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胎内記憶<記憶の回廊>―⑩『壁との記憶』

『押し競まんじゅうの記憶』を思い出し、それについて考えていた。
この壁との押し合いへし合いの記憶、それと同じような記憶がいくつもあるように思えた。

以前思い出した『絶望の空腹感』の何度もループした記憶と似ていると思った。
何度も何度も同じようなことを繰り返した記憶は、その記憶がひとつのようにも思えるが、何重にも重なっているようにも思える感覚なのだ。
それと『押し競まんじゅうの記憶』は似ていた。
だから、何度も同じことを繰り返していたのかもしれないと予想した。

同じような記憶の少しの違いを探していた。
『絶望の空腹感』では空腹になるタイミングに少しの違いを見つけた。
『押し競まんじゅうの記憶』の違いは、壁の力と僕の力だった。
壁の方が強い記憶と、僕の力が強くなっていく記憶。
壁が押してくる方向と、僕が向かう方向。
少しずつ違いを見つけていった。

そして胎内記憶には、どの記憶にも『壁』がずっとあることに気がついた。

<このまま壁がどんどん押し寄せてきて、自分はつぶれてしまうのかもしれない>
<もし、つぶされてしまったら自分はどうなってしまうのだろう?>

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

<世界がだんだん狭くなってきている>
<だんだんと壁と自分の距離が近くなってきている>

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

<世界は壁に囲まれていて、たいして動くこともできない>
<自分の力でここに来たなんて考えられない>
<しかし記憶もない>
<なぜだ?>

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

<この世界はどこまで続いているのだろう?>
<移動出来たらどうなるのだろう?>
<遠くまで行って、またもとの場所に戻れるのだろうか?>
たまに何かにぶつかる感覚があった。
<もしかしたら世界は狭いのかも>
とも思っていた。

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

この時思い出した記憶は、壁の感触と、僕が何を思っていたのかだった。
そしてそれは『独り言のような記憶』と完全につながった。
『独り言のような記憶』には、壁がある記憶と壁のない記憶が混ざっていた。
つまり『胎内記憶』と『生まれた直後の記憶』だ。

『独り言のような記憶』はずっといつの記憶なのかわからずにいた。
でもやはり『胎内記憶』だった。
始めに思い出した『独り言のような記憶』は『生まれた直後の記憶』がきっかけで思い出した。
おそらく同じ生まれる日の出来事だったので、一度にひっついて思い出したのかもしれない。

これまでの『生まれた直後の記憶』と『胎内記憶』がつながらなかった理由を考えると可能性が2つある。
ひとつめは、おそらく生まれる前と後では感覚的な違いが多すぎて、記憶がつながらなかった可能性。
ふたつめは、生まれる直前に気を失っていたのか、眠っていたのか、何らかの記憶を失っていてつながらなかった可能性。
今になって思うのは、やはり前者の影響が大きかったのではないだろうか。

『胎内記憶』を思い出すきっかけを作ってくれたのは、『独り言のような記憶』と、3歳のころに見たなぜか忘れないあの夢だったのだと思う。


つづく


いらっしゃいませ。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。
話が行ったり来たりしてわかりにくいとは思いますが、リンクを貼り付けていますのでなんとか過去作を見返しながらついてきてください。

お腹の壁の存在を記憶の中から見つけられたことで、だいぶ胎内の感覚が思い出せるようになりました。
まだまだつながっていない記憶も多く、それらはこれから描いていきます。

ではでは、また次回作もご拝読よろしくお願い申し上げます!

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