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組織論とニューサイエンス〜自己組織化に必要なもの〜



 リーダーシップとニューサイエンスを読み、自己組織化に対して思うことがありましたので、シェアします。かなり難解な本であり、途中で挫折する方もいらっしゃると思いましたので、エッセンスをまとめました。

組織論として具体的な実装方法は書かれていない


 本書は、組織論的に、具体的にどうするということは書かれていません。ニューサイエンスから新たな組織論が導けるのではないかと主張しています。
この本からエッセンスを抜き出すとすると、以下になります。

・ニューサイエンスとは、量子の時代の科学である。一方でこれまでのサイエンスは、ニュートンの時代の科学である。量子論は、これまでの科学では説明がつかないことがある。
・組織は自己組織化へ向かうべきだ。これは自然界の法則とも合致するし、ニューサイエンスから教わることとも合致している。
・粒子は個別で存在することはない。関係性があるものが最小単位(ユニット)である。
・自己組織化はカオスである。カオスは混乱ではない。無秩序から秩序が作られる。予測可能性のない秩序である。予測可能性は必要ない。カオスがなければ新たな創造は生まれない。
・本書では文化を変えていく必要を訴えている。文化は、自分たち自身のアイディンティティから創られるとされる。すなわち、「汝自身を知れ」ということである。文化はパターンによって創られる。日常のふるまいがパターンとなる。
・我々は何者なのか、なぜここにいるのか。何を大切にしているのか。この軸を持つことによって、道を外してたとしても、軌道修正ができる。
・場を作り、その場に全員が参加し、観察すること。観察することにより結果が変わる。場では、情報を自由に扱えること。
・情報を「もの」前提で扱わず、情報は情報を生み出す、「いきもの」として扱うこと。情報に自由を与えること。
・この本では、テイラーの科学的管理法には否定的であり、自分たち自身で管理していく=自己組織化へ向かうべきだ、と主張している。
・カオスの時代であり、カオスを楽しみ、ともにダンスをしよう。どうすればそれができるか、その答えは「ともに」である。私たちは今、お互いをこれまでとは違う意味で必要としている。自分の境界の中に隠れたり、独りでも生きていけるという信念にしがみついたりしている場合ではない。考えを試す。学んだことを共有する。新しい視点で世界を見る。体験に耳を傾け る。すべてお互いが必要だ。失敗したら許し、他者の夢を自分に託し、自分の希望を失ったら他 者の希望を差し出す。やはりお互いが必要なのだ。

エッセンス以外に何が書かれているか知りたい方はこちら

蛇足

 以上のようなことが書かれていますが、では具体的な方法は?となると、自分で考えろということになります。私なりに多少付け加えると、
・本書ではヒエラルキー組織を否定はしていないですが、既存構造のまま自己組織化は難しいと考えます。「文化は構造に従う」ためです。
・日常のふるまいを決めるのは理念である、とありますが、経験上、理念だけだとふるまいは変わらないと思います。大言壮語的な理念が掲げられている会社ってよくありますよね。でも社員は何も気にしていないとか。システム思考的に、ふるまいを決めるのは構造だと言われています。
つまり、自己組織化を目指すのであれば、既存の構造を保ったまま、組織のふるまいを変えていくのはなかなか難しい。徐々にでも構造を変えていく必要があるのではないかと考えます。これはScrum・LeSS(Large Scale Scrum)脳に支配されているからでしょうか(笑)。もちろんまずは意識し、「気づく(Awareness)」ことから初めないといけないと思います。

ニューサイエンスから学べる新たな組織の特徴


 上記より、以下5点がニューサイエンスを考慮した、自己組織化を目指す新たな組織の特徴だと考えます。
1.組織がある限り、組織のアイディンティティを明確にし続けること。
2.情報を自由にすること
3.明確な場を創ること。場は、全員参加可能にすること。
4.仕事をする最小ユニットの構成人数は、二人以上(常にペア・ワーク)にすること。
5.意図的に観察者を作ること

1.組織がある限り、組織のアイディンティティを明確にし続けること。

 ビジョン・ミッション・バリューなどをそれにあてはまると思いますが、これを「全員参加」で作り、維持することが求められます。人間の行動原理として、「自分で作ったものは支持する」というものもありますし、腹落ちできますよね。

