目に見えないが激しい未知の物質ハンターオリンピック
オリンピック真っ盛りですが、科学の世界でも国際的な競争がおこなわれています。
目で見えない超ミクロの現象で超インパクトがあるのが「超重元素の生成競争」です。
こちらの記事でその最新情報が載っているので、かみ砕いて紹介します。
その前に、過去にウルトラマンとゴジラという特撮映画でいずれも超重元素を取り扱っていたので、娯楽意図で共有しておきます。
元記事の主役は、米国のローレンス・バークレー国立研究所(以下LBNL)です。過去に重元素の発見で世界をリードしていたこともありましたが、以後は成果を出せず、ロシア・ドイツ・日本(理化学研究所)にその座を奪われてしまいます。
投稿時点で元素は118まで見つかっています。
天然に存在する最大の元素はウラン(元素番号92)で、以降は人工的に生成されています。新しい元素を生成するので、中世に流行した錬金術といってもいいですね。(ただし一瞬しかもちません)
次の119と120の生成について、LBNL含む4つの国の研究所がしのぎを削っています。
超重元素のレシピですが、原理はシンプルです。
ある重元素を超高速ビームにして目標(これも重元素)に衝突させて融合させるだけです。ある意味PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン by ピコ太郎)?
ただ、その融合を成功させるのが(元記事によれば)もはや科学というよりは芸術に近い技のようです。
例えば、元素番号118はカルシウム(48番)のビームを使って発見されましたが、最も安定的に存在することができたのが選定理由です。
ただ、これだとそれ以上重元素を生成することが極めて困難なため、安定はしないがより重い元素であるチタン・クロムを使った実験が日本を除く研究所で取り組まれています。ちなみに日本(理化学研究所)だけは、バナジウムを使った特殊な技法で119の探索を続けています。1つだけ紹介記事を。
今改めてLBNLが注目されているのは、従来の最高性能より2倍のビーム照射能力を持つ装置を2025年に稼働させる予定があるからです。
現状はドイツの研究施設で、毎秒4兆個(!)のチタンビームを発射できます。ただ過去20年間の結果、その兆候も得られませんでした。
LBNLでは、毎秒6兆個のチタンビームを生成する装置を開発しました。
既に予備実験として116の超重元素を確認しており、その期間(22日)が短かったことが注目を浴びました。これは、理論的推測よりも衝突した2つの元素の断面積が大きいということを示しており、本丸である120を生成する確率が高まったことを示します。
それでも1年間以上もビームを照射し続けないと成果は出ないと見積もっています。
もし120の生成に成功すれば、ついに元素表に新たな行が追加されることになります。
この探索は2025年に開始される予定です。まだ資金面での交渉が必要なようですが、LBNLの復権だけでなく、人類が創る新たな物質発見として静かに見守り続けたいと思います。
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