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胎内記憶<記憶の回廊>―⑥『生まれた直後の記憶』

起きたら、先ほど感じた絶望的な空腹感に襲われた。
世界の終わりを感じた。
でもすぐにまた口に何かを突っ込まれた。
そしてそれを飲んだ。
空腹と絶望が和らいでまた寝た。
また起きて絶望の空腹感に襲われてを何度も繰り返した。

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

「先ほど感じた」とはどうことか???
さらなる過去の可能性を感じた。
だから支離滅裂の記憶の中から、この何度も何度も感じた絶望の空腹感で泣いた記憶を、何回も何回も思い返した。

どれも同じ記憶に思えるほど同じだった。
その中にはほんの少しだけ違いがあることに気がついた。
そこには同じに感じた記憶にも、未来の記憶と過去の記憶があった。
まん中の順番は今でもよくわからない。
一番未来と一番過去だけ区別できた。

一番未来の記憶

目がさめてもしばらくは空腹感に襲われなくなってきていて、その間だけは考えることができた。

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

一番過去の記憶

その時突然、猛烈な空腹に襲われた。
例えるなら、あと数時間何も口にしないと命に係わるほどの、数週間水しか口にしていないほどの空腹感に襲われた。
生まれてすぐの赤ちゃんを数時間放置すれば、おそらく命は尽きると思われるのでこの表現も遠からずと思う。

前の世界で終わりを覚悟していたが、新しい世界は始まった。
だけど、すぐに終わりがやってきたと思った。

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

絶望の空腹感がやってくるタイミングに微妙な違いがあった。
それが未来と過去の違いだった。
時間の概念がないこの頃の記憶は時系列を合せるのがとにかく困難なのだ。


『絶望の空腹感の記憶』ここにはなんと、さらなる過去の記憶が眠っていた。

「前の世界で終わりを覚悟していたが、新しい世界は始まった」???
前の世界???

この記憶はいったい何なのだろうか。
もしかしたら、いよいよ胎内記憶にたどり着けるのではないかと思い、記憶をつなげる。
そしてたどり着いたのがこの記憶だ。

気がついたときには生まれていた。
はじめは、何がどうなっているのか全くわからなかった。
さっきまで終わると思っていたことを覚えていた。
何もかもが今までと違いすぎていた。
音や光、空気、温度、壁のない世界。
他の何者かがいる世界。
だからまた何かが始まったと思った。

僕の胎内記憶 ― <世界は壁なんてなかった>

おそらく生まれた直後の記憶だと推測できた。
さらなる過去にまた踏み込めた。
しかし、まだ胎内記憶ではない。
ところが、この記憶にもまたさらなる過去が隠されていた。

「さっきまで終わると思っていたことを覚えていた」???
さっきまで???

「何もかも今までと違いすぎていた」???
今まで???

「だからまた何かが始まったと思った」???
また???

謎が謎を呼び、記憶から記憶がつながる。
このわずかな時間をさかのぼるのにどれだけの歳月を要したのだろうか。
僕は記憶の回廊をさまよい続けた。


つづく


いつもご愛読いただきありがとうございます。
心朗太です。
今回引用した記事もリンクを貼っていますのでぜひ読んで頂けると嬉しいです。

そして昨日#未来のためにできること、に応募してみました。
『命』とタイトルをつけてみました。
僕はおじいちゃんの行軍日誌と胎内記憶について主に書いています。
戦争もおじいちゃんも死にいゆく命、胎内記憶も赤ちゃんも生まれてくる命。
そんな『命』について書いてみました。
ぜひこちらもスキとコメントで応援よろしくお願いします!


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