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哲学者に学ぶ「仕事」と「労働」の違い

こんちには、しゅんたろうです。

先日、Kindle Unlimitedが2ヶ月間99円セールやってて、ついポチっちゃいました。

その中で、ちょうど買おうと思っていた哲学の本が読み放題だったので、さっそく読んでみました。その結果、とても素敵な考え方に出会えたので、今日はそれについて書きます。

「はたらく」を哲学する

ハンナ・アレント(1906-1975)という女性の哲学者が、「はたらく」について哲学したお話です。(著書「人間の条件」)

彼女は、「仕事(work)」「労働(labor)」を、
全くの別物として定義しました。

「仕事(work)」とは、「人工的な世界」を作り出すもの。
「労働(labor)」とは、「人間が行う生命活動のすべて」のこと。
ざっくり言うと、そんな感じです。

つまり、労働は「人間が生きること」に付帯する
すべての活動のことを指します。
身体的な生命活動だけでなく、精神的な内省なども含みます。

この定義づけ(区別)によって、
私達は一体「なんのために働くのか」という
重要な示唆を与えてくれると感じました。

「仕事」はしてないけど「労働」してる人

例えば、職を得て働いている人が、大病を患ったとします。
職を失い、入院中の病床で、自分と向き合い、悩み、葛藤します。

アレントの労働観から言えば、この人は「仕事」はしてないけれど、
仕事をしていた時よりも、猛烈に「労働」をしているとも言えます。

仕事を辞めて、「生きる」という労働に深く従事している。

★★★

この考えを聞いて、私は深く感銘を受けました。

まさに「人間の条件」ではないですが、
「労働」こそが人間が人間たる所以だと感じたんです。

現代人は、「仕事」で成果を出すことばかりに一生懸命で、
「労働」を軽視してはいないだろうか。

そこについて考察してみたくなりました。

「仕事」と「労働」は途中から分離した

人類の歴史から見ても、昔の狩猟や農耕という「仕事」は、
「労働」(=人間が生きるということ)に直結していました。

しかし、産業革命以降の流れは、
人間を「労働力」とみなし、代替可能なエネルギーと考え、
「お金」というエサをぶら下げて、奴隷のように働かせてきました。

その価値観は、現代社会でも至るとことで垣間見えます。

だから、たとえブラック企業でも、
お金や生活のためには、嫌々でも働かないといけないのです。

「人間らしい営み」ってなんだろう

「労働」より「仕事」を優先させて
お金や生活のために嫌々でも働くことは、
果たして「人間らしい営み」なのでしょうか。

私は違うと思います。

都会に住んで、数億円の商談やビジネスをして、
タスクや時間に追われて、過酷な労働とプレッシャーで、
メンタルを病んだり、自殺したりするよりも、

田舎に住んで、自給自足で農業して、
とりあえず食べるものには困らない毎日を過ごしている方が、
よっぽど「人間らしい営み」だし、幸せな人生だと思うのです。

「労働」の上に「仕事」が成り立つ

別に「仕事」がダメと言っている訳ではありません。

現代人にとって、生活をするためにはお金を稼ぐ必要はあるし、
仕事によって周囲を豊かにできる、という社会貢献は意義深いと思います。

大切なのは
『「労働」の上に「仕事」が成り立っている』
ということを忘れないことです。

自分自身の「人間らしい営み(=労働)」があってこそ、
「外界に影響を及ぼすこと(=仕事)」ができる、ということです。

「労働」の重要性に改めて気付こう

強制的で受動的に働かされていると、
仕事のパフォーマンスが低下したり、

自分の心に余裕がないと、
他人に優しくできなかったりするのは、

多くの人が直感的に理解していると思います。

実際に、アメリカの心理学の研究結果に
「幸せな社員は、不幸せな社員よりも
 創造性が3倍になり、生産性は31%高い」

というのがあるそうです。

「労働」とは、自分を知り、自分の足場を固めること

人生100年時代を提唱した
リンダ・グラットンの著書「LIFE SHIFT」では、
「自分の本質となるアイデンティティや価値観を
 様々な経験を通して培い、自分の人生に反映させよう。」
と書いてあります。

いわば「自分の労働観」
一生かけて磨き続けるということです。

自分の労働観を磨くというのは、
自分の足場を固める作業です。

足場が不安定では、良い仕事は出来ません。

それは言い換えれば、
「自分は何のために働くのか」
「自分は何のために生きるのか」
を自分自身に問い続ける、内省するということでもあります。

自分の労働観が深まる「自分探しの旅」

最近知りましたが、
諸外国では「ギャップイヤー」という制度があるそうです。

学生が社会に出るまでの間に、
いわば人生のインターバル期間となる隙間を、
大学が猶予期間として与える制度です。
学生は、その期間で留学やインターンシップを行います。

いわば、「自分探しの旅」ですね。
自分の労働観を深めることができて、メッチャいい✨

かくいう私も、12年勤めた会社を辞めたあと、
約2年間「自分探しの旅」をしていました。

それは文字通り「旅行」をして、様々なものに触れたりもしました。
しかし多くの場合は、本や新聞やテレビから、世の中のことを知り、
自分がこれからどうやって生きたいのかを探す、自分の内面の旅でした。

私はこの2年間、「仕事」はしていませんでしたが、
猛烈に「労働」をしていたのだと思います。

おかげで「人間らしい営み(=労働)」の上に、
「仕事」を再構築しようと思い、現在に至ります。

「自分探しの旅」で見つかる自分らしい生き方

これを読んでいるあなたが、もし働くことに疲れて、
何のために仕事をしているのか分からなくなった時は、
「自分探しの旅」をしてみるといいかもしれません。

日帰りでもいいから、非日常に繰り出して、
自分が何を感じるか、心の動きを丁寧に観察してみてください。

そうすれば、他の誰でもない、あなただけの
「好き」「楽しい」という感性・価値観・アイデンティティに
出逢えるかもしれません。

「労働(人間らしい営み)」のヒントは、
そこにあるような気がしています。

今日のまとめ

  • 20世紀の女性哲学者ハンナ・アレントは「はたらく」を哲学した。
    「仕事(work)」とは、「人工的な世界」を作り出すもの。
    「労働(labor)」とは、「人間が行う生命活動のすべて」のこと。

  • 狩猟・農耕の時代、「仕事=労働」だった。
    産業革命以降、「労働力」は本来の労働(生きること)と分離した。

  • 現代の「仕事」は「労働(=人間らしい営み)」の上に成り立つ。
    しかし「労働」を軽視して「仕事」の成果向上を狙うケースが多い。

  • 自分の労働観(何のために働くか、生きるか)を磨くには
    「自分探しの旅」をして、自分の内面に深く向き合うと良い。

自分にとって一度きりの人生。
自分の思う通り、好きなものに囲まれて、ワクワクして
幸せな毎日を過ごしたいですね。

もし「仕事するのが当たり前」「お金を稼ぐのが当たり前」という考えがあるなら、その価値観メガネを外してみると、新しい発見があるかもしれませんね。

ではまた!

しゅんたろう

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