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#自伝
自伝的小説 『バンザイ』 第五章 everything is my guitar
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少し時間が過ぎた。
季節はもう冬になっていた。
僕はいつものように音を出し、働き、飯を食い、そして眠っていた。
変わった点はただ一つ。あの子と連絡を取り合うようになっていたこと。下北沢でのライブ日、酔っ払いついでに連絡先を交換し、そこからずっとやり取りをしている。
初めて彼女から来たメールは、「月が綺麗ですね」という言葉から始まっていた。深い意味はないかもしれな
自伝的小説 『バンザイ』 第四章 天井裏から愛を込めて
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赤信号を待つ。目の前には横断歩道を渡る、複数のサラリーマン。ヘッドライトの光が足元を照らす。
敷かれたレールからは決してはみ出さず、無理も無茶もせず、現状維持、腹八分目、省エネルギー、毎日同じことを繰り返し、貯金をし、年金を払い、老後の準備をし、ゆっくりと、のほほんと、まったりと、焦らずに生きていく。
僕には理解できないこと。
信号が青に切り替わる。ラーメン屋の行列を横目
自伝的小説 『バンザイ』 第二章 リンダリンダ
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今月のライブは二本決まっている。下北沢は一昨日終えたばかり。そして今日は蒲田だ。昔からよく出させてもらっていて、今でもお世話になっている、蒲田トップスという名のライブハウス。
高校生の頃、初めてコピーバンドで出演したのが始まりだった。初めてのライブで僕はクボタたちと出会った。まだクボタとホシくんは、もう1人のメンバーを連れたスリーピースバンドだった。僕らは高校の友達や地元の友達が混
自伝的小説 『バンザイ』 第一章 東京少年
まえがき
この物語を書くにあたって決めたことがある。
それは、『何が何でも書き切る』ということ。
それも、二十代のうちにだ。
僕は現在二十九才で、あと数ヶ月で三十才になる。
三十才になってしまったら、色んなことがやりにくくなるかもしれない。つまらない大人になってしまうかもしれない。初期衝動のようなものを出せなくなってしまうかもしれない。ドントトラストオーバーサーティ、なんて言葉も