アジャイルマニフェストの真意(Craig Larmanより)

アジャイルマニフェストの真意

アジャイルソフトウェア開発宣言は、4つの価値と12の原則からなります。
これらの価値、原則の根本にあるものを、Craig Larmanは「謙虚さ」であると言いました。
Craig Larmanは、このアジャイルマニフェストを作成するミーティングに、呼ばれていたが行けなかった人の一人です。アジャイルソフトウェア開発宣言がなかったころ、スクラムやXPは存在していました。彼らは、それらを総称する言葉が欲しかったのです。巷では、「軽量開発メソッド」と呼ばれていたそうです。しかしその名称ではしっくりこない。その当時の軽量開発メソッドで業界をリードしていた17人が集まり、アジャイルマニフェストを紡ぎ出しました。Craig Larmanは、このミーティングに行けなかったのですが、もし彼が参加していたら、また違った名前になっていたかも知れません。CraigはアジャイルよりもAdaptiveness-アダプティブネス(適応性)-に重きをおいているようです。でも綴が長くてムーブメントは起きなかったかもしれませんね(笑

謙虚さ、とは何でしょう?
何を思い浮かべますか?
どんな質感がありますか?

謙虚さ

謙虚さとは何でしょう。これは私たち、日本人にはとても馴染みのある言葉なのではないでしょうか。日本人は謙虚である、と聞くことがよくありました。(最近は聞かなくなったかもしれません)
謙虚さとは何でしょう。辞書で調べてみました。辞書でも定義が若干異なる記載がありました。

謙虚 

「謙虚」とは、控えめ慎ましい・おごり高ぶらないことを意味する表現である。
「謙虚」とは、控えめ慎ましいという意味で用いられる表現で、日本においては美徳1つとして考えられている。高い地位であっても奢らず控えめ態度であること、能力があってもひけらかさないことなどを指す。ビジネスにおいても謙虚な態度取引先上司から好感持たれることが多くプラスに働く。「謙虚」と似たような言葉として「卑屈」があるが、少しニュアンス異なる。「謙虚」は自分の力を誇示せず控えめにするというポジティブ意味合いがあるが、「卑屈」は自分にはできない卑下するというネガティブな意味があるまた、あまりにも「謙虚」でありすぎると、「卑屈」に見えることもあるので注意必要だ

実用日本語表現辞典

自分を偉いものと思わず、すなおに他に学ぶ気持があること。

Oxford Languages

[名・形動]控え目で、つつましいこと。へりくだって、すなおに相手意見などを受け入れること。また、そのさま。「―な態度」「―に反省する」

goo辞書

自分を偉いものと思わず、の部分は両者同じなのですが、Oxfordには「素直に他に学ぶ気持ちがあること」が追加されています。
また、goo辞書でも「すなおに相手の意見などを受け入れること」とあります。

私はCraig Larmanが言うアジャイルの根源における「謙虚さ」とは、「素直に他に学ぶ気持ちがあること」を指しているのだと考えます。へりくだって、すなおに相手の意見などを受け入れるのは、思考停止ですよね。

自分を偉いものと思わず、すなおに他に学ぶ気持ちがあること

この謙虚さは、アジャイルマニフェストとどのように繋がっているのでしょうか?

根源的な考え方として、「私たちは誤っている」ということがあると思います。何かをやろうとする、やってみる、しかしそれは誤っているではないか?これは科学的な態度です。

誤っているかどうか、それが正しいか(価値があるか)どうかを確認する方法は?

そう、他者(人だけでなく、物体等も含む)からのフィードバックなのです。
自分たちがやっていること、やったことに対して迅速なフィードバックを得られ、軌道修正(ピボット)が直ちにできる状態、それがアジャイルと繋がっているのだと思います。

私たちがやろうとしていることは「誤っている」、それをすぐに確認するために、以下の価値が導き出されているのです。

プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、

アジャイルソフトウェア開発宣言

一人で、開発者だけで、チームだけで、課だけで、部だけで、会社だけで考えていませんか?今やっていることは、誤っているかも知れません。それは大きな誤りかも知れません。誤っているかもしれないことに、そんな大量なドキュメントを作っていいのでしょうか?誤っているかどうかを少しでも早く確認するには、マーケット(市場)に問いかけたり、顧客と連携する必要があるのではないでしょうか?誤っているかもしれないことに、そんな数ヶ月の計画を建ててしまって良いのでしょうか?リスクではありませんか?無駄ではありませんか?

アジャイル開発をすると、「早く」ものができる、「安く」ものができる、と考えるのは誤りです。アジャイルは、早い、安いではありません。生産性とアジャイルを結びつけるのは全くの見当違いです。

アジャイルは、「私たちが誤っていることを早く知ろうとする態度」のことを指す。そして、その結果が悪かろうが、それを受け入れて、次の手を打つのです。最初から成功するなんてことはありえません。何度も何度も失敗するのです。

「すなおにほかに学ぶ」のです。アジャイルであるということは、絶え間ない学習です。一人で学ぶわけではありません。チームで、組織で学んでいく必要があるのです。

謙虚であるとは、難しいですね。

あなたがやっていることは正しい(価値がある)のでしょうか?それをどうやって知りますか?









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