2.情報を自由にすること

 今は、特に日本だとオーバーコンプライアンスの時代だと言われています。共感経営にも記載がありました。これが今の日本の低迷の元凶だと。少なくとも社内であれば、ほぼすべての情報に全社員・協力会社がアクセスできるようにし、どこでも利活用できるようにするべきです。日本の場合は、下請け会社が多いのですが、同じ目標を目指して仕事をしている仲間なら全員に情報を公開するべきです。まぁ、何のための管理職だって言うと、何かあったときに謝るためにいるんですよね。ヒエラルキー組織の唯一の利点。上司をうまく使うこと。自己組織化された組織なら、もちろん自分たちが謝らなきゃいけません。上司いないので。

3.明確な場を創ること。場は、全員参加可能にすること。

 場を作るのは非常に重要ですね。
これはスクラムであれば、
・プロダクトバックログリファインメント(中長期計画の確認)
・スプリントプランニング(直近の計画作成)
・デイリースクラム(毎日の状況確認)
・スプリントレビュー(プランニングでの計画の成果の確認)
・スプリントレトロスペクティブ(直近の活動のふりかえりと改善案作成)
となっており、1〜4週間のスプリント期間内に、少なくとも5つの場があることになります。スクラムは非常によくできています。

スクラムを採用していない組織、ほとんどの組織では、定期ミーティングしかやっていないのではないでしょうか。且つ、定期ミーティングがものすごい退屈なものではありませんか?

まず場を作ること。
・中長期計画を、直近の活動と照れし合わせて練り直し続ける場
・直近の活動計画を立てる場
・毎日の状況確認とリスケジュール
・成果の確認会と次へ向けてのゴール確認
・自分たちの活動自体のふりかえりと改善をはなし合う場
があれば良いと思います。そのままスクラムですね。スクラムやればいいのに(笑

そして、その場が面白くてエキサイティングで、自分たちで作れて参加したくなるような場であること!さてどうすればいいのでしょうかね。そのうち書こうと思います。

4.仕事をする最小ユニットの構成人数は、二人以上(常にペア・ワーク)にすること。

 粒子は単体では存在しえないとニューサイエンスから学びました。つまり、私たち人も1人では存在しえないのですね。そこで、提案ですが、必ず二人以上で同じ仕事にとりかかることです。ものすごい効率が悪いと思う方はいらっしゃると思います。でもこれ、プログラミングの世界ではほとんど常識に近い仕事の仕方になってきているんですね(ペアプログラミング)。
プログラミングは非常に複雑な仕事で、瞬間瞬間で設計判断と論理思考力が求められます。1人だと絶対間違うんですよね。だから2つの脳、4つの目で耐えず会話をしながら確認をしながら進めるんです。だから手戻りが非常に少なくなるんです。テストを先に書いて、そのテストを通るようにする(テスト駆動開発)という手法も存在するぐらいです。これもある意味1人でフィードバックサイクルを回し続けているということですね。それぐらい複雑な仕事なのです。急がば回れってやつですね。
 これは、上記のテイラーの科学的管理法に照らし合わせると、1人でできる仕事を2人でやるなんてもってのほかなんですね。テイラーの科学的管理法の系譜であるプロジェクトマネジメントも同じ考えです(最近はどうかわかりませんが、10年前はそうでした)。ペアワークを否定するマネージャーは、過去の管理法に縛られ、効率しか追い求めていない、ということですね。最近はペアよりモブ(3人以上)というやり方も出てきていますが、最近のレポートだと、モブの場合は4人までが最も効率が良いと言われています。

5.意図的に観察者を作ること

 量子では、観察するまで結果はわからないし、観察によって結果が変わるという概念がありました。観察によって結果が変わるのであれば、より多くの観察者を作るという意味で、全員参加に結びついています。私はこれに観察者というロールがあったほうが良いと考えています。組織やチームに気づきを与える観察者。これがコーチですね。スクラムで言えばスクラムマスターになると思います。組織の健康状態を俯瞰してみる、悪いところがあれば悪いと言える人。良いところも組織に対して反映してくれる人。このようなある意味で第三者的な存在がいることによって組織の関係性はより強く、そしてより弱くもなると思います。

おわりに

リーダーシップとニューサイエンスを読んでみて、インスパイアされたので書いてみました。ご意見ありましたらどうぞ!
この本をご紹介頂いた
CRR Global Japan合同会社 共同代表システムコーチ /トレーナー
原田直和さんに感謝いたします。

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