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唎酒師としての活動が四半世紀経ちました

 日本酒の提供・販売のプロフェッショナル資格である唎酒師との関わりについて紹介させていただきます。

 1991年に田崎真也氏や右田圭司氏などの若手ソムリエを中心に日本酒サービス研究会(SSI)が誕生しました。ここで認定が始まったのが唎酒師という資格。「日本酒のソムリエ」とか呼ばれますが、1985年に資格として開始したソムリエと比べて、遅すぎたように思います。しかも、資格開始の中心人物はソムリエ関係者ばかり。当時の日本酒業界が時代の要望を察知していなかったことがよくわかります。ちなみに田崎さんは1994年に世界一のソムリエになり、ソムリエ協会の会長になれています。

 では、どのような資格なのか?日本酒は、神話にまでさかのぼる歴史と伝統を持ち、さまざまな気候風土とそこに根付いた文化のぶつかり合いの中で磨かれ、研ぎ澄まされてきた芸術品。その日本酒とそれにまつわる魅力を余すところなく伝えることのできる人材をサービス・醸造・販売で関わる関係者で育成する必要がある。ひとりでも多くの方へ日本酒の楽しみ方を広める「消費者視点に立った日本酒の提供・販売のプロフェッショナル」を世に送り出すための資格として立ち上がりました。

◇世界の酒類の基礎知識
◇食品や飲料全般の基礎知識
◇日本酒に関する幅広い知識
◇日本酒のサービスやセールスプロモーションに必要な知識
◇おもてなしの心、接客のあり方など、飲食のプロフェッショナルに不可欠な心構えと能力
◇劣化の見分け方など、日本酒の品質管理に欠かせない知識
◇テイスティングによる日本酒の評価スキル
◇料理との相性を探る知識やスキル

などを学び、受講しますが、キーとなるのが日本酒の4タイプ分類。日本酒は舌で感じる味わいだけでなく、香りも重要な要素。「味わい」を横軸に、「香り」を縦軸にとったマトリックスで「薫酒(くんしゅ)」「爽酒(そうしゅ)」「醇酒(じゅんしゅ)」「熟酒(じゅくしゅ)」の4タイプに分けている。

薫酒(くんしゅ)
香り高い日本酒のこと。果実や花のようなフルーティで甘い香りが特徴で、味わいは比較的軽快。色調は透明感あるものが多く見られる。主に、大吟醸酒系・吟醸酒系が当てはまる。薫酒が、海外での日本酒ブームを牽引している。

爽酒(そうしゅ)
清涼感あるすっきりした味わいで、香りは控えめの日本酒のこと。「淡麗」などと表現されることが多い。主に、普通酒系・本醸造酒系・生酒系が当てはまる。

醇酒(じゅんしゅ)
米のうまみやコクを感じさせるタイプの日本酒で、「ふくよか」という表現がぴったりとくる。主に、純米系・生酛(きもと)系・山廃(やまはい)系が当てはまる。“地酒”と呼ばれる日本酒の多くが醇酒のような味わいで、最も日本酒らしいタイプと言えるだろう。

熟酒(じゅくしゅ)
ドライフルーツやスパイスに例えられる複雑な熟成香に、とろりとした飲み口と濃厚な味わいを持つ日本酒。色調は、黄金色など黄色みがかっているものが多い。5年以上熟成したものが典型的で、高級ワインや高級ウイスキーが熟成を尊ぶように、日本酒も熟成させるとうまみがのってくる。

4タイプのマトリックス

 最近は日本のみならず世界中から日本酒が注目されるようになりましたが、こうした礎が30年以上前にスタートしていたのです。1回目の受験資格認定講習会では188 名の唎酒師を認定されました。それから、30年以上が経過。日本酒のソムリエ’とも言われる日本酒の提供・販売プロフェッショナル資格認定者唎酒師は、飲食店、酒類/食品販売店はもちろんのこと、消費者に日本酒を提供・販売する、あらゆるプロセスの職種で活躍しています。  

   自分が唎酒師を取得したのは1994年くらいだったと記憶しています。すでに日本酒を文化であると認識して、楽しむ会(酒と夢と文化を語る会)の運営をしていました。会員は100名を超え、ビジネスパーソン・経営者・専門家と様々なジャンルで活躍する人たちが集まるまでになっていました。蕎麦と日本酒、落語と日本酒、蔵元見学など年間で10回を超えるイベントを開催。

落語と東京の日本酒を楽しむ会
東京の酒蔵様に協賛いただき開催してきました

会員たちは日本酒が大好き、だけど、詳しく勉強する場が少ない。そんな悩みも抱えていた状況でした。ですから、唎酒師の資格取得が開始され、我々も受講できることがわかると「是非とも受講したい」と歓喜したしたことを覚えています。そこで、会のメンバーに加えて、在籍していたリクルート社で声をかけて、100名以上の受講者を確保。さらにはテレビ局やキャビンアテンダントに広告代理店の営業担当などから受講者の手が上がり、当日は取材が入るまでの大掛かりなイベントにまで発展してしまいました。一人で受けるより、たくさんの人を巻き込んだ方が楽しい。さらに、当時はワインブームでワインエキスパートやソムリエの資格取得が大ブーム。そんな流れに日本酒も加えて欲しい…と思っての仕掛けでありました。

 唎酒師の認定を受けるためには、これらを身に着けるべくカリキュラムを履修し、試験、課題等の効果測定により一定の基準を満たすことを課していますが、日本酒の専門知識を学ぶべく公式テキストはA4判約300ページ、さらには飲食・酒類/食品販売サービス従事者としての必須知識を学ぶ公式テキストはA4判約200ページにも及びます。さらに、毎年の更新が必要な「資格登録制度」により、その能力の向上や最新のノウハウを習得すべくプログラムに取り組むことにより、常のブラッシュアップを行っています。資格を取得することも大事ですが、それ以上に、活用して日本酒普及に貢献することが重要ということですね。

その後、自分が主催する日本酒の会から500名近い唎酒師が輩出され、協会の顧問や評議員、名誉唎酒師の称号をいただくことになりました。

 あくまで、本業は会社経営ですが、そうした立場から日本酒普及に貢献できることはたくさんあると痛感しています。コロナでイベントや勉強会の会社が出来ない時期が長く続きました。そろそろ、そうした活動を再開していきたいと思います。

同世代である石川酒造にてテイスティング(懐かしい)
去年から秋にひやおろしの会など再開しました


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