまぁね。
父:で、それを上回るものをね。新婚時代ってそうじゃん、プラス面だけじゃん。
わたし:あぁ、楽しいことだけね。
父:そっからマイナスがふくれてくんだよ。
わたし:うんうん、見えなくするっていうことね。見えなくなってるっていうか。でもそれって結局さ、長続きしないってことだよね。新婚時代にラブラブでも。
父:お父さん、あと何年あると思う?笑
わたし:でもそれって結局さ、ラブラブな状態にふわっと包んで、結局本当のところを見ないってことだよね?それもまぁ、もちろんひとつだと思うけど、うーん・・・
父:ま、チャラがダメだったらやっぱりさっきのやつみんなで言い合ってね、で、どうでるかわかんないけど、まず言いあいましょう。ということになるんでしょうな。
わたし:チャラにしたいんだ、お父さんの希望としては。だから、あんまりやりたくないってことだよね。こういうことも。
父:いや、やりたくないことはない。けっこう好きだよ。お父さんこういうの。
わたし:そうなの?
父:今までなんでハッキリしなかったかっていうと、目標が定まってないから。「親戚中で一番とろうね」と言ったのがもう、お父さんにピーンってヒットしてんのよ。頭の中で。「よし、じゃあNo1とろう!」と。そういう目標が定まったときのお父さんって強いんだよ結構。目標がないとなーんか…ダメなの。
父は「目標が定まれば強い」が口癖である。なんど聞いたかわからない。でもあっという間に嫌になり、目標がなんだったかすらも忘れてしまう。
わたし:なるほど。…なんかまぁ、チャラにしちゃうと、わたし的にはね。チャラにしちゃうと、結局は小手先っていうか、見せかけNo1になっちゃうよなって思う。
父:そうかぁ。本質ナンバー1だな?
わたし:うん。本質ナンバー1がいいなーって思ってる。
父:よっしゃわかった。じゃあさっきの取り消し!!
わたし:まぁいいよ。お父さんはそうなんだなっていうのは聞きたいことだから、お父さんの意見でいいけど。そういうのも聞いて、お母さんのも聞いてっていう感じだよね。
- 今日はここまで -
父はとにかく、プロセスを踏むことが嫌いだ。すぐに結果が出ないものをコツコツ積み上げることができない。夫婦関係で言えば、それくらいこじれてしまっているから先の見えない論争を続けるのが嫌なのだろう。
今日リセットしました。明日起きたらわだかまりもなくなって、もう責められることもありません。よし解決!みたいな。
たしかにお互いの不満を出し合えば嫌な気持ちにはなる。その過程を踏まずにリセットできればどんなにいいだろう。むしろできるならやってほしい。勝手に。でも出来ないから今なのだ。潔く諦めて家族と向き合ってくれと言いたい。
<次回に続く>
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