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一万年の旅路

つくづく、自分がこんなに本好きになるとは思っていませんでした。

母親が読書家で、いつも図書館で本を借りてきていたのですが、

「読書の一体なにが面白いのかな??」なんて思っていました。

それが不思議なもので、いまでは僕自身が”本の虫”になっています。

ほんとうは朝から晩まで読書をしていたいのですが、そうもいかず。

子どもが2人いるため日中は落ちついて読書ができません。

いまは、4:30に起きて6:00までの1時間半を〈読書のじかん〉としています。


好きになればなるほど、本との出会いが増えました。

そんな僕が、ここ最近で大きな学びを得た一冊をご紹介します。


その一冊は、とある古本屋の本棚にありました。

『一万年の旅路』

不思議なタイトルに惹かれ手にとると、表紙を見た瞬間に

「ぜったいに買わなきゃダメなやつだ!」

とココロが動きました。


それから、毎朝Googleドキュメントにメモをとりながら、少しずつ歩みを進め…。

先日、ついに読了をむかえました。

そして、いまだかつてない、不思議な想いに包まれています。

タイトルの通り、本とともに一万年という歳月を旅してきた感覚が残っています。


いまの自分が存在しているのは、はるか昔の祖先から紡いできた知恵にあること。

そして、自分が今ここに存在しているのは、決して必然ではないこと。

長い、長い年月と、はてしない距離を越えて、大切な知恵を授かった気がします。


表紙に惹かれた理由もわかりました。

表紙の写真は、僕の大好きな星野道夫さんの写真だったのです。


まだ、いちど通して読んだだけ。

読めば読むほど、学びが深まる本だと思います。


今回、この本を通じて素晴らしいご縁にも恵まれました。

著者のポーラ・アンダーウッドさんは、残念ながらすでに他界されているのですが、翻訳者の星川淳さんと直接つながることができたのです。

星川さんによると、ポーラさんは生前、教育者に本書の内容を伝えることに重点を置かれていたとのこと。

まさに、これからの日本の教育のために、学ぶべき知恵が詰まっていると感じています。

まだ、メールだけのやり取りですが、コロナ収束後はぜひお会いしたいです。



最後に星川さんによるあとがきを紹介します。
この本が生まれた経緯もまた、ドラマティックです。


訳者あとがきから
 1810年、イロコイ連邦オナイダ族に属する一人のうら若き女性が重大な決心をした。その名はツィリコマー(明るい春)、25歳。幼くして治療師の才能を示し、17歳のときに手当てした老人からは、消えゆく口承史の一端を託されて七年間にわたる伝承を受けていた。

 アメリカ合衆国建国まもないこの時代、ヨーロッパ系入植者の圧力により伝統的な先住民社会は激動期に突入していた。北東部沿岸地域の多くの部族は先祖伝来の土地を追われ、西へ西へと悲しい民族移動を余儀なくされる。同時にキリスト教への改宗を迫られ、精神的にも大混乱がはじまった。合衆国建国当時、強大な勢力を誇ったイロコイ連邦でも、オナイダ族出身の宗教改革者ハンサムレイク(本書でオンタリオ湖を呼ぶ「美しい湖」と同じ意味)がキリスト教と伝統的信仰との折衷を説き、支持を広げつつあった。
 そしてついに、部族全員の協議により、古来の伝承をきっぱりと捨ててハンサムレイクの教えを受け入れる日が来た。だがそれは、一族の来歴を記憶する伝承者もろとも火に投ずることさえ意味していた。決定を聞いたツィリコマーは、協議の席を立つとロングハウスの祭壇へ歩み寄り、口承史にかかわるワンパム・ベルト(記録帯)と聖包を取り上げて、そのまま足早に外へ出た。命が惜しかったのではない。正しい来歴を守ろうとしたのだ。部族の者たちがあとを追ったが、彼女は顔見知りのクエーカー教徒の家に身を寄せ、馬車の荷台に隠れて西のイリノイ州へ逃げのびたという。

 それから五世代後の1993年、ツィリコマーの子孫がたんねんに受け継いだ口承史を英語で出版した。それが本書である。

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